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『グローバル化疲れ(後編)①』三橋貴明 AJER2018.1.30

https://youtu.be/zTZAffiW9yU
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 最近、月刊三橋の新コンテンツ(国土経済学・地政経済学)作成のために、田中角栄の「日本列島改造論」を読み返したのですが、吃驚するほどに「自然災害大国 日本」の視点がありません。



 唯一、自然災害について触れられているのは、
「いま東京が関東大震災と同じ規模の大地震に襲われたらどうなるだろうか。東京都防災会議、東京消防庁によると、倒壊家屋二万戸、圧死者二千人、地震が発生してから五時間後に品川区、中野区の面積に匹敵する16万平方キロメートルを焼き尽くし、焼死者実に56万人という恐るべき被害が予想されている(P47)」
 の部分だけです。


 「日本列島改造論」は、主に過密、公害、満員電車、大気汚染、劣悪な住居スペース、都市部の物価高騰などを理由に、東京圏から地方に工場(及び人)を移転させようという発想なのですが、土台として「日本の国土的条件」があるわけではないのです。


 田中角栄が「地震」に触れたのは、上記の「人口が過密な東京で地震が起きたら大変」な部分だけで、日本列島全体が自然災害大国であるという視点が完全に欠けています


 「国土経済学」のコンテンツを作成しているのですが、一番ショックを受けた「図」についてご紹介。大石久和先生の資料で、主要国の「地震力を考慮する地域」を比較したものです。


【日米仏独の地震力を考慮する地域】

出典:大石久和

         
                  

 「地震力を考慮する」とは、構造物を建設する際に、地震発生を前提にしなければならないという意味になります。


 フランスはピレネーとアルプスの周辺、ドイツはやはりアルプスの周辺、アメリカは西海岸のみが「地震力を考慮する地域」となっています。


 それに対し、我が国は何と「全土」。


 日本列島に暮らす限り、「地震」という自然災害からは誰も逃れることはできません。


 ならばこそ、日本政府が技術投資、公共投資により「国民を地震から守る」プロジェクトを継続すれば、我が国が「需要不足」に陥ることなど、絶対にありえないはずなのです。(むしろ、供給能力不足のインフレの可能性が高まります)


 技術投資や公共投資は、もちろん「GDP」という総需要の一部を成します。


 それにも関わらず、現実のわが国は「需要不足」に苦しんでいる。つまりは、日本政府が「国民を守る」という国民国家の基本的な機能を放棄しているという意味になります。まさしく、緊縮財政とは、政府の責任放棄そのものなのです。


 国民を自然災害から守るための投資も、立派な需要である。


 この事実を国民が認識すれば、
「我が国は少子化で(人口減少で、あるいは成熟化で、でもOK)需要は増えない」
 などといった言説が、まさに「世迷言」であることが理解できるはずです


 日本には国土的条件を加味した「国土経済学」が必要なのです。

 日本列島は、地震大国、自然災害大国である。だからこそ、国民は可能な限り「分散」して暮らし、かつ「高速交通網」により市場として「統合」しなければならない。そうすることで、防災安全保障強化と、経済成長を両立する。


 至極真っ当だと思うのですが、田中角栄の著作を読む限り、高度成長期からこの手の「国土的条件」あるいは「防災安全保障」は政治家の頭の中に入っていなかったのだなあ、と、ショックを受けたわけでございます。

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