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『ポストグローバリズム時代に一番有利な国①』三橋貴明 AJER2016.12.27

https://youtu.be/qCnlVHWdptU

   

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 1月22日に開講となる三橋経済塾第六期 では、毎月のわたくしの講義に加え、ゲスト講師をお招きし、ご講演頂きます。初回は、以前も書きましたが、完全なる理解を目指し「経済」「お金」に関する知識を集中的に叩き込むため、ゲスト講師はお招きしておりません。


 というわけで、2月以降は講義の後半にゲスト講師にご講演頂くことになります。現時点で決定しているゲスト講師の皆様は、以下の通りです。


第二回:ゲスト講師:竹村 公太郎氏(日本水フォーラム代表理事・事務局長)「水力発電が日本を救う」「日本史の謎は「地形」で解ける」など著作多数!
第三回:ゲスト講師:藤井 聡(京都大学大学院教授、内閣官房参与) 
第四回:ゲスト講師:青木 泰樹氏(京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授)
第五回:ゲスト講師:中野 剛志氏(評論家)
第六回:ゲスト講師:施 光恒氏(九州大学准教授)
第十回:ゲスト講師:柴山 桂太氏(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)


 どうですか!豪華絢爛でしょう!

 七回、八回、九回、十一回、十二回は未だ決定しておりませんので、決まり次第、ご報告いたします。ちなみに、青木先生には「シムズ論文」を取り上げてもらう予定です。


 もちろん、講義当日に会場にお越し頂かなくても、インターネットから受講、あるいはゲスト講師の講演を視聴できます
 三橋経済塾の入塾申込は、以下から可能です。
http://members6.mitsuhashi-keizaijuku.jp/


 さて、雇用の問題。


失業者100万人・青年失業率10%、韓国に「雇用氷河期」到来
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/01/12/2017011200563.html
 景気低迷に構造調整の余波が重なり、昨年の失業者数が100万人を超え、年間の青年失業率も過去最高の9.8%を記録した。不況の長期化で「失業者100万人、青年失業率10%」時代という雇用氷河期を迎えた格好だ。(後略)』


 韓国に限らず、多くの国々で雇用、特に若年層失業率が問題になっています


 ちなみに、なぜ韓国は「青年失業率」を発表し、「若年層(15歳-24歳)失業率」ではないのか、お判りでしょうか。韓国の青年失業率とは、15歳から「29歳」という定義なのです。


 韓国の青年失業率は、10%。当たり前ですが、25歳から29歳までの若者は、15歳から24歳までの若者に比べ、仕事を得ている可能性が高いのです。というわけで、韓国の若年層失業率は、10%を上回っている可能性が高いのでございます。


 それはともかく、ILO推計値による、主要国の若年層失業率は以下の通り。 


【2015年 主要国若年層失業率(%)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_55.html#Jakunen


 若年層失業率が、明らかに「突出して低い」のが我が国です。

 2016年11月の若年層失業率は、何と4.3%! どこまで下がるんだ、という感じですが、まだまだ下がるでしょう。


 さらに、完全失業率も・・・。


【日本の完全失業率の推移(%)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_55.html#Unenp


 日本の完全失業率は、リーマンショック以降、民主党政権、安倍政権と、中期的に下落傾向にあるのが分かります。


 問題は、この失業率の低下が「金融緩和の効果なのか、否か」です。


 というわけで、安倍政権が発足した2013年1月と、直近について、主要産業の就業者数を比較してみましょう。(非農林業のみ)


【2013年1月、2016年11月 主要産業就業者数比較較】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_55.html#sangyoubetu


 雇用増が大きかったのは、まずは「医療・福祉」の46万人、次いで「卸売業,小売業」の27万人、「情報通信業」21万人、「不動産業,物品賃貸業」同じく21万人、ようやく「製造業」で13万人、建設業が4万人という結果になっています。


 というわけで、日本の雇用増を牽引したのは少子高齢化による人口構造の変化を受けた「介護需要の増加」、スマートホン普及による「アプリ開発需要の増加」の影響が大きいと考え、先日の桜の討論でしつこく野口教授に、
金融緩和と介護の雇用増と、何の関係があるのですか?」
 と、繰り返し質問したわけです。明確な回答は最後まで得られませんでしたが。

