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『少子高齢化が日本経済を救う(後編)①』三橋貴明 AJER2017.5.30

https://youtu.be/onEQa07GWBM
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 サウジアラビア、UAE、エジプト、バーレーンの中東4カ国がカタールと断交するわ、安倍総理が中国の国家戦略「一帯一路」に、初めて協力を表明するわ、世界が壊れていっている印象ですが、今日は地味な話題。


 5月14日に、わたくしがテレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」に出演した際のテーマの一つ、「もやしの不当廉売」です。


『モヤシ安すぎ?生産者が悲鳴 原料高騰、廃業100社超
http://www.asahi.com/articles/ASK653CM6K65UTIL00R.html
 モヤシの値段が安すぎるとして生産者団体が取引先のスーパーなどに値上げを求めている。原料が高騰する一方、商品価格が上がらず、10年足らずで100社以上が廃業。「このままでは食卓から消えてしまう」と訴える。家計の味方はどうなってしまうのか。
 4月下旬、東京都北区のスーパー。特売で1袋(200グラム)15円のモヤシが売り出され、多くの人が買い求めた。近所の主婦(37)は「毎日のように色々な料理に使うので安いのはありがたい」。生産者が値上げを求めていることは知らず「利益は出ていると思っていた」と話した。
 「モヤシ部門は赤字。企業努力も限界です」。1日約20万袋を生産する旭物産=水戸市=の林正二社長(63)はため息をつく。7年前に作った工場は機械化を推し進めた。大量に使う水の質を向上させ、食品安全の国際認証も取得。だが値段には反映されず「こだわっても消費者には『モヤシはモヤシ』と見られてしまう」。
 林社長が理事長を務める「工業組合もやし生産者協会」によると、2009年に230社以上あった生産者は100社以上が廃業。協会は3月、値上げを求める声明文を取引先のスーパーなどの団体に送った。
 苦境の大きな要因は、国内消費量の大半を占める緑豆モヤシの原料の高騰だ。輸入元の中国ではより収益性の高い穀物への転作が進んで減産傾向。降雨による品質悪化も追い打ちをかけ、価格は05年の3倍近くになっている。
 一方、モヤシの平均小売価格(東京都区部)は同年から1割ほど下落し、今年4月時点で1袋(200グラム)30円。林社長は小売価格40円前後(納品価格25~30円)が適正だと訴える。(後略)』


 当たり前でありながら、意外と知られていない事実でもあるわけですが、小売価格40円が適切な「もやし」を、店頭で15円で販売することは、不当廉売行為です。すなわち、違法です。
 日本の独占禁止法には、「不公正な取引方法」の条項があります。


独占禁止法 第二条
(9)この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの


不公正な取引方法
(不当廉売)
6 法第二条第九項第三号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。


 独占禁止法及び不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)により、費用を著しく下回る対価で継続して供給、あるいは不当に商品を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるものは「不当廉売」(要するにダンピング)とみなされ、違法です。公正取引委員会は、違反行為をした者に対し、違反行為を除くために必要な措置「排除措置命令」を講じることになります

 スーパーなどの小売店が「過剰競争」の中、もやしを過剰に低い価格で売り、客寄せを図る。負担を、もやし生産者に押し付ける。


 もやし生産者は、これまた過剰競争の中で、取引先を失うことを恐れ、赤字価格で納品せざるを得ない


 流通丸ごと「ブラック化」でございます。


 過剰な競争で、もやし生産者が一社、また一社と廃業していき、我が国の虎の子の「供給能力」が壊されていく。やがては、我が国はもやしを生産することができないという意味の発展途上国と化すでしょう。


 朝日新聞の記事の最後に、早稲田大学の野口智雄教授による、
「生活必需品とも言えるモヤシの生産が恒常的に赤字なのは異常。改善策を講じるべきだ。値上げをためらう小売りの意識を変えられるのは消費者だけ
生産者の健全経営があってこそ、食の安全や品質は担保される。安心して食べ続けたいなら値上げを容認する社会的な合意が必要だ。生産者も経営の実態を示して理解を求め、高値で売れる付加価値の創造に取り組むべきだ」
 とのコメントが載っていましたが、食の安全や品質に加え、消費者に思い出して欲しいのは、
生産者と消費者は、同一人物である
 という、経済の基本です。


 わたくしたちは、生産者としてモノやサービスを生産し、顧客(消費者など)に消費、投資として支出(購入)してもらい、所得を稼ぎます。

 とはいえ、話はここで終わらないのです。今度は、わたくし達は稼いだ所得を持ち、顧客側に回り、別の生産者が生産したモノやサービスを必ず買います。すると、別の生産者に所得が生まれます。


 我々国民は、消費者であると同時に、生産者でもあるのです。

 スーパーが不当廉売行為で痛めつけている「もやし生産者」にしても、スーパーの顧客になりうるのです。スーパーの不当廉売で、もやし生産者が貧しくなってしまい、購買力が減ってしまうと、回りまわってスーパーの売上に悪影響を与えます


 日本には、未だに公務員を叩くルサンチマンが蔓延しています。わたくしは公務員ではなく、公務員の親戚もいないので、公務員給料が高かろうが安かろうが、どうでもいいです。とはいえ、このデフレ期に公務員給与を引き下げると、彼ら、彼女らは確実に消費を減らします。


 そのとき、購入を控えられるモノやサービスは、「貴方」が生産者として生産しているモノ、サービスかも知れないのですよ。程度の想像はして欲しいものです。


 国民経済は繋がっています。


 もちろん、不当廉売行為で客を確保しようとするスーパーの気持ちは、痛いほどわかります。何しろ、日本は安倍緊縮財政の影響で、デフレーションから抜け切れていません。


 それにしても、過剰サービスを過剰に安い価格で販売することを続けると、日本国が「総ブラック化」するだけの話です。


 あるいは、消費者にしても同じです。消費者が「過剰に安い価格」を是とする限り、我が国の食の安全や質は保てず、それどころか最終的には「もやしを生産できない」事態に至るのです。


 デフレが終わっていない以上、過剰サービスの定価販売は続かざるを得ないでしょう。それでも、わたくし達国民一人一人が、
良い製品やサービスには、適正な価格を支払うのは当たり前
 という常識、あるいは「良識」を取り戻すことこそが、日本の国民経済の正常化への第一歩だと信じるのです。 


「良い製品やサービスには適正な価格を支払う」に、ご賛同下さる方は、

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