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『高度成長期を知ろう①』三橋貴明 AJER2016.3.15

https://youtu.be/DoOeeMOAMNQ
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2016年4月10日(日)12時から
日台親善シンポジウム「台湾の対中経済政策を考える」

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 スティグリッツ教授は、
財政出動が唯一の正解。具体的にはインフラ・技術への公共投資
 と、提言していましたが、「技術」への投資についてより具体的に考えてみたいと思います。


 技術開発投資とは、投資のマトリクスにおいて最も左上部に位置する資本形成(投資)になります。すなわち、リスクが高く、生産性向上効果が出るまで長期間、必要になるのです。


【投資のマトリクス】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_51.html#Matri


 長期どころか、技術開発投資は「永遠に芽が出ない」可能性もあります。実がならなかった技術を列挙していけば、それだけで一冊の解説書ができると思います。


 だから、無駄。という話ではありません。だからこそ、政府が主体となってやらなければならないのです

 三橋経済塾第五回第二回講義で、ゲスト講師の中野剛志先生が「人工知能の父」であるマービン・ミンスキーMIT教授の言葉を取り上げていました。
「・・・以前は、たとえばベル研究所など、大企業付属の大きな研究所があったんですね。一九五二年、まだ学生だった頃、ベル研究所でひと夏過ごす機会があったのですが、「三十年もかからないような仕事には手を出すな」とくり返し言われた。
 いまではそれが「二年」ということになっているわけです。ですから、過去五十年の間に、難しい問題に打ち込めるような仕事や場所が極端に少なくなってしまった。」


 グローバル株主資本主義の蔓延と共に、企業は短期の利益ばかりが求められるようになりました。結果、長期の研究開発が疎かになってきます。


 今や、日本企業までもが「長期の研究開発」ではなく、株価を引き上げる自社株買いを増やしています。2016年2月までの2か月間で、東証1部に上場する128社は、何と総額2兆1000億円の自社株買いを発表しました。対前年同期比248%増加です。


 この自社株買いに使われる2兆円が、投資や雇用に向かってくれれば・・・。


 ともあれ、グローバル株主資本主義が浸透してしまった以上、この「構造」を速やかに「改革」することは困難です。(やるべきだとは思いますが)

 そうであるならば、政府が率先して「技術」に投資をし、需要不足を埋めることは、極めて合理的です。しかも、日本には「経済効果」つまりはGDP創出効果が極めて大きい技術プロジェクトがあるのです。


 すなわち、国際リニアコライダー(以下、ILC)です。

 今月初旬、「超・技術革命で世界最強となる日本 」で取り上げた、つくばの高エネルギー加速器研究機構のSuperKEKBが大改造工事を終え、試運転を開始しました


SuperKEKB加速器のビーム周回・蓄積成功
http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/20160302163000/
 5年間の大改造工事を終えた電子・陽電子衝突型加速器SuperKEKBは、このたびその試験運転を開始し、その重要な第一ステップである、直径1 kmの電子リングおよび陽電子リングでのビーム周回・蓄積に成功しました。(後略)』


宇宙はなぜ生まれたのか? 宇宙にはなぜ反物質より物質が多いのか?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/20160303_746523.html
 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、2016年3月2日、粒子/反粒子の対称性の破れのさらなる探究、新たな粒子発見や物理の探求を目的とした「Super
KEKB/Belle II 実験」を始めるため、5年間の性能向上を進めてきた「SuperKEKB加速器」において試験運転を開始し、直径1kmの電子リングおよび陽電子リングでのビームの周回/蓄積に成功したと発表し、記者会見を行なった。(後略)』


 SupeerKEKBは円形加速器ですが、ILCは史上初の「直線(リニア)」の大型加速器になります。


 全長約30kmの直線状の加速器を建設し、現在の科学技術において達成可能な最大のエネルギーで電子と陽電子を衝突させ、宇宙創成の謎、時間と空間の謎、質量の謎を解き明かそうという気宇壮大なプロジェクトがILCなのです。


 このILCの建設候補地が、岩手県北上山地となっているのです。「東北復興」という観点からも、ILCを北上に建設することは、極めて合理的です。


 ICLの技術設計報告書によれば、ILC加速器建設費は約8309億円と見込まれています。さらに、測定器建設を合わせると。総額9075億円です。


 もちろん、ILCは「国際」プロジェクトであるため、全額を日本が負担する必要はありません。日本負担額の想定は4315億円とされています。


 野村総研の最新試算によると、ILCの経済効果は最終需要が1兆2940億円、生産誘発額が2兆8136億円となっています。誘発雇用者数(総数)は、約16万人です。


 さらに、ILC関連の契約をしたサプライヤー産業のビジネスが、最終需要で8145億円、生産誘発額が1兆6470億円と、およそ2.4兆に達する見込みです。

 生産誘発額は付加価値(粗付加価値)ではないため、二重計上分を削ると、ILC建設により最終需要が2兆1085億円、生産誘発額(粗付加価値)が2兆2026億円と、およそ4兆3000億円のGDPを創出することになります。

 上記には、ILCに絡み誕生する技術やその市場は含まれていません。ちなみに、CERN(SERNではありません)の加速器建設が、WEBやグリッドコンピューティングといった新技術を生み出したのはご存じの通り


 さて、上記の通り、経済効果一つとっても現在の日本にとって極めて価値があるILCについて、「金食い虫」と全否定した官僚がいます


復興相、次官発言で陳謝 加速器計画は「金食い虫」
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016031801001708.html
 高木毅復興相は18日、岩手県などが誘致を目指している次世代大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、復興庁の岡本全勝事務次官が「金食い虫」と発言したとして、不適切だったと陳謝した。衆院東日本大震災復興特別委員会で、階猛氏(民主)の質問に答えた。
 復興庁によると、岡本氏は11日に仙台市で開かれたシンポジウムで、ILC誘致に支援を求める出席者の質問に「大変な金食い虫で、文部科学省も難儀している」と答えたという。
 高木氏は「被災地をはじめ、多くの方が望んでいる計画であり不適切な発言だ。本人にも厳重注意した」と説明した。』


 念のため、高木復興担当大臣が「金食い虫」と発言したわけではありません。復興庁の官僚のトップである岡本全勝事務次官がILCについて、
「大変な金食い虫で、文部科学省も難儀している」
 と発言したのです。


 岡本事務次官の心中について忖度する気はありません。とりあえず、この手の官僚や政治家たちが日本を亡国に追いやると確信しているため、本日、取り上げさせて頂きました。



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