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『世界の歴史はイギリスから動く①』三橋貴明 AJER2016.10.25

https://youtu.be/2Ywfmm4KoJs

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 「金利が低位に抑制されている中で、政府が積極的な財政政策を行えば、両者が相乗的な効果をもたらすことになる。これは通常ポリシーミックスとよばれ、有効なマクロ経済政策」


 上記が誰の発言かといえば、実は黒田東彦日本銀行総裁でございます。昨日の国会で、宮本議員の質問に答える形の発言になります。


緩和環境下での財政出動、有効なマクロ経済政策=黒田日銀総裁
http://jp.reuters.com/article/kuroda-lowerhouse-idJPKBN12X0PW
 黒田東彦日銀総裁は2日午後の衆院財務金融委員会で、緩和的な環境の中で政府が積極的な財政政策を行えば、相乗効果が発揮されて有効なマクロ経済政策になる、との認識を示した。宮本岳志委員(共産)の質問に答えた。
 総裁は、多額の国債買入と財政との関係を問われ「中央銀行が政府の財政運営を助ける目的で国債引き受けなどを行うと、財政節度を失わせ、インフレ率の上昇にも歯止めがかからなくなるリスクがある」としたうえで、日銀の国債買い入れについて「2%の物価安定目標の実現という金融政策上の目的のために実施している」と説明した。
 そのうえで、財政ファイナンスを行わないということは「世界の中央銀行で一致した考え」とし、日銀による国債買い入れは「財政ファイナンスにはあたらない」と強調した。
 日銀はすでに国債発行額の3分の1超を保有しているが、国債の買い入れ額や保有割合が「財政ファイナンスの判断基準になるとは思わない」とも語った。
 金利が低位に抑制されている中で、政府が積極的な財政政策を行えば「両者が相乗的な効果をもたらすことになる。これは通常ポリシーミックスとよばれ、有効なマクロ経済政策」と指摘。一方、「財政の持続可能性を確保することが、国債の信認維持に重要」とし、政府に財政健全化に向けた取り組みも促した。(後略)』


 すでに、量的緩和による国債買取で、130兆円超もの政府の実質的負債を減らしておきながら
「中央銀行が政府の財政運営を助ける目的で国債引き受けなどを行うと、財政節度を失わせ、インフレ率の上昇にも歯止めがかからなくなるリスクがある」
 も何もあったものではないですが、日本銀行の総裁として、上記の言い回しをしなければならないという話は分かります。


 とはいえ、日本銀行の国債買取が、「財政ファイナンス」とやらの元々の語源である「国債のマネタイゼーション(貨幣化)」であることに変わりはありません。日本銀行は、今も猛烈な勢いで「国債の貨幣化」を進めていっています。


 そもそも「財政ファイナンス」などというプロパガンダ用語に該当する外国語はないため、議論が深まらないのです。「国債の貨幣化」という正しい言葉を用いる必要があります。


 それにしても、今回の「いわゆるリフレ派」の社会実験は、デフレ対策としては不十分で、結果を残せませんでしたが、
金利やインフレ率が極端に低迷するデフレ期に、中央銀行が多額の国債買取をしても、インフレ率急騰といった事態は招かない
 ことを証明した点で、画期的だったと思います。


 すなわち、政府の負債が自国通貨建てである以上、政府は子会社の中央銀行に国債を買い取らせ、「国債の貨幣化」を進めたとしても、「何の問題もない時期がある」ことを証明してしまったのです。実際には、何の問題もないどころか、インフレ率が上昇せず、デフレからなかなか脱却できないという「問題」が発生しているわけですが、財政ファイナンスならぬ国債の貨幣化を批判する人たちは、
「日銀が国債を買い取ると、ハイパーインフレーションになる~っ!!!」
 と、インフレ率の急騰をリスクとして叫んでいたわけです


 実際には、250兆円もマネタリーベースを増やしたにも関わらず、インフレ率は▲0.5%。コアコアCPIまで、0%に低迷しています。中央銀行が大量のお金を発行したにも関わらず、インフレ率が上がらないという問題を抱えているのが、現在の日本です。(理由は書くまでもないですが、緊縮財政のせいです)


 ところで、「財政ファイナンス」にせよ「ハイパーインフレーション」にせよ、国民に「インフレという恐怖」を与えることで、財政拡大や中央銀行の国債買取(貨幣化)を妨害しようという恐怖プロパガンダです。とはいえ、インフレって、一般国民にとって、それほど問題なのでしょうか?


 もちろん、過度なインフレは問題ですが、例えば需要牽引型のインフレが3%(GDPデフレータベース)で推移した場合、日本国は確実に完全雇用になります。人ではなく、仕事が余る状況になります。


 企業は人手不足を補うため、設備投資や技術投資に乗り出します。というか、乗り出さざるを得ません。


 すると、生産性向上で実質賃金が増え、国民が豊かになり、さらに名目GDPが堅調に拡大するため、税収が増え、政府は公共インフラの整備や社会保障に支出しやすくなります。やはり国民が潤います。


 ところが、新古典派経済学は、徹底的にインフレを恐れます。と言いますか、嫌います。だからこそ、財政均衡主義や「はいぱ~いんふれ~しょん」といった、おかしなドグマやプロパガンダが流行することになったのです。


 ついでに書いておくと「中央銀行の独立性強化」も、新古典派から出てきたインフレ防止策です。あるいは、ドイツのように「財政均衡主義を憲法化する」もそうですね。


 ミルトン・フリードマンが典型ですが、新古典派と「富裕層」は深い関係にありました。資産を「預金」で保有している富裕層にとって、例えば3%のインフレは「資産が実質的に毎年3%ずつ、目減りしていく」ことを意味します。


 恐らく、この辺りに世界に蔓延した「インフレ恐怖症」の解があるのではないかと考えているのですが、そのうちに書籍化してみたいと思っています。


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