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『日銀の袋小路①』三橋貴明 AJER2016.2.9

https://youtu.be/vuII-j8bE90
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 2月20日(土)の三橋経済塾第五期第二回講義のお申し込み受付が開始となりました。http://members5.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=1412

 第二回のゲスト講師は、評論家の中野剛志先生です。

 講義出席には、事前に三橋経済塾入塾が必要です。入塾の受付はこちら から。


中国崩壊後の世界 (小学館新書) 」が、またもや増刷になりました! 
 これで第四刷になります。ありがとうございます!


  チャンネル桜「桜プロジェクト」に出演しました。


【デフレ経済】金利と賃金の惨状、緊縮財政下の国民総貧困化の道[桜H28/2/10] https://youtu.be/ZuNxzeJkKOM
【TPP】高鳥修一、「日本を護る断固とした保守政治家」辞めました?[桜H28/2/10] https://youtu.be/9KuEh0v_l-0
【明るい経済教室】3つのマイナス金利、需要無き金融緩和の帰結[桜H28/2/10] https://youtu.be/jcDwLEEAPLA
【チャイナリスク】爆買規制と破滅的な鉄鋼過剰生産能力[桜H28/2/10]
https://youtu.be/Y8ruzG9oxzE


 円の為替レートが、1ドル113円台に突入しています。本稿執筆時点では1ドル=113.45円です。


 本日は株式相場はお休みですが、現在、銀行の株が世界的に下がる状況にあります。
 理由は、一部の中央銀行による「マイナス金利」政策です。


蘇るリーマンショックの記憶、金融不安を高めるマイナス金利
http://jp.reuters.com/article/cross-market-eye-idJPKCN0VI0R6
 世界的なリスクオフが第2段階に入ってきた。日欧のマイナス金利政策による金融機関の収益圧迫に警戒感が台頭。市場の懸念材料が、世界経済の減速から金融機関の信用不安という別次元のステージに移行してきた。まだ不安の段階ではあるものの、「リーマンショックの記憶」が蘇る中で株安・円高・金利低下が一段と深まっている。
<連鎖的な銀行株安>   
 グローバルなリスク回避が強まる中、最も売りを浴びたのは銀行など金融株だ。8日の市場で、欧州のSTOXX欧州600銀行株指数.SX7Pは5.59%低下。米国のS&P金融株指数.SPSYは2.6%の下落にとどまったが、9日の市場で日本の銀行株指数.IBNKS.Tも7.36%と大きく下落している。
 銀行株の急落は、年初からのリスクオフが別次元に入ってきたことを示す。「世界景気の減速はそれほど怖くない。循環的であり、いずれ回復するからだ。しかし、金融機関の信用収縮に結びつけば、リーマンショックのように経済全体が委縮する恐れ
が高まる」(米系投信・運用担当者)ためだ。グローバル化したマーケットにおいて金融機関の不安は連鎖する。
 市場が不安視するのは金融機関の収益悪化だ。日欧が導入したマイナス金利が要因で、世界中の金利が急低下。運用難が極まる一方、貸出も伸びない中で、利ザヤ縮小によって収益が圧迫されるのではないかとの懸念が強まっている。(後略)』


 黒田日銀総裁は、マイナス金利政策採用時に、
イールドカーブを全般にわたって引き下げ、一方で予想物価上昇率を引き上げることで、実質金利をイールドカーブ全般にわたって押し下げる。それによって、消費や投資を刺激し、経済が拡大し、その中で需給ギャップが縮小し、インフレ期待の上昇と相まって、物価上昇率を2%に向けて引き上げていく」
 と、解説しました。すなわち、残存期間に関わらず「債権の金利を引き下げ」、実質金利を下げることで消費や投資という「需要」を拡大し、インフレ率を引き上げるという政策なのでございます。


