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『プライマリーバランス黒字化という毒針(前篇)①』三橋貴明 AJER2017.7.18

https://youtu.be/TrM8icaF7DU
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 物価とは、我々生産者が生産するモノやサービスの価格です。モノやサービスの価格が上昇するのが、インフレです。


 モノやサービスの価格が上がるには、当たり前ですがモノやサービスがたくさん買われなければなりません。すなわち、消費・投資という需要の拡大が必要なのです


 デフレーションとは、国民経済全体で消費・投資の合計、すなわち総需
であるGDPが不足する経済現象です。


 デフレの解決策は総需要の拡大になります。とはいえ、実質賃金が下がり、需要が縮小するデフレ期に民間が消費や投資を増やすことはありません。


 だからこそ、通貨発行権という強大な権力を持つ政府が、需要拡大のための財政出動を実施する必要があるのです。


 ところが、安倍政権は2013年6月に「骨太の方針2013」において、2020年までのプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)の黒字化を閣議決定してしまいました。


 以前にも書きましたが、骨太の方針とは、正しくは「背骨の方針」でございます。骨太の方針でPB黒字化が決まった以上、予算措置を伴う全ての政策が「緊縮」とならざるを得ないのです。


 もっとも、安倍政権は2012年の総選挙で「デフレ脱却」を謳って誕生した政権です。


 PB黒字化路線は、当たり前ですがデフレ促進策です。デフレ脱却を公約に掲げながら、デフレ促進策を推進する。この不整合の解消のために「救世主」として登場したのが、浜田宏一教授、岩田規久男教授らの、
「日銀がインフレ目標をコミットメントし、量的緩和を継続すると、期待インフレ率が上がり、実質金利が下がり、消費や投資が増えてデフレ脱却できる」
 という、いわゆるリフレ派理論でした。


 リフレ派理論に従い、日本はMB(マネタリ
ーベース)の拡大を続けてきました。とはいえ、何しろPB目標を掲げ、緊縮財政を実施しているのです。


 政府が緊縮財政というデフレ化政策を推進する反対側で、中央銀行がインフレ目標や量的緩和というデフレ対策を実施すると、どうなるのか。


 壮大な社会実験でございました。。。。


              

 

【日本のマネタリーベース(左軸)とインフレ率(右軸)】

http://mtdata.jp/data_56.html#MB


 黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任して以降、本銀行はすでに330兆円もの日本円を新たに発行しました
(ほとんどが日銀当座預金)。


 ところが、物価は一向に上がらず(緊縮財政をやっている以上、当たり前です)、日銀の目標達成時期は先送りが繰り返されました。


日銀  遠のく物価目標達成 総裁任期中は絶望的 決定会合
https://mainichi.jp/articles/20170721/k00/00m/020/074000c
 日銀は20日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを従来の「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」に1年先送りした。一方で、追加の金融緩和は見送った。黒田東彦総裁は20日の記者会見で「物価上昇のモメンタム(勢い)は維持されている」と強調したが、目標達成は遠のく一方だ。(後略)』


 そもそも、日本銀行は15年度のインフレ率2%を目標として掲げていたのです。すなわち、「2年で2%達成」です。


 ところが、目標達成時期はすでに六回も延期され、ついに19年度。黒田総裁の任期中の目標達成は「不可能」であると、日銀自ら認めざるを得ない状況になりました。


 日銀が精一杯やったところで、政府が緊縮路線を改めない限り、物価が上がるはずがありません。そういう意味で、日銀首脳部が本気で目標を達成したいならば、政府の緊縮批判を展開しなければならないわけですが、
「デフレは貨幣現象」
 という、奇妙な論理で政策を続けてきた以上、今更「政府が緊縮財政すると、日銀がおカネを発行したところで物価は上がらない」という真実を認めることもできないのでしょう。佐藤氏の言う「経路依存性」ですね。


 改めて振り返ると、もし2012年に浜田氏らが安倍総理を篭絡しなければ、「金融緩和と緊縮財政」などという、アクセルとブレーキを同時に踏むような政策の不整合は起きませんでした。


 日本は、いわゆるリフレ派の「考え方」により、五年を無駄にしたのです。それでも、学者連中は誰一人責任を取ろうとせず、今も要職に就いたままです


 政府はいい加減に「デフレは貨幣現象」の誤りを認め、「デフレは総需要の不足」という正しい認識に基づき、財政出動という正しいデフレ対策に踏み切らなければなりません。そのためには、PB黒字化目標の破棄が絶対に必要なのです。

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