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『失業率と実質賃金(後編)①』三橋貴明 AJER2017.9.26
https://youtu.be/a-seRvhJg5s
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 8月の消費者物価指数は、コアCPIで対前年比+0.7%、コアコアCPI(食料<酒類除く>及びエネルギーを除くCPI)で対前年比0%と、相変わらず低迷しておりました。


 要するに、日本のデフレは継続しているわけですが、それにも関わらず人手不足が顕著になってきています。


 理由はもちろん、少子高齢化の影響で生産年齢人口比率が低下し、同時に高齢化の影響で医療・福祉(特に介護)の需要が拡大しているためです。


【主な産業別就業者数の推移(単位:万人)】

http://mtdata.jp/data_57.html#syugyo


 図の通り、リーマンショック後の2009年1月と比較すると、直近の建設業の就業者数は▲25万人、製造業が▲89万人と低迷中。卸売・小売業が+10万人と辛うじて増加。


 それに対し、医療・福祉(介護など)は何と216万人の増加となっています

 この医療・福祉分野における就業者数の増加を、アベノミクスというか「金融緩和」のおかげと主張する人が少なくなく、困惑してしまいます。別に、影響がゼロとは言いませんが、「金融緩和」から「介護における雇用拡大」に至る政策の波及経路を教えて欲しいものです。


 日本の介護分野における需要増は、もちろん「高齢化」の影響です。当たり前です。


 高齢化により、医療福祉の需要が拡大し、反対側で生産年齢人口比率が低下していっている。日本の失業率が低下し、人手不足が深刻化するのは、当然すぎるほど当然なのです。 


 ちなみに、図の産業分野が製造業、建設業、卸売・小売、医療福祉のみなのは、この四業種が日本の就業者数が多い四天王であるためで、他に理由はありません。


                       


日銀短観 人手不足が25年半ぶりの水準に
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171003/k10011165661000.html
 日銀が2日発表した短観=企業短期経済観測調査では、企業の人手不足感がおよそ25年半ぶりの水準まで高まっていることがわかり、多くの企業で働き手の確保が深刻化している実態が浮き彫りになりました。
 日銀の短観では、国内のおよそ1万1000社に景気の見方を聞くとともに、従業員の数が「過剰」か「不足」かも尋ねて指数化していて、マイナスが大きくなるほど人手不足だと感じる企業が多いことを示します。
 今回の短観では、企業の規模や業種を問わず、軒並みマイナス幅が大きくなり、大企業が前回より2ポイント低下してマイナス18ポイント、中小企業も5ポイント低下してマイナス32ポイントとなりました。
 この結果、全体では前回より3ポイント低いマイナス28ポイントとなり、企業の人手不足感が平成4年2月調査のマイナス31ポイント以来、およそ25年半ぶりの水準まで高まっていることがわかりました。(後略)』


 医療・福祉分野をトリガーとした人手不足は、もちろん他の分野にも波及していきます。 


 何しろ、人口の瘤である団塊の世代が労働市場から退出したとして、それをカバーするだけの若い人材は入ってきません。


 外国人労働者を増やしたくないならば(増やしてはいけません)、我が国では各産業分野において「生産性向上」、厳密には生産性向上のための四投資(設備投資、人材投資、公共投資、技術投資)が必要ということになります。


 今回の総選挙における自民党の公約の中には、
「人工知能(AI)など技術革新を活用した「生産性革命」を通じて所得を増やす。2020年までの3年間を「集中投資期間」として、大胆な税制、予算、規制改革などの施策を総動員し、企業の収益を設備投資や人材投資に振り向ける。」
 と、生産性革命(革命、ねえ・・・)について記述が載るようです。


 もっとも、企業の投資にばかり依存するのでは、政府はいりません。政府自らも、生産性向上のための投資拡大に踏み切らなければならないのです。


 一応、政府の生産性革命の詳細は、国土交通省の「生産性革命プロジェクト」のページに掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/sosei_point_tk_000021.html


 インフラ関連の代表的なプロジェクトをご紹介すると、
● ピンポイント渋滞対策
● インフラメンテンナンス革命
● ダム再生
● i-Constructionの推進
● 物流生産性革命~効率的で高付加価値なスマート物流の実現~
● 下水道イノベーション~日本産資源創出戦略~
● クルマのICT革命~自動運転x社会実装~
 などなど、真っ当な政策が(珍しく)含まれています


 特に、竹村公太郎先生が推奨していた「ダム再生」は、日本のエネルギー供給全般に影響を与える可能性が高く、注目しています。


 もっとも、例により「予算」が確保されているわけではありません。国土交通省のページに掲載されているプロジェクトを推進すると、
「防衛費を削る? 社会保障を抑制する? 科学技術予算や教育費も削る?」
 と、なってしまうのが、現在の日本です。


 現在の日本の問題は、「財政」ではない。未だに抜けきれないデフレーション。そして、生産年齢人口比率低下を受けた人手不足深刻化である


 日本は、デフレ(本来は人手過剰)と人手不足が同時に発生するという、極めて珍しい状況にある。という前提で、


人手不足を解消するための投資を拡大することで、現在のデフレを解消する


 というグランドデザインに基づき、いかに政府が支出をするのかについて議論をして欲しいと、心の底から願っているのでございます。デフレによる貧困化と人手不足の深刻化こそが、我々国民の目の前の問題なのです。

「生産性向上のための投資によるデフレ脱却を!」に、ご賛同下さる方は、

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