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チャンネルAJER  更新しました。
『言語と民主主義①』三橋貴明 AJER2018.4.24
https://youtu.be/7l3zThwiv-k    
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 本日は三橋経済塾第七期第五回合議開催日です。
http://members7.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?page_id=8


 ゲスト講師は青木泰樹先生(京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授)!


 青木先生が(恐らく)固い、経済学チックな話をされるでしょうから、わたくしは権威と伝統と経済」という、珍しく抽象性が高いお話


 
 さて、中野剛志先生が北朝鮮危機のコラムを東洋経済に寄港されました。


『朝鮮半島全域が「中国の勢力圏内」に収まる日 「現状維持」が日本にとって最も望ましい
https://toyokeizai.net/articles/-/219916
 日本は地政学的な不利に追い込まれる
 板門店宣言には、各国からおおむね歓迎の意向が示される一方で、北朝鮮の非核化については懐疑的な見方も少なくない。
 また、わが国にとっては、日本人拉致問題という重大な懸案も残されたままである。多くの日本人が板門店宣言を字義どおりに受け取ることができないのも、当然であろう(「歴史的な首脳会談、主要国はどう反応したか」)。 
 しかし、もし北朝鮮が非核化を反故にした場合には、今回は、アメリカが北朝鮮に武力攻撃を仕掛けるという危険性が飛躍的に高まってしまう。強硬派のジョン・ボルトンを国家安全保障担当補佐官に据えたトランプ大統領なら、確かに武力攻撃もやりかねない(「南北首脳会談、『終戦宣言』がマズすぎる理由」)。
 イラクやリビアの体制崩壊がもたらした混乱と周辺国への波及を見れば、アメリカによる北朝鮮への攻撃が日本に悪夢のような事態をもたらすことは想像に難くない。したがって、われわれ日本人としては、板門店宣言に掲げられた事項の実現に懐疑的ではあっても、それを願わざるをえないというところかもしれない。
 しかし、ほとんどの人が見逃していることだが、実は、この板門店宣言がうたう朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争の終戦が実現した場合には、日本は地政学的な不利に追い込まれ、安全保障上の脅威が高まってしまうという可能性があるのである。
 このことを明らかにするためには、まず、理論から説き起こす必要がある。(後略)』


 中野先生は、米朝首脳会談以降の「地政学的な日本の危機」について書かれています。


 実は先日、三橋貴明の経済動向塾(日本経営合理化協会主催)があったのですが、ゲスト講師として元自衛艦隊司令官の香田洋二氏をお招きし、「激変する世界の安全保障情勢の見方 金正恩の春季チャーム攻勢を中心に」というタイトルでご講演頂きました。


 香田先生のお話が、個人的に実に腑に落ち、以前から「そうなるのではないか?」と考えていた予測を裏付けて下さったので、本日、取り上げたいと思います。


 ずばり、米朝首脳会談は「開催されない」可能性が高いのではないかと。

   


 当たり前ですが、アメリカのトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩が「会う」時点では、両国間ですでに各種の具体的事項について「合意」がなされていなければなりません。トランプ大統領と金正恩が会談し、その場で「合意する」などという事態はありえないのです。


 北朝鮮の核ミサイル問題は、極東情勢に限られた問題ではありません。北朝鮮の核ミサイル技術が完成してしまうと、イランが買うことになるでしょう。そうなると、イランと敵対しているサウジアラビアも核武装する。


 核武装の伝播が、世界に拡散してしまう可能性が高いのです。故に、アメリカは北朝鮮の核ミサイル技術について、
「完全、検証可能、不可逆的な核放棄」
 を、求めており、この点について譲ることはありません。リビア方式かどうかはわかりませんが(北朝鮮の地形上、リビア方式は難しいそうです)、完全で、検証可能で、不可逆的な核放棄を北朝鮮に要求するという「一線」は、変わらないのです。


 それに対し、北朝鮮側は「半島非核化」の段階的な推進と、体制保障を求めています。「北朝鮮の非核化」ではなく、「半島非核化」です。つまりは、
核武装が容易に可能な「在韓米軍」の半島撤退をも求めているのです。


 さらに、体制保障。


 体制保障とは、金正恩国王を中心とする「金王朝」の北半島支配を認めろという話なのですが、トランプ大統領は飲む可能性があります。とはいえ、トランプ大統領の後継者はどうなのでしょうか。


 先日、アメリカはオバマ政権が(妥協しまくって)成立させたイラン核合意からの脱退を発表しました。すなわち、北朝鮮からしてみれば、

「トランプ大統領が体制保障をしてくれたとしても、後継のアメリカ大統領が保障を継続するとは限らない」
 という印象を植え付けられてしまったのです(アメリカ側は故意でしょうが)。


 というわけで、トランプ大統領は、5月18日、
北の体制保障について言及し、北朝鮮側に揺さぶりをかけています。


『米国   トランプ氏「体制を保証」北朝鮮の非核化見返り
https://mainichi.jp/articles/20180518/k00/00e/030/210000c
 トランプ米大統領は17日、来月に予定される北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談を巡り、非核化プロセスとして北朝鮮が反発する「リビア方式」について、「我々が検討しているモデルではない」と明言した。また「ディール(取引)に応じれば、金正恩は力強い保証を得られるだろう」と強調し、非核化に応じれば体制を保証する考えを示した。首脳会談についても「(開催の)予定に変わりはない」と述べた。 (後略)』


 注意しなければならないのは、「リビア方式」と「完全で、検証可能で、不可逆的な核放棄」はイコールではない、という点です。


 先述の通り、北朝鮮の地形上、リビア方式をそのまま実現するのは難しいようです。とはいえ、アメリカが完全で、検証可能で、不可逆的な核放棄を求めていることには変わりはないのです。


 もっとも、金正恩としては、トランプ大統領が「非核化に応じれば体制を保証する」と発言したとしても、「次の大統領は?」という疑念は残ります。


 といいますか、それ以前に北朝鮮が「完全で、検証可能で、不可逆的な核放棄」など飲めるはずがないのです。


 しかも、このまま個別条件で揉め、米朝首脳会談が流れた場合、北朝鮮は「アメリカ」を悪者にし、中国やロシアからの援助を期待することができます。中国やロシアは、現時点におけるアメリカ陣営(日本含む)の仮想敵国化しているため、米朝首脳会談中止を大いに政治利用することでしょう。


 すなわち、北朝鮮は現時点で、
「あやふやな体制保障と引き換えに、完全で、検証可能で、不可逆的な核放棄を求められ、かつ在韓米軍はそのまま」
 という、極めて(北朝鮮にとっては、という意味)厳しい条件で米朝首脳会談を迫られているわけです。まず、飲まないでしょうね。


 というわけで、米朝首脳会談が流れた後でございますが、北朝鮮に残された手は「(ほぼ)一つ」しかありません。すなわち、核弾頭を搭載したICBMを、太平洋に打ち込み、アメリカに「核保有国」として認めさせることです。その上で、アメリカと「対等な交渉」に持ち込むわけです。


 その場合、わが国はアメリカの核の傘から外れる、ということになります。


 骨太の方針2018の閣議決定にせよ、米朝首脳会談にせよ、日本国の運命は今後一か月で決定しそうな状況です。


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