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『移民政策のトリレンマ(前編)①』三橋貴明 AJER2017.3.21

https://youtu.be/GTYCRKe91j0                    

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 「欧州連合」ではなく、「欧州連邦」で合っています。

 来月は、フランス大統領選挙が始まりますが、その前に、イギリスのEU離脱交渉開始です。


英政府 29日にEU離脱を正式通知へ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170320/k10010918361000.html
 イギリス政府はEU=ヨーロッパ連合からの離脱について、今月29日にEU側に正式に通知することを明らかにしました。イギリスが国民投票でEUからの離脱を決めてから、およそ9か月がたちますが、離脱の通知を受け、イギリスとEUとの間で離脱交渉が正式に始まることになります。
 イギリス政府は20日、EUのトゥスク大統領の事務所に対し、離脱の通知を29日に行う意向を伝えたと発表しました。
 これについて、デービスEU離脱担当相は「この国にとって、最も重要な交渉が始まろうとしている。イギリスのすべての地域や、EU加盟国にとって、よりよい合意を目指す」とコメントしています。
 イギリスが国民投票でEUからの離脱を決めてから、およそ9か月がたちますが、離脱の通知を受け、イギリスとEUとの間で、原則2年間とされる離脱交渉が正式に始まることになります。(後略)』


 なぜ、二年間なのかと言えば、リスボン条約が「離脱通告後、二年で失効」となっているためです。


 EU側としては、このタイミング(フランス大統領選挙前)でイギリスと「温和な離脱交渉」を始めるわけにはいきません
「あ、何だ。別に、EU離脱といっても大仰な話ではないのか・・・」
 と、フランス国民に思われては、たまったものではないのです。EU離脱については、あくまで「非日常」として設定しておく必要があります。


 というわけで、強硬姿勢で来るかなあと思っていたら、やはりそうきました。EUサイドは、新たな貿易協定は、「離脱後」まで交渉しない姿勢を見せています


 そうなると、イギリスは一旦、EUとの協定を「終結」した後、改めてFTA(またはEPA)の交渉を始めなければなりません。


 メイ首相は、
「EUからの移民を制限する」
 と同時に、
「EUという単一市場から撤退し、新たな協定を結び直す」
 方針を示していますが、状況によってはEUとの協定に「空白期間」が生まれてしまうわけです。

 もっとも、何度も書いていますが、イギリスとの貿易協定を「全面破棄」などとやり、互いに関税をかけあった場合、損をするのはEU側です。何しろ、EUの対イギリス貿易は、アイルランドを除くと黒字なのです。


【2014年 イギリスの対EU貿易状況(単位:百万英国ポンド)】
http://mtdata.jp/data_53.html#UKEU


 特に、EUの中心国であるドイツの対英貿易黒字が大きいわけで、最終的には「貿易協定は、現状のまま」というところに落ち着くと予想しています。


 それにしても、イギリスの欧州連合からの離脱は、リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵以来の「汎ヨーロッパ主義」すなわち欧州連邦構想の終わりの始まりということで、感慨深いものがあります。

 国家とは、日本を代表とする自然国家と、アメリカを代表とする人工国家の二種類があります。人工国家は、国民統合のための「共通認識」「共通基盤」が必要です。アメリカの場合は、星条旗への忠誠、アメリカ英語の強制、独立宣言における、


『われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったときには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有するということ、である。(「アメリカ独立宣言」から抜粋)』


 という、ジョン・ロック的な価値観により、国家を成り立たせてきました。

 改めて、欧州連邦の共通認識が何かといえば、人権、寛容、民主主義といった観念に加え、「自由=グローバリズム」があったわけです。奇妙な話ですが、欧州の人々は、国家のパワーを弱体化させるグローバリズムという価値観に基づき、新たな国家を成立させようと試みたことになります。


 そして、特に「ヒトの移動の自由=移民問題」について、各国の国民が我慢できなくなり、今日の瓦解を迎えたことになります。


 結局、国民は「国民」としてしか生きられないという現実を、欧州連邦の建国という壮大な社会実験の失敗が教えてくれたことになります。


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