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『プライマリーバランス黒字化というという毒針(後篇)①』三橋貴明 AJER2017.7.25

https://youtu.be/5G_x11KDpKE
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 国家戦略特区とは、元々が特定の事業家、投資家が、自らの利益最大化を達成するための規制緩和を実現するための一手段です。全国的に一気に規制緩和をしようとすると、反発が大きくなるため、「特区」に限定してはじめ、全国展開するというスキームになっています。


 要するに、小泉政権時代の「構造改革特区」の焼き直しです。構造改革という言葉が、今一つ評判が良くないため(その割に使ってはいる政治家も多いですが)、「国家戦略特区」と名前を変えたのです。


 国家戦略特区の最大の問題は、特区の認可を国会議員
ではなく(事実上)、諮問会議の有識者議員と称する民間人が決めてしまうという点です。ちなみに、現在の有識者議員と称する民間人は、以下の五名。


・ 秋池 玲子 ボストンコンサルティンググループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
・ 坂根 正弘 株式会社小松製作所相談役
・ 坂村 健 東洋大学情報連携学部 INIAD学部長
・ 竹中 平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授 (パソナグループ取締役会長)
・ 八田 達夫 アジア成長研究所所長 大阪大学名誉教授


 竹中氏のタイトルは、例により「大学教授」のみになっていたため、「パソナグループ取締役会長」を付け加えておきました。


 五名の民間人は、国会で認定されたわけではありません。「主導」的に国家戦略特区における規制改革を推進するべき安倍総理(法律でそうなっています)が「任命」したものです。日本国民にも、国会議員にも、諮問会議のメンバーを罷免する権利はありません


 国家戦略特区諮問会議の民間人は、法的には、

「「第三十三条 四   経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者」

 と、実に抽象的な基準で総理大臣が任命することになっています。ちなみに、国家戦略特区法に、「罷免」の条項はありません。


(参考まで。国家戦略特区法では、特区を設ける理由として「産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが重要である」ことが挙げられています(というか、それしか挙げられていません)。つまりは、国際競争力の強化のために、特区法は作られているのです(表向きは)。獣医学部増設が、日本の国際協力と関係があるとは、わたくしは寡聞にして知りませんでした!


 国民の手が届かない「有識者議員」たちが、恣意的に運用する国家戦略特区。「発展途上国?」あるいは「中国?」としか表現のしようがないのです


 しつこいですが、わたくしは個別の規制緩和の善悪について論じているわけではありません。「議会」が主導権を持てない中、民間人が勝手に政策を決める状況について「民主主義が成立していない」と問題視しているのです。


 ちなみに、構造改革、グローバリズムでは先輩格のアメリカは、まだしも議会が機能しています。だからこそ、アメリカでは企業と国会議員を結び付けるロビイストが大活躍し、莫大なおカネが動くわけですが、それでも「議会」が政策を決めていることに変わりはありません。


 議会が機能していない日本国は、ある意味でアメリカ以上に「グロバーリズムのスキーム」が進化しており、どちらかというと共産党官僚との結びつき(=政治力)が全てを決める中国に似てきています。


 国家戦略特別区域法が成立してしまった以上、竹中氏らグローバリストたちが「自社に都合がいい規制改革」を進めることは、もはや決定事項でした。


 もっとも、今の日本では、現実というのは想像の斜め上をいきます


 沖縄県の翁長知事が、沖縄の発展にとって離島の振興が重要とし、国家戦略特区として離島における外国人の農業就労が可能になる特区の創設を要請しました

              

 

農業特区指定に前向き 外国人受け入れ、農用地内レストラン 知事要請に山本地方相
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-541332.html
 山本幸三地方創生担当相は23日、地方視察で沖縄を訪れ、県庁で翁長雄志知事と会談した。翁長知事は国家戦略特区制度に関し、農業分野への外国人労働者の受け入れや農用地内での農家レストラン運営について特区指定の申請をする意向を示し、支援を求めた。山本氏は会談後、知事の要請について記者団に対し「ぜひ(特区指定の申請に)手を挙げていただきたい。その資格を十分に持っているので、われわれとしてもぜひ前向きに考えていきたい」と述べた。
 翁長知事は会談で「特に離島では、農業の関係で外国人の特区をお願いしたい。農家レストランが農用地内でできない。農用地内で手軽にすれば観光にもつながっていくが、まだできない。これから意欲的に特区申請するので、ぜひ支援いただきたい」と要請した。(後略)』


 TPPの議論において、わたくしは、
「砂糖の関税がなくなると、沖縄の離島でサトウキビを栽培し、国境を守って下さっている農家の方が廃業し、沖縄本島等に移住することになる。すると、無人の島々が増え、ふと気が付くと、そこに中国人が住み着いている
 といったレトリックで「島嶼防衛の安全保障」について警鐘を鳴らしたのですが、今や日本は沖縄県知事が自ら「外国人を離島に入れたい」と公言し、しかもそれについてほとんどの政治家、国民が疑問を持たない


 恐ろしいことに、外国人労働者の農業就労を認める制度は、6月に国家戦略特区法が改正されて導入が決まっています。沖縄県が離党への外国人労働者受入の特区申請をしたとして、それを審議するのは上記の有識者議員と称する連中です。


 島嶼防衛の安全保障の「あ」の字も議論されないまま、認定が決まることになるでしょう


 本来、農業分野への外国人労働者受け入れにせよ、沖縄の離島への外国人労働者導入にせよ、日本国の安全保障(食料安全保障含む)と密接に関係があるイシューになります。当然ながら、国会で揉めにもめ、日本国の安全保障を担保しつつ、慎重にも慎重に事を進めなければならないはずです。


 それが、国家戦略特区諮問会議で、スパーンッと決まる。こんな有様で、亡国に至らなければ、むしろ奇跡です。


 日本政府は、最低でも「国家の安全保障を脅かす規制緩和は推進しない」ことを明言し、「議会」に主導権を戻さなければなりません。さもなければ、単なる「ビジネス」の視点で次々に規制が緩和され、我が国の亡国は回避不可能となるでしょう。
 

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