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『第零次グローバリズム(後篇)①』三橋貴明 AJER2017.8.22
https://youtu.be/-5uKaphgykI
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本日のタイトルは、厳密には、
「失業業率が低下し、有効求人倍率が上昇しているにも関わらず、なぜ日本の実質賃金は上昇しないのか?」
になります。
答えを、青木泰樹先生が教えて下さいました。
『2017年9月9日 【青木泰樹】実質賃金が低迷する理由
https://38news.jp/economy/11049
(前略)4~6月の法人企業統計調査によると、企業業績は概ね好調なようです。
経常利益は前年同期比22%強の増加で四半期ベースの最高益を更新し、16年度の「利益剰余金」は前年度より7.5%増え過去最高の406兆円となりました。
ただ利益剰余金を「内部留保」と捉える記事が散見されますが、それは誤りです。
利益剰余金は企業がこれまで積み立ててきた利益の総額を指しますが、全額を現預金で保有しているわけではありません。
それを使って実物資産を取得したり、負債を返済したりしているからです。
残った部分、すなわち利益剰余金のうち現預金で保有されている部分が、いわゆる内部留保といえます。
ちなみに本年3月末の法人預金残高は235兆円で、ここ5年間で60兆円ほど増加しました。問題となるのはこの部分です。
労働需給のひっ迫も報じられております。
7月の完全失業率は2.8%という低水準でした。また同月の有効求人倍率は1.52、正社員のそれに限っては1.01になりました。
俗にいうところの人手不足です。
企業業績が好調で人手不足である反面、厚労省の「毎月勤労統計調査」によると、実質賃金は相変わらずの低迷が続いています。
7月のそれは前年比で▲0.8%でした。
本日は、産業界の活況にもかかわらず実質賃金が低迷する理由について、二つの観点から整理してみます。(後略)』
まずは、民間非金融法人企業の預金残高の推移です。
【日本の民間非金融法人企業の預金残高(億円)】
http://mtdata.jp/data_57.html#naiburyuho
図の通り、民間の非金融法人企業の預金残高は、四半期ごとの増減はありますが、中期的には着実に増え続けています。直近では235兆円を上回っているのです。
ポイントは、第二次安倍政権発足以降、民間の非金融法人企業の預金残高の増加ペースはむしろ早まった、という点です。
さて、詳しくは後略部をお読み頂きたいのですが、青木先生は「失業率低下」と「実質賃金低迷」が同時に起きている理由について、
〇 生産年齢人口比率の低下により、生産の拡大「無し」で失業率が低下する、日本の構造
〇 退職者が短期労働者に置き換えられることによる、総実労働時間の減少と雇用増の同時発生(要するに、ワークシェアリングですな)
の二点から説明されています。
これは、島倉原氏も、「新」経世済民新聞で指摘されていますが、
『2017年8月24日 【島倉原】アベノミクスの虚構
https://38news.jp/economy/10979
』
「延べ就業時間」(全ての就業者の就業時間を合計したもの)が横ばいの状況が続いている以上、現在の日本において、
〇 生産の低迷
〇 生産年齢人口比率の低下
〇 短期労働の増加
が発生しており、この三つこそが「失業率低下&実質賃金低迷」の原因であることは間違いないです。
というわけで、実質賃金を引き上げるにはどうしたらいいのか、でございますが、青木先生は、
「経営側が業界平均を参考に恣意的に名目賃金(W)を決めている」
として、特に「労働分配率」に注目されています。何しろ、労働分配率は経営者が主体的に決定できるのです。
〇労働分配率=人件費÷付加価値
になります。また、青木先生が書かれている通り、
〇実質賃金=労働分配率×労働生産性
です。日本の実質賃金を引き上げるためには、生産性向上と同時に労働分配率の回復が必要なのです。
ところが、現実は・・・。
『大企業の労働分配率、46年ぶり低水準 4~6月
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H5I_T00C17A9NN1000/
企業の利益のうち労働者の取り分を示す労働分配率が下げ止まらない。財務省の4~6月の法人企業統計調査によると、資本金10億円以上の大企業の分配率は43.5%だった。高度経済成長期だった1971年1~3月以来、約46年ぶりの低水準を記録した。人件費は増えているものの、四半期ベースで最高益を記録した収益環境と比べると賃上げの勢いは鈍い。(後略)』
青木先生は、実質賃金を引き上げるためには、
「継続的な政府による需要創出」
と、本ブログと同じ結論で締めています。政府によるう需要創出は、生産を拡大し、生産性を高めます。
同時に労働分配率を引き上げる「規制強化」あるいは「構造改革も必要なのだと思います。
そもそも、労働分配率がここまで下がってしまったのは、
〇グローバル株主資本主義による利益偏重の経営
〇労働組合弱体化
〇デフレによる人手過剰
などなど、複数の問題があるわけです。「デフレによる人手過剰」は、人口構造の変化により解消されてきていますが、残り二つについては、このままでは未解決のままでしょう。
安倍政権は、いまだに「残業代ゼロ制度」「脱時間給制度」など、労働規制緩和の政策を推進しています。つまり、実質賃金引き下げの道を突き進んでいるわけです。まさに、逆走です。
日本の実質賃金を引き上げるには、需要創出により生産を拡大し、生産性向上を促すと同時に、労働分配率を引き上げる形の「構造改革」が必要なのです。
これが、結論です。
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