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『2016年第一四半期を振り返る(後篇)①』三橋貴明 AJER2016.4.26(9)

https://youtu.be/zOAOYTdAZyY
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 講演のお仕事で、土佐は安芸市にいます。明日は名古屋で明後日は福岡。そして、明後日は熊本です。
 
 さて、消費税の再増税を巡り、与野党が激しくぶつかるという興味深い状況になってきています。


『菅氏「首相が消費税適切に判断」 岡田氏は自民の再増税提言批判
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016052201001297.html
 菅義偉官房長官は22日、来年4月に予定する消費税再増税の可否を判断する時期について、伊勢志摩サミットの議論を踏まえ、安倍晋三首相が適切に判断する考え方に変わりないとの認識を示した。一方、民進党の岡田克也代表は、再増税した上で、景気対策のため財政出動を求めた自民党の提言を批判した。
 菅氏は三重県志摩市で記者団に、首脳宣言などサミットでの合意事項に関し「日本は議長国として率先して実現に努める」と強調。岡田氏は徳島県美馬市で記者団に、自民党提言について「10%に上げても、それをはるかに上回る財政出動をするなら本末転倒だ。古い自民党に戻っただけだ」と述べた。』


 もう面倒なので、岡田氏の発言には突っ込みません。


 改めて、5月19日のアベノミクスを失敗させた会ならぬ「成功させる会」の消費税に関する記述を取り上げてみましょう。提言は、


『現下の日本経済の最大の問題は、消費の低迷にある。消費は2014年4月の消費税率引上げ(5%→8%)で落ち込んで以来、一向に回復の兆しを見せず、2015年10‐12月期にはトレンドから底割れするという事態にまで陥った。』


 という文章で始まります。
 そして、来年4月に予定している消費税再増税について、


『その一方で、来年(2017年)4月には、消費税率の再引き上げ(8%→10%)が予定されている。現下の経済状況を考えれば、これを再延期すべきだという主張が出てくるのは当然であり、有力な選択肢であることは間違いない。
 ただ、単純に延期を表明するだけで経済が好転する訳ではないことは、一昨年の延期決定から今日までの状況を見れば明らかである。恐らくその要因は、当初の引上げ(5%→8%)時の財政出動が十分でなかったこと、年金生活者や低所得者の実質所得が低下したこと、そして「いずれ消費税率は上がるのだから」という予想から消費が抑制された面があること等にあったと考えられる。また、単純延期する場合、前回延期の際に安倍総理が表明した「リーマン・ショックや大震災といった事態が生じない限り、必ず実施する。」との公約との関係が問題となる
更に、「アベノミクスは失敗した。」との野党の批判に上手く反論できるのかどうかも問われることになる。』


 と、分析しています。
 上記を受け、消費税については、


『消費税率引上げ(8%→10%)は、予定通り2017年4月から実施し、当面10%で打ち止めと宣言。』


 という提言をしているわけです。
 整理すると、消費税増税の理由として、


(1) 財政出動すれば、消費増税の影響を緩和できるはず
(2) 延期では、将来的な増税予想から消費が抑制されてしまう
(3) 単純延期したら、公約違反
(4) アベノミクスが失敗したと野党から批判される

 と、主に四つを挙げているのです。

 まず、(1)は昨日も書いた通り、間違いです。未来永劫、延々と続く消費増税の悪影響を、短期(三年)の財政出動でカバーできると思う方がおかしいのです。
 さらに、消費税は逆累進性があり、国内の所得格差を拡大する悪しき税金です。


 その上で、上記の(2)から(3)を、巧くクリアする手法はあります。すなわち、


現在がリーマンショック級の事態であると認め(熊本地震も発生しましたし)、消費税増税を『凍結』し、アベノミクスは14年4月の消費税増税が理由で失敗した(あるいは「成功を収めていない」でもいいです)」
 と、総理が説明してしまえばいいのです。


 「リーマンショック級の事態」は、そもそも抽象的な表現なので、何とでも説明できます。さらに、延期ではなく「凍結」であれば、将来的な増税予想の問題が解消されます。

 そして、アベノミクスの失敗を「三党合意に基づく消費税増税」のせいにしてしまえば(事実ですし)、民進党も批判しにくいでしょう。


 その上で、デフレギャップを埋める10兆円規模の財政出動を三年間継続すれば、日本経済はようやくデフレから脱却できます。


 ところが、「アベノミクスを失敗させた会」は、消費税増税の「凍結」には踏み込めず、「増税後の凍結」という問題解決に至らない提言をしてきたわけです。なぜなのでしょうか。

 結局のところ、消費税率は何のために上げるのでしょうか?


 上げる必要はない。というよりも、デフレ期に消費税を増税してはならない
 というのが、正しい解なのです。


 大本の議論から目を背け、財務省主導の消費税増税を「目的」と化し、過去五年間の政治は動いてきました。別に、消費税を上げても構いませんが、それは「経世済民」、すなわち国民が豊かになるという政府の目標を達成できる場合のみです。

 ところが、現在の消費税議論は、「消費税を上げる」という「手段」が目的化してしまい、日本のデフレは継続し、国民は貧困化し、ついに増税を巡る狂った議論が行き着くところまで行き着いた、という段階に至りました。


 総理がいかなる判断を下すのかは分かりませんが、日本国民は「狂った議論」の背景にあるものを、正しく認識する必要があります。さもなければ、我が国は永遠に「手段が目的化している」状況から抜けられません。



「消費税増税は最低でも『凍結』せよ!」にご賛同下さる方は、 このリンクをクリックを!
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