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『財務省が日本を滅ぼす(その2)①』三橋貴明 AJER2017.11.21
https://youtu.be/UXDrKkdq3yk
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 間もなく第二次安倍政権が発足して五年が経ちます。年が明けると、日銀人事という話になるわけですが、黒田東彦総裁の再任はなさそうな状況です。


『物価上昇「いつか明確に答えられない」 日銀・黒田総裁
http://www.asahi.com/articles/ASKD7440KKD7ULFA00M.html
 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が7日、都内で講演し、物価上昇率2%の目標について「なお距離があることは事実」と述べた。一方で景気改善は続いており、今の金融緩和策が「経済を大きく改善させる効果があることははっきりしている」として、当面は継続する姿勢を強調した。
 物価が上がりにくい理由は、正社員の賃上げの鈍さや企業の値上げに慎重な姿勢にあると指摘。「消費者の値上げに対する許容度も増してきている」として物価上昇の勢いは強まる見込みだと強調したが、その時期は「『いつか』という問いに対し、明確に答えることは簡単ではない」とも語った。』


 ちなみに、先日も取り上げましたが、コアCPIはエネルギー価格(輸入価格)の上昇を受け、0.8%のプラスでしたが、コアコアCPI(食料<酒類除>及びエネルギーを除く消費者物価指数)で見ると、±ゼロでした。


【日本のマネタリーベース(左軸)とインフレ率(右軸)】

http://mtdata.jp/data_57.html#CPIct17


 黒田総裁のコメントからは、何となく「投げやり感」が感じられてしまうのですが、340兆円を超すおカネ(主に日銀当座預金)を発行し、コアコアCPIの上昇率がゼロ。全く物価が上がらない。


 当初は、
「二年で2%(コアCPIですが)」
 というコミットメントをしていたにも関わらず、五年間かけて目標を達成できなかった。デフレは「貨幣現象」という間違った認識の下で政策が行われ(日銀というよりは政府の責任ですが)、五年かけて、
デフレの国が金融政策+緊縮財政の組み合わせでデフレ脱却できるのか?」
 という壮大な社会実験を実施し、結果は「失敗」だったわけでございます。


                        


 ところで、黒田総裁は上記の講演で、物価が上がらない理由について、
「労働需給の引き締まりに比べ、賃金の改善が緩やかであることです。特に、パート雇用者に対して、正規雇用者の賃金上昇が鈍い点が目立ちます
 と、説明しています。


【日本の所得環境 就業形態別の賃金】

http://mtdata.jp/data_58.html#syotoku


 上図は黒田総裁が説明の際に使ったグラフですが、確かに正規雇用者の賃金上昇は、パート雇用者と比較して低いです。というよりも、14年以前はマイナスだったのですね。


 団塊の世代の退職を受け、企業は正規雇用をパートタイマー、アルバイトに切り替えていきました。同時に、正規雇用の賃金を抑制しようとしたことが分かります。


 正規雇用の所定内給与は、雇用者所得全体の七割近いため、影響は大きいです。


 もっとも、少子高齢化に端を発する生産年齢人口比率の低下により、容赦なく人手不足が進みました。というわけで、企業はパートタイマーやアルバイトの給料は引き上げざるを得なかったわけです。


 日本の物価や所得を抑制しているのは、企業の「怯え」であることが分かります。


 正規雇用の給料は一旦引き上げると、引き下げが困難です。それに対し、パート、アルバイトであれば解雇も簡単です。


 解雇が容易なパートタイム・アルバイトは給料を引き上げても確保する。反対側で、正規雇用の給料は抑制。 

 黒田総裁は、正規雇用の給料が上がらないことについて「上方硬直性」と面白い表現をしていますが、いずれにせよ政府が「安定的に拡大する需要」を主体的に作りださない限り、企業の「怯え」は消えないでしょう。


 特に、2019年に消費税が増税され、残業規制で給与が減り、東京五輪のインフラ整備も終わるとなると、企業の「怯え」を払拭することは容易ではありません。


 結局、日本政府が緊縮路線を転換し、長期プロジェクトなどで「安定的に拡大する需要」をコミットメントしない限り、我が国は人手不足が深刻化する中、パートタイム・アルバイトの雇用、所得のみが上昇し、正規雇用の給料は低迷。デフレからの完全脱却を果たせない状況が続くことになるでしょう。

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