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『改めてデフレを知ろう①』三橋貴明 AJER2016.11.29
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本日は熊本大学で講演なので、昨夜から熊本に入っています。もちろん、未だ完全復興とはいかず、槌音が響き渡っている状況です。
オーストリア大統領選挙では、自由党 対 残りの全ての政党 という状況になり、緑の党のファン・デア・ベレン元党首が勝利しました(ファン・デア・ベレン53%、ホーファー46%)。それにしても、「保守」政党を標榜しているオーストリア国民党までもが、リベラル左派の緑の党の応援に回る時代が来るなど、二年前には想像もしていませんでした。
ちなみに、オーストリアの政党支持率では自由党がトップに立っており、まだまだ政治的な混迷は続きそうです。
同日、イタリアで憲法改正の是非を問う国民投票が開催され、開票が始まっています。
『事実上の首相信任投票 イタリア国民投票開票始まる
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161205/k10010795151000.html
イタリアで行われた憲法改正の是非を問う国民投票は、日本時間午前7時に投票が締め切られ、開票作業が始まりました。今回の国民投票は事実上、レンツィ首相の信任投票と受け止められていることから、結果によっては政治が不安定化し市場に影響が広がることも、懸念されています。
イタリアの国民投票は、議会上院の権限を縮小し、原則として下院の承認だけで政府を信任し、法案を可決できるようにする、憲法改正の是非を問うもので、投票は日本時間の4日午後から行われ、5日午前7時に締め切られました。
憲法改正をめぐって、レンツィ首相は、議会を改革することで安定した政治を目指すと訴えていますが、政府や既存の政党に対抗する新興政党「五つ星運動」は、政府の権限強化を狙ったものだとして強く反対しています。
レンツィ首相は経済を立て直すためとして、労働市場改革や銀行の不良債権処理を進めていますが、国民に痛みを強いる政策は世論の反発を招き、おととしの就任当初と比べると支持率は低下しています。(後略)』
イタリアのレンツィ首相は、就任後、労働規制の緩和を中心とした構造改革をガシガシと推進しています。
「解雇を容易にすることで、新規雇用を促す」
という、例の政策です。
現在、イタリアの若年層失業率は40%前後に達しており、スペイン、ギリシャに次いで悪い水準に至っています。若者の雇用を増やすために、雇用の流動性を高める、という理屈です。
さらに、レンツィ政権は銀行の不良債権問題を処理するために、銀行再編を進めています。実際、10月17日にはイタリアの銀行バンコ・ポポラーレとポポラーレ・ディ・ミラノ銀行(BPM)が合併しました。イタリア国内では、十年ぶりの大規模合併です。
何というか、レンツィ政権の構造改革は、小泉構造改革に実に似ています(まあ、基盤の思想が同じでございますので)。国民に痛みを求める、上院を「抵抗勢力」と設定しているところなど、スキームが同じなのです。
もっとも、ムッソリーニのファシスト党に支配された経験を持つイタリアは、政府が「性急な改革」ができないよう、権力の分散が図られています。現状のイタリアの政治構造では、「性急な改革」は実現しません。
というわけで、レンツィ首相は、上院議員の数を315人から100人に削減し、予算の承認権限を廃止。不信任決議も出せなくなりる上院権限の大幅な縮小を提案。さらに、国内の各州の環境や交通、エネルギーなどに関する権限も縮小する憲法改正に踏み切ったのです。
権限を中央政府に集中させることで、構造改革を実現する。そのために、国民投票に打って出る。何となく、小泉政権期の「郵政解散」を思い出します。あるいは、日本でも「首相公選制」や「参院廃止」など、権力の集中化を求める人たちがいますね。
などと、今回のイタリア国民投票の解説を書いていましたら、憲法改正反対派の勝利が確定し、レンツィ首相がマッタレッラ大統領に辞表を提出したとのニュースが入ってきました。ファシスト党の歴史を持ち、権力の集中を毛嫌いするイタリアで、上院権限大幅縮小といったラディカルな「改革」を進めるのは、やはり無理があったようです。
レンツィ首相が敗れても、即座に解散総選挙、とはならないでしょう。恐らく、マッタレッラ大統領はレンツィ首相に選挙管理内閣を発足させるように求めると思います。
とはいえ、これでレンツィ首相が推進していた「構造改革路線」は、一旦はストップとなります。
現在の世界の問題は、モノ、ヒト、カネの国境を越えた移動を自由化し、国内の規制緩和を推進する「グローバリズム・構造改革」路線と、それに抗う「グローバル化疲れ(※エマニュエル・トッド)」に陥った国民との間の政治闘争という視点で見ると、きれいに物事が理解できます。
オーストリア大統領選挙も、イタリア国民投票も、根っこの問題は同じなのです。もちろん、ブレグジットやアメリカ大統領選挙も。
現在の世界は、「グローバリズム対グローバル化疲れ」により動かされているのです。
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