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『国土経済論(前編)①』三橋貴明 AJER2018.2.20
https://youtu.be/A-NfdYbNwkk
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 グローバリズムとは、モノ、ヒト、カネの国境を越えた移動の自由化を「善」とする教義です。同時に、「個人の利益最大化」のみを目指すドグマでもあるわけです。


 すなわち、国家の繁栄、社会の安定、多様な地域社会の興隆、治安の改善、所得格差の縮小、安全保障の維持、福祉の向上等、実際に「国民」の幸福に直結する概念は、目的に含まれていません。目的はあくまで「個人の利益最大化」なのです。


 いやいや、国家が衰退し、社会が不安定化、地域社会も治安もボロボロ、所得格差が極端に開き、安全保障も弱体化し、国民が不幸になるような国には、グローバリストといえども住みたくないでしょ。


 と、普通の人は思うわけですが、ご心配なく。その国の状況が耐え難い状況になったならば、グローバリストは他の国に移るだけです


 何しろ、資本(カネ)の移動も自由化されています。グローバリストは、世界のどこに住もうが構いません。どこからでもおカネを国境を越えて動かし、「最も利益になる国」あるいは企業に投資するだけの話です。何しろ、価値観の中心にあるのはカネであり、国民国家ではありません。


 ヒトがいない? カネで解決(育てるという発想はない)


 技術ない? カネで解決(投資するという発想はない)


 憲法九条により軍事力を行使できない我が国の外交は、「平和をカネで買う」と批判されました。すでにカネでも平和を維持できない状況になっていますが、同時に今や個人や企業に加え、国家までもが「カネ」を利用し、グローバリズムを推進しようとする時代です。


独「EU補助金交付に難民受け入れを条件に」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27233750S8A220C1000000/
 ドイツは、多くの移民を受け入れた国に欧州連合(EU)の補助金を増やしたい考えだ。貧しい中・東欧諸国に向かう補助金の流れを変えようとする動きだ。
 ハンガリーやポーランドなどの国々が多額のEU補助金を受けていながら、2015年の難民危機後に導入されたEUの難民受け入れ分担の実行を拒否していることに、ドイツは不満を募らせている。(後略)』


 難民、移民を受け入れるか否かは、その国の「主権」の問題です。


 無論、EUという国際協定は、各国の国内法の「上位」に存在します。EUに加盟している以上、ハンガリーやポーランドなども難民を受け入れるべき、というのが建前論になりますが、現実はなかなかそうはいきません。


 特に、ソ連の支配下にあったことで、逆に「国民国家」が維持されているハンガリーやポーランドからしてみれば、西欧諸国の価値観に従い、移民国家への道を選ぶなどという選択肢は考えられないのでしょう。

                             


 もっとも、ハンガリーやポーランドにしても、EUに加盟することで、西欧諸国に対する「移民送り出し国」となり、カネの面で利益を得ていたことも確かです。


 ドイツは今回、
「滞在する権利を持つ移民に対する国際的保護の受益者の受け入れと統合に責任を負った国々の政府に対し、EUの構造投資基金で支援する」
 と、補助金の流れを変えようといています。


 ちなみに、上記の考え方に沿い、EUの補助金の流れが変わると、一番得をするのは、当たり前ですが、2015年に100万人を超す難民・移民を受け入れたドイツ自身になります。


 ドイツのメルケル首相は、
「連帯は一方通行ではあり得ない」
「移民のような課題があるのなら、誰もが仕事の分担に加わらなければならないと我々は考える」
 と語り、ハンガリーやポーランドを牽制しています。

 もっとも、現在の欧州の移民問題を「悪化」させたのは、「政治難民受け入れに上限はない!」などと大見えを切った、メルケル首相本人なのでございますが。


 いずれにせよ、移民を受け入れる、受け入れないという「主権問題」について、「受け入れないならば、カネを払わない」とやっているEUは、ある意味でグローバリズム的であり、同時に「末期症状」であるとも思います

 ハンガリーやポーランドは、今後、
カネの利益を優先し、国民国家を壊すか。国民国家を守り、カネを捨てるか
 の選択を迫られることになるわけです。


 本来、経済力とは「カネ」の話ではありません。その国の需要(※安全保障含む)を国民のモノやサービスの生産能力で満たせるのか? こそが、経済力の意味になります。


 そして、経済力強化は「ヒトを増やす」のではなく、ヒト一人当たりの生産量を増やす生産性向上によってのみ達成されます。ヒトの受け入れ、すなわち移民受入は社会を不安定化し、国民国家を壊すことに加え、生産性向上の機会を潰します。


 あるいは、カネ目的で国民の人件費を抑制し、小国への道を歩むのか。政府までもが「カネ」に重きを置き、緊縮財政で国民経済を破壊するのか。

 

 カネに目がくらみ、結局はカネを稼ぐ構造までもが壊されていく。「経済大国」など、もはやうたかたの夢のごとし、でございます。


 過去二十年間の日本がたどった道を、東欧諸国も追いかけてくるのでしょうか。


 いずれにせよ、経済力とは「カネ」の話ではない。モノやサービスの生産能力であるという、国民経済の基本について、人類が学び直す時期が来ているのです。

「経済力とはモノやサービスの生産能力である」に、ご納得下さる方は、

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