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『デフレを深刻化させる竹中指標①』三橋貴明 AJER2017.6.27

https://youtu.be/EUoVu73TIEY
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 チャンネル桜の最近の番組で、最近、日本で流行りに流行っているプロパガンダ手法についてご紹介しましたが、その中に「用語の変更」がありました


 政府の負債を「国の借金」と、国債の貨幣化を「財政ファイナンス」と呼び変え、実態を分からなくさせるという手法ですが、「用語の変更」の逆、「定義の変更」というのもあるのです


 定義の変更は、主に政府が使うプロパガンダ手法なのですが、特定の用語の「中身」を入れ替えてしまうのです。結果的に、実態が分からなくなるというのは、「用語の変更」と同じです。


 代表的な例は、「潜在GDP」になります


 青木泰樹先生が、「新」経世済民新聞に、現在の「潜在GDP」の問題点を、ずばり指摘して下さいました。


【青木泰樹】「潜在GDP」を「平均GDP」へ改称すべし
https://38news.jp/economy/10751
『辞書を引くと、潜在の意味は「内部に潜んで表に現れないこと」と記されています。
 他方、平均は「差をなくすこと。対象となる数(量)を均した値」とあります。
 一般常識として、潜在と平均は同義ではありません
 自分の「潜在的な能力」を「平均的に発揮する能力」と考える人は、滅多にいないと思われます。
 ところが内閣府や日銀の発表する潜在GDPの定義は、この一般常識から外れています。
 「潜在GDP」とは「過去平均の実質GDP」とされているからです
 この定義は「経済は平均的に均衡軌道上を進行する」という主流派経済学の経済観に基づくものですが、人びとに誤解をもたらす根源です。
 実際、この定義がGDPギャップの推計に使われ、経済政策の策定に由々しき影響を及ぼしています。
 政治家、経済人およびマスコミ人の中で、「潜在とは平均を意味する」という役所の用語法に気づいている人は殆どいないと思われます。
 まさか潜在GDPが平均GDPを意味し、潜在成長率が平均成長率であるとは思いもよらないのではないでしょうか。
 大多数の人たちは「潜在」を一般的な意味で考えるため、「潜在GDPは現実GDPの越えられない壁(限界)である」、あるいは「潜在成長率は経済成長の天井である」と誤って認識してしまうのです。(後略)』


 青木先生のコラムは、日本の「デフレ化指標」の一つたる「平均概念の潜在GDP」の致命的な問題について、細かく解説して下さっていますので、是非ともお読みくださいませ。


 概要を解説しますと、まず「潜在GDP」とは、
「日本の労働力や設備がフル稼働した際に、生産可能なGDP」
 なのです、本来は。


 上記の考え方に基づく潜在GDPを、「最大概念の潜在GDP」と呼びます。


 ところが、経済学の世界では、いつの間にか潜在GDPが「過去に生産されたGDPの平均」という概念に変わってしまったのです。実際、内閣府は潜在GDPについて、
「経済の過去のトレンドからみて、平均的に生産要素を投入した時に実現可能なGDP」
 と、定義しています。


 いや、ちょっと待てい! 例えば、わたくしがアスリートだったとして、
君が出し得る
最高タイムは、過去のレースの平均タイムだよ
 と、言われれば、誰でも「はあ?!」となるでしょう。わたくしの過去の最高タイムは、文字通り「最高タイム」だったときのレースのタイムです。最高タイムを叩きだすわたくしの走りが、「潜在走力」になるはずです。


 ところが、経済「学」の世界では、潜在GDPは「過去の平均」と定義変更がされてしまっているのです。


 しかも、潜在GDPは「労働投入量+資本投入量+全要素生産性(TFP)」で変わるのですが、青木先生のコラムにもありますが、日銀の潜在GDPの試算はTFPという生産性の向上を「無視」しています


 結果、潜在GDPの大きさは、「最大概念の潜在GDP>内閣府の平均概念>日銀の平均概念」という関係になっているのです。


            


1~3月期の需給ギャップ、プラス幅はリーマン危機直前以来の大きさ 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL05HEO_V00C17A7000000/
 日銀が5日発表した1~3月期の需給ギャップはプラス0.79%となり、2016年10~12月期(プラス0.57%)からプラス幅が0.22ポイント拡大した。需給ギャップがプラスとなるのは16年7~9月期から3四半期連続で、プラス幅はリーマン・ショック直前にあたる08年4~6月期(プラス0.96%)以来の大きさだった。生産設備など資本側の稼働率が改善したほか、労働需給も一段と引き締まった。
 需給ギャップは経済全体の需要と供給の比率を示す。数値がプラスになると需要超過を示し、物価が上がりやすくなる。日銀は需給ギャップの推計値を3カ月ごとに公表している。日銀はマクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、物価が目標とする2%に向けて上昇していくとみている。(後略)』


 ア~ホ~か~・・・・。


 そもそも、需給ギャップ(=名目GDP-潜在GDP)がプラスになる時点でおかしいのです。需給ギャップがプラスということは、我々は「生産不可能なモノやサービスを購入している」ということになってしまいます。


 先のアスリートの例で言えば、
「君の潜在的に出しうる最高タイム(例:10秒)から、最新のタイム(例:9秒)を差し引くと、数値がプラス化(例:1秒)した」
 という話です。


 ちょっと待て、「=潜在的な最高タイム-最新タイム」がプラス化したということは、「潜在的な最高タイム」とされていたものは、実際にはそうではなかったということになりますよね。


 同じく、需給ギャップがプラス化するということは、潜在GDPが「生産可能なGDPの最大値」でも何でもないという意味になります(実際、何でもないのですが)。


 しかも、日銀の潜在GDPの計算は、TFPという生産性向上要素を省いているため、GDPデフレータがマイナスである(明らかにデフレ)であるにも関わらず、「需給ギャップが3四半期連続でプラス!」などという、おかしな状況になるわけです。


 日銀にせよ、内閣府にせよ、現在の「潜在GDP」の定義は間違っており、国民や政治家に誤解を与えます


 政府は、青木泰樹先生の提言通り、「平均概念の潜在GDP」について、概念を正しく表す「平均GDP」と用語を変更しなければなりません。


「政府は潜在GDPを『平均GDP』に改めよ!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!

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