 とはいえ、イールドカーブ全体で金利が下がれば、当然ながら「債券の金利」に依存していた銀行の収益は下がります


「収益が下がるのが嫌ならば、民間にカネを貸し出し、消費や投資を刺激しろ」
 という話なのでしょうが、そもそも銀行からの貸し出しがインフレ率を引き上げるほどに拡大しないのは、民間企業や家計側に資金需要が乏しいためです。


 日本の企業経営者は、別に、
「金利が高いから、金を借りない」
 のではありません。単に、儲かる投資先がない、投資収益が見込めないからこそ、投資をせず、銀行融資も増えないのです。何しろ、デフレですから。


 政府が財政出動で需要を拡大し、企業の投資機会を増やす政策をしなければならないにも関わらず、財政面は緊縮。プライマーリーバランス黒字化目標を頑なに維持しようとするため、財政の拡大はできない。


 勝手に自縄自縛に陥った愚かな安倍政権は、デフレ対策を日銀に丸投げ。日銀は量的緩和の限界が見えた(銀行側の国債が尽きかねない)ため、当座預金にマイナス金利をかけ、国債金利が急落し、長期金利までもがマイナス。


 そういう意味で、黒田日銀総裁の、
「イールドカーブを全般にわたって引き下げ」
 は成功したわけですが、銀行は民間への貸し出しを増やすのではなく、収益悪化分のツケを預金者に回そうとしています。すでに、ゆうちょ銀行までもが預金金利の引き下げを発表。


 ちなみに、わたくしは別に銀行を責めたいわけではありません。銀行はデフレという民間の資金需要が不足する環境において、極めて「合理的」に振る舞っているに過ぎないのです。


 間違っているのは、財政の絞り込みを続ける安倍政権であって、銀行でも日本銀行でもありません。というか、この状況で平気で銀行を批判できる人は、
まずは、お前が金融ビジネスをやってみろ
 と、心の底から思います。自分は「デフレ下の銀行業」をやったことがないにも関わらず、平気他人に何かを求める。TPP関連で、農業をやったことがないにも関わらず、
「付加価値のある農産物を世界に売れ!」
 などと、勝手なことを言っていた連中と同じです。まずは、自ら率先して「デフレ下の金融業」や「付加価値のある農業」をやってみせたらどうですか


 自分ではできないくせに、他人に勝手なことを強要する人を、わたくしは「屑」と呼びます。


 いずれにせよ、債券金利の低下が銀行の収益を悪化させるのは明らかで、日本の銀行株が値を下げるのは当然でしょう。


 問題は、欧州でも類似した問題が発生してしまっている点です。特にまずいのが、フランクフルトに本店を置く、ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行です。


 ただでさえ、マイナス金利政策で「真っ当な債券」からの収益が上げにくい状況で、ドイツ銀行は中国を中心とする新興経済諸国への投資を拡大しました。新興経済諸国に投じられていたおカネが巻き戻っているといっても、きちんと現地で債券を売却し、外貨(ドル、円、ユーロ)に両替できるならばマシなのです。相当な額(ヨーロッパの銀行だけで、1兆ユーロを超すそうです)が、不良債権化してしまっています


 ドイツ銀行の2015年決算は、過去最大の68億ユーロ(約8800億円)の赤字になりました。結果、ドイツ銀の株価下落が続き、2月8日に9.5%急落、9日も4.3%の大幅安。年初からの下落率は、すでに40%を超えました。


 日本にせよ、欧州にせよ、政府が頑なに財政拡大に背を向け、「金融のみ」でデフレ化を食い止めようとした結果、金融システムにまで傷が及び始めているというのが現状なのです。マイナス金利政策が功を奏しなかったことを受け、
「さらなる金融緩和を! マイナス金利の幅を拡大を!」
 などという愚か極まりない主張を見かけましたが、これ以上の金融の緩和は「危険」です。


 結局、実体経済を置き去りに、金融経済のみで「経済」を立て直そうという実験が失敗したというのが、現在の日欧なのだと考えます。


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