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『第4次産業革命①』三橋貴明 AJER2016.5.31(3)
https://youtu.be/Jf684kxRGek

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 昨日のメルマガ「『三橋貴明の「新」日本経済新聞』[三橋実況中継]インフレ率と長期金利」において、メディア出演が一つ抜けていました。

 7月7日(木)7時からTOKYO MX「モーニングCROSS」に出演します。
http://s.mxtv.jp/morning_cross/
 大変、失礼いたしました。


 さて、7月1日、アメリカの長期金利が一時1.37%台になり、過去最低値を更新してしまいました。
 もちろん、アメリカの長期金利は、日本(やスイスやドイツ)と比較すれば、まだまだ高いですが、何しろ「プラス」です。


 同日、日本の長期金利も過去最低を更新しました。


『長期金利ー0.26% 過去最低さらに更新
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160701/k10010579611000.html
 1日の国債の市場では、日銀が今後、追加の金融緩和に踏み切る可能性もあるとの観測などから日本国債が買われ、長期金利の代表的な指標である満期までの期間が10年の国債の利回りは、マイナス0.26%に低下し過去最低を更新しました。
 1日の国債の市場では、日本の国債を買う動きが広がりました。国債は、価格が上昇すると利回りが低下するという関係にあり、長期金利の代表的な指標である満期までの期間が10年の国債の利回りは、一時、マイナス0.26%に低下し、過去最低を更新しました。(後略)』


 NHKの記事では、
「長期金利の代表的な指標である満期までの期間が10年の国債の利回り」
 と表現されていますが、これは間違いです。すでにして、十年債は長期金利の指標ではなくなってしまっています


 何しろ、十年債の金利がマイナス0.26%で、これが長期金利の指標というならば、我々民間が銀行からマイナス金利でお金を借りれることになってしまいます。もちろん、銀行が我々にマイナス金利でお金を貸し出すなどということはあり得ません。(もし、銀行がわたくしにマイナス金利でお金を貸してくれるならば、1兆円くらい借りたいと思います)


 銀行は本来、マイナス金利でお金を貸し出せるはずがないにも関わらず、なぜ長期金利(便宜的に「長期金利」と呼びます)がマイナスになっているかといえば、日本銀行の量的緩和政策が原因です。日本銀行が量的緩和政策を継続し、銀行が購入した金額よりも「高い価格」で国債を買い取るため、預金の運用先に悩む銀行はマイナス金利で国債を購入しているわけです。


 すなわち、国債の投機商品化です。銀行は利回りではなく「キャピタルゲイン(値上がり益)」を求めて、国債をマイナス金利で購入しているわけです。

 WSJによると、日本、スイス、ドイツなどで発行されているマイナス利回りの国債の総発行額は、10兆ドルを突破したとのことです。異常事態です。


 世界的に金利が下がっているのは、もちろんイギリスのEU離脱国民投票における離脱派勝利の影響が大きいのですが、それ以前の問題として世界的な「需要不足」あるいは「資金需要不足」の方が深刻です。日本にとっては、今更な話ですが、現在はユーロ圏がデフレに「片足半」突っ込んでおり、スイスは普通にデフレ。ここにアメリカが加わるとなると、世界経済はかなり「危険」な状況になると思います(アメリカは「まだ」大丈夫だと思いますが)。


 昨日も取り上げましたが、日本国民は9カ月連続で実質消費を減らしています。加えて、4月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標と言われる「船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)」が、前月比11.0%減の7963億円と、大きく下げました。機械受注は製造・非製造ともに減少し、2014年5月以来およそ2年ぶりの大幅減になってしまったのです。(5月分はまだ発表されていません)


 さらに、一昨日取り上げた通り、インフレ率はコアCPIで▲0.4%、コアコアCPIで0.4%

 インフレ率が下がったことを受け、なぜかマスコミには、
「だから、金融緩和の拡大を!」
 といった論調しか出てこないのですが、上記の各数値が示す「答え」は、一つだけでしょう? 必要なのは「国債発行+財政出動」による政府の需要創出です。


 民間の資金需要が乏しい以上、名目金利や実質金利をどれだけ下げたところで、消費や投資は増えません。理由は、実質賃金が伸び悩む状況で国民が消費を増やすなどあり得ず、さらに我々経営者は「儲からない環境」においては、金利がゼロに限りなく近づこうとも(すでに近づいていますが)、銀行融資や設備投資を増やしたりはしないためです。


 理由は、まさに儲からないためです。


 というわけで、政府は「投資すれば儲かる環境」を作る必要があるのですが、必要なのは既存の需要のパイの奪い合いを激化させる規制緩和ではありません。需要が拡大していない状況で、規制緩和で新規参入を増やしたところで、
誰かが所得(=需要)を獲得したとき、反対側で誰かが所得を奪われる
 という話になってしまい、全体の需要=所得が増えるわけではありません(むしろ、減る可能性が高い)。必要なのは、国家全体で「追加的」に需要を創出することなのです。


 参議院選挙の最中ではございますが、この種の真っ当な経済議論がほとんど見られないのは、大変残念な話です。

 一応、自民党には、

「● リニア中央新幹線の大阪開業前倒し・整備新幹線の建設推進のほか、超低金利奨学金、開かずの踏切対策などの分野を中心に「超低金利活用型財政投融資」を早急に具体化します。その際、今後5年間で官民あわせて30兆円を目途に、十分な政策効果が早期に実現するような事業規模を確保します。」

 という公約があるのですが、同時に、


「● 財政健全化目標として国・地方の基礎的財政収支について、2015年度は2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減するとの目標達成が見込まれる中、2020年度までに黒字化するとの目標を堅持し、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指します。」

 と、例によりプライマリーバランス目標があるため、国債発行について言及できないという情けない有様です。だから「超低金利活用型財政投融資」と言い出したわけです。(しかも、赤字国債については明確に否定しています)


 もっとも、政治家や政党のレベルは、国民の鏡写しです。日本国民がそもそも、上記の類の情報を理解せず、相も変わらず、
「国の借金で破綻する~」
 などと、長期金利マイナス0.26%の国で叫び続け、政治を機能不全に陥らせているわけです。


 というわけで、一日本国民として「正しい情報」を拡散し、日本国が「長期金利マイナスの国として」まともな政策を打てる日を早めるべく、今日も努力を続けたいと思います。


「国債発行と財政出動による政府の需要創出を!」に、ご賛同下さる方は 

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