 ちなみに、「卸売業,小売業」は観光サービス活況の影響でしょう。


 また、不動産業,物品賃貸業」はもちろん収益マンション投資の拡大です。そういう意味で、金融緩和(による金利の低下)が影響を「与えていない」という話ではありません。それにしても、リーマンショック以降の失業率の低下は、「安倍政権の金融緩和の成果」と断言するのは、これは乱暴というものです。何しろ、肝心の製造業の伸びが小さいわけです。


 結局、どういうことなのか、という話なのですが、「新」経世済民新聞で、島倉原氏が正解を寄稿して下さっています。


 【島倉原】アベノミクスで雇用は改善していない
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2017/01/12/shimakura-65/

『(前略)現在、確かに有効求人倍率は1990年前後のバブル期並みに上昇しています。
 問題は、供給に対する需要の相対的な強まりが実現する経路には大きく二通りあること。
 まず一つは経済活動が活発になり、需要の絶対水準が高まる場合
 この場合は有効求人倍率の上昇と共に、実際に雇われる人数も増加するでしょう。
 もう一つは経済動向とは無関係に、労働力の供給水準が低下する場合
 こちらの場合は有効求人倍率の上昇と共に、逆に雇われる人数が減少することでしょう。

 したがってリフレ派の主張が正しいなら、直近において雇われる人数が増加しているはず。


http://bit.ly/2j0MET8
 その指標となるのが上記グラフの「新規就職件数」なのですが、ご覧のとおり、新規就職件数はむしろ減少しています

 すなわち、直近における有効求人倍率の上昇要因は、過去の不動産バブル期とは異なり、景気回復ではなく、生産年齢人口減少によって労働力の供給が減少した結果に過ぎません。
 そもそも、前回も紹介したように内需GDPが3四半期連続で前年割れとなっている状況で、 「アベノミクスで景気が回復し、雇用環境が改善している」と言えるはずもないのです、(中略)


 同様な実態は、一貫して労働者の主力である25~54歳男性の就業状況でも確認できます
 経済の長期停滞に伴う増加が問題視されている非正規社員を含めてもなお、この年代の男性就業者数は、2000年代以降未だに減少トレンドを続けています

http://bit.ly/2j0Mon8

 就職をあきらめて失業者にもカウントされない「非労働力人口」も加味すると、完全雇用状態と比較して、この年代の男性だけで約90万人分の需要不足が存在します。
 こうした環境で、仮に雇用指標の改善が景気回復によって労働力需要が増大した結果なら、アベノミクス開始から約4年、就業者数の減少トレンドが反転しないのは明らかに不自然。
 すなわち、雇用指標の改善自体は事実としても、それはアベノミクスの成果などではなく、やはり生産年齢人口減少により、労働力供給が不足している結果と言わざるを得ません
 ところがリフレ派のように、アベノミクスがそれなりの成果を上げていると誤解すると、現状に対する危機感がさほど湧いてこないことになります。(後略)』


 わたくしが本問題についてしつこく取り上げるのは、まさに島倉氏が書かれた、
「リフレ派のように、アベノミクスがそれなりの成果を上げていると誤解すると、現状に対する危機感がさほど湧いてこないことになります」
 と同じ問題意識に基づいています。


 財務省が、次なる緊縮財政推進のレトリックとして、
「デフレ対策は金融緩和のみで十分だよ。何しろ、雇用が改善しているじゃないか
 を使ってくる可能性はあるというか、極めて濃厚なわけです。


 というわけで、「アベノミクス金融政策は効果が高いよ。何しろ、雇用が改善している」などと「いわゆるリフレ派」が吹聴すると、またまた財務省の緊縮財政に利用されるという話になってしまいます。


 安倍政権は雇用改善が人口構造の変化によるもので、「自分の手柄ではない」という現実を認識し、その上で早急なデフレ脱却策を講じなければならないのです。


最後の一文にご賛同下さる方は、

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