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『日銀の袋小路①』三橋貴明 AJER2016.2.9

https://youtu.be/vuII-j8bE90
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 2月20日(土)の三橋経済塾第五期第二回講義のお申し込み受付が開始となりました。http://members5.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=1412

 第二回のゲスト講師は、評論家の中野剛志先生です。

 講義出席には、事前に三橋経済塾入塾が必要です。入塾の受付はこちら から。


 きな臭くなってきました


 ドル円の為替レートが、一時、1ドル=110円台をつけ、その後、いったん1ドル113円台に急落。現在は1ドル=112.5円前後で推移しています。


『【世界市場混乱】日本政府・日銀が為替介入の観測 円急騰を阻止か
http://www.sankei.com/world/news/160212/wor1602120007-n1.html
 欧米の外国為替市場で11日、日本政府・日銀が円の急騰を阻止するため市場介入に踏み切ったとの観測が広がった。介入ではなく投機筋の荒い取引の一環との見方もあるが、政府がどこまで円高を容認するかを試す形で神経質な値動きが続きそうだ。
 この日、円相場は一時1ドル=110円台に急伸した後、いったん2円程度値を下げた。値下がりのスピードが速かったため、日銀が大量の円を売ってドルを買い、円安誘導したとの見方が市場関係者に広がった。
 一方で「介入であれば、さらに円安方向に戻したはずだ」(外為ディーラー)などと疑問視する声も多い。米国ではドル高が企業収益を悪化させており、経営者や議会に不満がくすぶっている。介入で直接的に相場を円安ドル高方向に動かしたとなれば米側の心証を害しかねず、日本政府としては動きにくいという事情もある。』


 アメリカの心証を害する(随分と抽象的ですね・・・)云々ではなく、世界中が経済失速に悩んでいる時期に、日本のような大国が為替介入などしてはいけないと思うわけでございますが・・・。冗談でも何でもなく、世界の通貨安戦争の引き金になりかねません


 というわけで、個人的には日本政府(日本銀行)が為替介入をしたわけではなく、投機的な動きが原因で、あの瞬間的にな円の急落(とはいっても、2円程度でした)が起きたのではないかと推測(これは「推測」)します。


 いずれにせよ、現在は世界的に、
実体経済と金融経済の乖離の是正
 が起きている状況で、しかも15年夏まで新興経済諸国への投資という「実体経済」を引き起こしていた「中国経済が永遠に成長を続ける幻想」が崩壊してしまった以上、日本円を中心とした先進国通貨への巻き戻しは終わらないでしょう。


 しかも、ギリシャ危機が再燃(そもそも、鎮火できていたわけではないのですが)する状況で、ドイツ銀行をはじめとするユーロ圏の銀行に「不安」が広がってしまっています。現在のユーロ圏の銀行は、新興経済諸国の経済失速、マイナス金利政策(日本よりも早く導入していました)による収益悪化と、経営環境が悪化を続けています。


 結局のところ、ユーロ圏は実体経済(GDP)の悪化を金融政策「のみ」で是正しようとしたこと自体が、致命的な間違いだったのです。


 何しろ、ユーロ圏は日本同様に民間の資金需要が不足し、国債金利が低迷しています。その状況で、ECBがマイナス金利政策を採用したところで、貸し出し増加には結びつきません。


 とはいえ、マイナス金利政策は銀行の収益を直撃するため、ユーロ圏の銀行は新興経済諸国(特に中国)への投資にのめり込んでいました。ところが、大本の中国の経済が失速し、新興経済諸国にまで「過剰設備問題」が伝播する有様になってしまいました。ブラジル、ロシアなど、中国に資源を売っていた国は、軒並みマイナス成長です。(2015年のロシアは▲3.7%、ブラジルは15年7-9月期まで三期連続のマイナス成長でリセッション中)


 新興経済諸国の資金需要が縮小し、それどころか1兆ユーロを超す投資が不良債権化する見込みの中、資金はアメリカ、そして日本に巻き戻り、例により我が国で、
円高、株安、国債高(国債金利下落)
 を引き起こしてしまっているわけです。


 要するに、リーマンショック後と同じ状況になりつつあるわけですが、問題は今回の危機において、すでに「金融政策」については弾を打ち尽くしてしまっているという点です。


 政策金利はゼロ。量的緩和は継続中ですが、これ以上ペースを拡大すると、Xデイ、すなわち「銀行の国債が尽きる日」が見える日が早まってしまいます。Xデイが近い、という観測が広まるだけで、超円高と世界的な経済危機の引き金になりかねません。(そういう意味でも、今、量的緩和政策は絶対にやめてはいけません)


 そして、日銀の最後の手段として講じられたのが、マイナス金利政策だったわけです。


 やりたいことは、分かります。黒田日銀総裁の言葉通り、
「イールドカーブ全体で金利を引き下げ、実質金利を下げ、消費や投資を活性化し、デフレギャップを埋める」
 という政策目的があったわけですが、現実には金利がどれだけ下がったところで、長期のデフレが続いた我が国において、銀行融資や消費、投資はデフレギャップを埋めるほどには拡大しません。


 単に、国債金利がさらに低迷し、銀行が打撃を受けるだけの話です。結果、銀行が預金者に負担を回さざるを得ない状況になっているのは、昨日、解説した通り。


 となると、次の日銀の手は?


 ないのです、もはや、日銀に打てる手は


 というわけで、人間並みの知能を持っているならば、この時点で「政府の財政政策以外に、有効な政策手段はない」と気が付くはずです。


 日本は、マイナス金利政策で国内の銀行が外国投資にのめり込む、という最悪の段階には至っていません。と言いますか、今更、新興経済諸国に投資する人はいないでしょうし、いたら「愚者の極み」としか表現のしようがありません。


 もっとも、日本政府が財政出動という正しい方向に舵を切らなかった場合、日銀のマイナス金利政策はユーロ圏同様に「致命的な間違いだった」と、記憶されることになるでしょう。


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