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『安倍政権は財政拡大に舵を切るか?(その1)①』三橋貴明 AJER2016.7.19

https://youtu.be/g3_rTVkKcnY
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 本日のTOKYO MX「モーニングCROSS」でも取り上げましたが、現在の日本に必要な経済対策は、「総需要不足」というデフレ現象を解決するための政府による「需要創出」です。「事業規模」ではなく、
いくらの需要(=支出)が創出されるのか?
 が重要なのです。需要とは、具体的には政府最終消費支出、もしくは公的固定資本形成になります。

 そもそも、デフレとはバブル崩壊+緊縮財政により発生します。バブルが崩壊し、国民が借金返済や預金拡大に動き、消費や投資という「需要」が減ります。このタイミングで政府が「増税」「政府支出削減」という緊縮財政を採ると、国民経済はデフレに突っ込むことになります。


 ちなみに、日本の家計の「預金志向」は半端なく、国民一人当たりの預金額を見ると、文句なしで我が国が世界ナンバーワン(!)です。威張れた話ではないのですが。


 日銀資金循環統計によると、日米欧の家計の直近の預金額は以下の通り。


日本:約894兆円
アメリカ:約1030兆円(1ドル=105円)
欧州:約874兆円(1ユーロ=116円)
日本銀行資金循環統計 資金循環の日米欧比較 )より


 アメリカの人口が3億人、欧州がおよそ4億人です。日本の家計がいかに莫大な預金を「貯め込んでしまった」かが分かるでしょ?

 橋本政権がバブル崩壊後に緊縮財政を実施した結果、我が国は「デフレギャップ(総需要の不足)」が常態化してしまいました。


【インフレギャップとデフレギャップ】


 平均概念の潜在GDPで計算するため「小さめ」に出てしまう内閣府の試算でも、我が国は約6兆円のデフレギャップを抱えています。すなわち、政府の経済対策は「いかにデフレギャップを埋めるのか」に主眼が置かれるべきなのです。


【【藤井聡】秋の景気対策の「成否」は、「真水の水準」にかかっている】
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/07/19/fujii-205/


 藤井聡先生がメルマガで書いて下さいましたが、


『そもそも7月11日の記者会見で安倍総理が言及した「地方を主役」とする港湾事業、地方創生回廊、国土強靭化等の「21世紀型」の「未来への投資」はいずれも、財投によって民間投資を誘発していくだけでなく、「真水」による政府投資によってはじめて短期集中的かつ本格的に進められるものです。』


 なのでございます。

 民間投資を誘発する財政投融資も重要ですが、喫緊に必要なのは「需要創出」そのものとなる政府の真水支出(政府最終消費支出もしくは公的固定資本形成)なのです。財政投融資は、JR東海のリニア新幹線前倒し開業のために使われるわけですが、これは長期の話であり、短期の需要創出とはなりません。


 昨日も書きましたが、財政出動は長期も短期も大事です。とはいえ、
長期の支出を強調することで全体を膨らませ、短期の支出を十分にしない
 のでは、日本はデフレ脱出のための十分な「速度」を得られないのです。財政投融資という短期の支出(需要)にならない「貸し出し」で全体を膨らませても、短期のデフレギャップは埋まりません。


高まる経済対策期待、20兆円超報道で:識者はこうみる
http://jp.reuters.com/article/japan-package-instantviews-idJPKCN10106W?pageNumber=1
 東京市場では21日、政府・日銀に対する政策期待から株高・円安が強まりやすい地合いとなっている。共同通信は同日、政府が経済対策の事業費を20兆円超とする方向で調整していると報じた。
 報道によると、8月初めに閣議決定する方向で、一部はその後に編成する2016年度第2次補正予算案で対応する。素案では国と地方自治体の追加歳出を3兆円に抑え、融資や民間企業支出の積み増しを図るという。
 当初、経済対策の事業費は10兆円規模とみられており、景気の下支えにかなり本腰が入っていると受け止められている。市場関係者のコメントは以下の通り。
<大和証券・日本株上席ストラテジスト 高橋卓也氏>
 経済対策の事業規模を20兆円超とする方向で政府が調整していると伝わった。建設やガラス・土石セクターの動きをみる限り、やや反応が鈍い気もするが、日本株にとってポジティブなのは確かだ。
  為替も1ドル107円台を付けている。企業業績の下振れリスクが多少残っているとはいえ、円安の方向に戻していくならば懸念も後退する。報道ベースでは財政出動は3兆円超にとどまっており、「とりあえず数字を作ってきた」といった印象もあるが、市場心理の面ではプラスに働いている。(中略)
<野村証券 経済調査部 シニアエコノミスト 桑原真樹氏>
 政府・日銀に対する政策期待で株高・円安となりやすい地合いとなっているが、秋口にかけて材料出尽くし感が広がり、逆回転する可能性があるので注意が必要だ。
 朝方は、政府が経済対策の事業費を20兆円超とする方向で調整しているとの報道が伝わったが、全体的に「張りぼて」な感じがする。(後略)』


 財務省としては、経済対策を実施するのは仕方がないとして、可能な限り「真水(短期の政府支出)」を抑えようとするでしょう。政治家の圧力をかわすために、全体の額を膨らませて報道させ、実際の「真水」は絞り込もうとするわけです。


 現在の「事業規模20兆円!!!!」報道には、上記の財務省の思惑が見え隠れしているように思えます。


 長期の民間プロジェクトも大事ですが、それ以上に目の前にある需要不足を埋めるための「短期の財政支出」すなわち「真水」の額を増やすことを、日本国民として強く求めたいと思います。


「政府の経済対策は『真水』を中心に!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!
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