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『プライマリーバランス黒字化というという毒針(後篇)①』三橋貴明 AJER2017.7.25

https://youtu.be/5G_x11KDpKE
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 現在のリビアは、トリポリを拠点とするシラージュ暫定首相派と、東部のリビア国民軍との間で「国家分裂」状態が続き、事実上、政府が存在しない状況が続いています。

 すなわち、民間の「自由」な経済活動を規制する権力がないわけです。

 1543年(もしくは1542年)に日本の種子島にポルトガル人が漂着し、ポルトガル商人の対日交易を求める活動が活発化します。わたくしはポルトガル人来訪から鎖国令までの時代を、我が国にとっての「第0次グローバリズム」と呼んでいま


 ポルトガルはもちろん、日本との交易(生糸の輸出)を中心にビジネスを進めていましたが、実は「ヒト」の国境を越えた商売をも推進したのです


 すなわち、奴隷交易です


 ポルトガルはスパイスロード(香料の道)において、スパイス他の商品も交易しましたが、アジア人奴隷も運びました。16世紀から17世紀、いわゆる「南蛮貿易」の時代、ポルトガル人は日本で日本人を奴隷として買い付け、マカオやポルトガルなど、様々な場所で売りつける大規模な奴隷交易が発展したのです。


 日本人が奴隷として売られている事実を知り、激怒した豊臣秀吉が、1587年7月24日にイエズス会の副管区長のガスパール・コエリョに対し、
『予は商用のために当地方に渡来するポルトガル人、シャム人、カンボジア人らが、多数の日本人を購入し、彼らからその祖国、両親、子供、友人を剥奪し、奴隷として彼らの諸国へ連行していることも知っている。それらは許すべからざる行為である。よって、汝、伴天連は、現在までインド、その他遠隔の地に売られて行ったすべての日本人をふたたび日本に連れ戻すよう取り計らわれよ。もしそれが遠隔の地のゆえに不可能であるならば、少なくとも現在ポルトガル人らが購入している人々を放免せよ。予はそれに費やした銀子を支払うであろう。(ルイス・フロイス「歴史」)』
 と、手紙で命令しています。


 この話のポイントは、民間が「自由」に貿易するグローバリズムにおいて、「ヒトの移動の自由」ならぬ「ヒトの交易」が盛んになり、それを規制するためには国家権力(秀吉)が必要だった、という話になります。


 無政府状態になっている現在のリビアでは、ヒトをイタリアに送り出す「ビジネス」が「自由」に展開され、世界を壊しつつあるのは先述の通り。


 しかも厄介なことに、アフリカ側のみならず、ヨーロッパ側も「多文化主義」「人道主義」という思想を盾に、NGOがリビアの密航業者の「ヒトの移動」に加担している有様なのです。


『難民救助の船を密航ほう助容疑で拿捕 イタリア
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170804/k10011086961000.html
 アフリカからヨーロッパを目指して地中海を渡る難民や移民を送り出している密航業者と連絡を取り合い、密航を助けたとして、イタリアの検察は難民や移民の救助を行うNGOの船を拿捕(だほ)したことを明らかにしました。
 地中海ではアフリカからヨーロッパを目指す難民や移民を乗せたボートが沈むなどして死亡したり行方不明になったりする人が相次ぎ、複数のNGOが船で救助活動を行っています。
 こうした中、イタリア・シチリア島にある都市、トラパニの検察は2日、密航を助けたとして、救助活動にあたってきたドイツのNGOの船を拿捕し、船内を捜索して乗組員に事情を聴いたことを明らかにしました。
 検察官は会見で、この船の乗組員が難民や移民を送り出している密航業者と去年、3回にわたって連絡を取った証拠があるとして「不法移民を助ける犯罪行為だ」と非難しました。その一方で、検察官個人としてはNGOが連絡をとった理由は難民や移民の命を救うための人道的なものだと確信しているとしています。
 拿捕された船を所有するドイツのNGOは、インターネット上に出した声明で船が捜索を受けていることを認め「命を救うことが最優先であり、現在活動ができないことをとても残念に感じている」とコメントしています。』


                                  


 ドイツのNGO側は、
「密航してくる移民の生命を助けるという人道主義の観点から、密航業者と連絡を取っていたのだ」
 と、主張するでしょうし、それは「人道主義」から見れば正しいのかも知れません。とはいえ、リビアの密航業者たちのビジネスに加担し、彼らの「利益」を膨らませる手助けをしていることに変わりはないのです。


 イタリア側は、NGOが密航を幇助していると判断し、「国家権力」を用いてNGO船を拿捕したわけでございます。


 さて、結局のところ、何が正しいのでしょうか。悪いのは、誰でしょうか。


 政府がない自由な市場において、ヒトをイタリアに(単価22万円で)送り出すビジネスで利益を稼いでいるリビアの密航業者が悪いのか。


 自由な市場において密航業者と「ビジネス」をし、安全が担保されない状況でイタリアに渡ろうとするアフリカ人たちが悪いのか。


 密航者たちの安全に配慮し、人道主義に基づいて密航業者と連絡を取り、密航船の沈没を防ごうとしたドイツNGOが悪いのか。


 それとも、国家権力を用い、究極のグローバリズムのアフリカ人の密航を「人道主義」に基づき助けようとしたNGO船を拿捕したイタリア政府が悪いのか。


 最終的には「価値観」の問題になります。わたくしは、他者に価値観を押し付ける趣味はございませんが、それにしても、
グローバリズムは自由です。自由だから善なのです
 といったレトリックは、極めて「欺瞞に満ちている」という現実だけはご理解頂けるのではないでしょうか。


 もちろん、「ヒト」を守るために政府がガチガチの規制をしろという話ではありません。全ては、バランスです。


 とはいえ、「自由な市場が良いのです」と極論を主張するグローバリストの皆様には、まさに「究極的に自由な市場」が成立している、現在のリビアにでも移り住んで欲しいと心底から願うのです。


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