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『プライマリーバランス黒字化というという毒針(後篇)①』三橋貴明 AJER2017.7.25
https://youtu.be/5G_x11KDpKE
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厚生労働省が28日に発表した我が国の有効求人倍率は、前月比0.02ポイント上昇し、1.51倍(!)となりました。求職者一人に対し、求人が1.5あるわけで、仕事を選ばない限り、100%就職できることになります。
しかも、正社員に限った有効求人倍率も、1.01倍と、統計史上、はじめて一倍を超えました。
少子高齢化による生産年齢人口比率の低下が終わっていない以上、我が国の人手不足は今後も深刻化していくことになります。
この「人手不足」を移民ではなく「生産性向上のための投資」で埋めたとき、我が国は再び高い経済成長率を取り戻すことになることは、繰り返し解説してきた通り。
とはいえ、人手不足や雇用の改善は、あくまで少子高齢化という特殊要因により生産年齢人口比率が下がっている我が国の「特殊事情」であり、世界はむしろ「人口爆発」という問題を抱えつつあります。
『アフリカ難民 「玄関口」イタリアに苦境続く
https://mainichi.jp/articles/20170728/k00/00m/030/063000c
北アフリカから欧州を目指す難民・移民の最大の「玄関口」にあたるイタリアの苦境が続いている。国際移住機関(IOM)によると、今年に入って地中海を密航してイタリアにたどり着いた難民・移民は9万3417人(今月25日現在)で、前年同期比で約5000人増。「持続不可能な状態」だとして欧州連合(EU)や近隣国に支援を求めるが、決定的な解決策は見いだせない。 (後略)』
トルコが渡航規制を強化し、ハンガリーなどの東欧も国境管理を厳格化したため、ギリシャを「玄関」とするバルカンルートが封鎖されました。結果、移民・難民はリビアから地中海を渡る「中央地中海ルート」を選択するようになり、イタリアが苦境に陥っています。
2016年、中央地中海ルートでイタリアに渡った難民・移民は、対前年比2割増の18万1000人に上りました。もちろん、過去最高です。
しかも、怖い話ですが、現在のリビアには統一政府が存在しません。取締機関がないため、リビアを拠点に移民や難民をイタリアに送り出す「ビジネス」が勃興し、「ヒトの移動」を商売にするブローカー(密航業者)が潤っています。
イタリアのメディアによると、密航料金は一人2000ドル(約22万円)と高額で、しかも人々はゴムボートや漁船にすし詰めにされて送り出されます。
密航業者たちは、もちろん密航者の「安全」には配慮しないため、転覆や沈没による死者が続発。2016年の地中海における死者、行方不明者は、5000人を超えました。
グローバリズムとは、モノ、ヒト、カネの国境を越えた移動を自由化し、政府の権限、権力、規制を最小化することを「善」とする思想です。ある意味で、現在のリビアや地中海では、究極のグローバリズムが成立している
ことになります。
何しろ、リビアが無政府状態も同然ですから、人々は純粋な「市場」でブローカーを選別し、カネを払い、危険を承知で地中海を渡ろうとします。結果的に、船が沈没して水死する羽目になったとしても、自己責任です。
ところで、スプートニク紙に興味深い記事が載っていたのですが、このままでは2065年までに、イタリアの人口の40%が移民になるそうです。政治・戦略研究マキャベリセンターのアナリスト、ダニエル・スカレア氏が、スプートニクイタリアのインタビューに答え、
「政治・戦略研究マキャベリセンターの報告書によると、難民がアフリカから欧州に海を越えてやってくる理由になったのは戦争でも惨禍でもなく、アフリカ大陸での爆発的な人口増加だ。アフリカの人口は100年で世界人口の9%から25%を占めるようになった。このデータによると、1950年から2100年までで、世界人口における欧州人口の比重は22%から7%に減少し、アフリカの人口は9%から40%に増える。結果、2065年にはイタリア国内の移民数は国内人口の40%を超える可能性がある」
と、語っています。
スカレア氏やマキャベリセンターの分析が正しいとなると、たとえISが殲滅され、シリアやイラクが平穏になったとしても、欧州に向かう移民の流れは止まらない、という話になります。
日本の少子高齢化による生産年齢人口比率の低下が、失業率を押し下げ、有効求人倍率を引き上げているように、人口構造を理由とした環境変化は、中長期間、継続することになります。
今後の日本は、人口構造の変化により、少なくとも20年間は「超人手不足」という問題を抱えることになりますが、世界は「逆」なのです。特に、欧州は今後、数十年間(あるいはそれ以上)、アフリカ大陸からの移民流入に苦しめられることになります。
そして、最終的にはイタリアやスウェーデンを先頭に、
「これまでとは違う国」
に変貌を遂げることになるわけです。
イタリアの人々が「イタリア国民の国家」を望むならば、国境を閉鎖し、移民船は追い返すか、もしくは撃沈するという、現代の価値観ではなかなか許容しがたい「国家権力」で国家を防衛する必要があります。人権主義や多文化主義が浸透してしまった欧州(欧州でなくても)において、その種の「国家防衛」ができるのでしょうか。
恐らく、できないでしょう。
となると、イタリアには今後も毎年何十万もの移民が流入することになります。ある閾値を超えると、社会が受ける痛みに耐えかねたイタリアは、移民難民を「他国」に追い出そうとするでしょう。
その時点で、欧州連合は事実上、瓦解することになります。
少なくとも、ハンガリーやポーランドが「国家防衛」に走るのは間違いありません。
日本は確かに人手不足です。この人手不足を外国人労働者で埋めようとし、世界の移民に「門戸を開く」などとやった日には、最終的にどうなるか。
イタリアの惨状を見てもなお、日本の人手不足を「移民で」などという国会議員がいた場合(大勢いるでしょうが)、間違いなく「日本国の政治家失格である」と思うのです。
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