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『人口と経済①』三橋貴明 AJER2016.1.26
https://youtu.be/BHv36JGIezU
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2月20日(土)の三橋経済塾第五期第二回講義のお申し込み受付が開始となりました。http://members5.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=1412
第二回のゲスト講師は、評論家の中野剛志先生です。
講義出席には、事前に三橋経済塾入塾が必要です。入塾の受付はこちら から。
一般参加可能な講演会のお知らせです。
2月6日(土) 14時開演(13時半開場)
【経世済民のため『亡国の新帝国主義(グローバリズム)』を解体する!セミナー 講師:三橋貴明】
http://hikarulandpark.jp/shopdetail/000000000684/
驚くべきニュースが続きます。日本銀行がついに、日銀当座預金に「マイナス金利」をかける決定をしました。
マイナス金利決定の報道に隠れてしまった感がありますが、15年12月の各指標が悲惨な状況になっていました。
総務省が発表した2015年12月の全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の消費支出は、実質で対前年比4.4%減。
同月の消費者物価指数は日銀のインフレ目標の指標であるコアCPIベースで対前年比0.1%上昇と、11月と変わらず。
さらに、鉱工業生産指数は前月比1.4%低下し、2カ月連続の減少。「前月比」で二カ月連続の減少ですから、これはかなり衝撃的です。
10-12月期は、マイナス成長の可能性が濃厚だと思います。
というわけで、日本銀行が銀行が持つ日銀当座預金残高に-0.1%の金利を科す、マイナス金利が決定されました。
『日銀、マイナス金利導入を決定 賛成5反対4 物価目標達成「17年度前半」に変更
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL28HMX_Y6A120C1000000/?dg=1
日銀は28~29日に開いた金融政策決定会合で、マイナス金利の導入を賛成5反対4の賛成多数で決めた。当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用する。反対は白井さゆり審議委員、佐藤健裕審議委員、木内登英審議委員、石田浩二審議委員の4人。
これまでの量的・質的金融緩和に加え、金利でも金融緩和を進める。
具体的には、日銀当座預金を3段階の階層構造に分割し、プラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。(後略)』
【図 日本の預金取扱機関の日銀当座預金残高の推移(単位:億円)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_51.html#Tozayokin
上図の通り、日本銀行の量的緩和政策で銀行(厳密には預金取扱機関)の日銀当座預金残高は膨れ上がっています。直近では、250兆円を超えてしまっています。
ここに、丸ごと「マイナス金利」をかけるわけではありません。日経の記事にもある通り、当座預金を三段階に分割し、三つの金利が適用されることになります。
具体的に書いておきますと、
(1) 基礎残高(+0.1%)
「量的・質的金融緩和」のもとで各金融機関が積み上げた既住の残高については従来の扱いを維持(これまで通り+0.1%の金利をつける)
(2) マクロ加算残高(ゼロ%適用)
所要準備額に相当する残高(準備預金制度に基づく当座預金残高、という意味だと思います)や、貸出支援基金・被災地金融機関支援オペにより資金供給を受けている場合、その残高に対応する金額
(3) 政策金利残高(▲0.1%)
各金融機関の当座預金残高の内、(1)と(2)を上回る部分
というわけで、量的緩和政策により膨れ上がった部分(1)や準備預金制度に基づく残高(2)に、マイナス金利がかけられるわけではありません。(3)の政策金利残高がどの程度の規模になるのでしょうか。少し、調べてみます。
ちなみに、金融機関が現金保有でマイナス金利を逃れようとし、現金保有額が基準期間から大きく増加すると、その分を(2)、(1)から控除されてしまいます。すなわち、金融機関が余計な現金を持っていると、▲0.1%の金利が適用される(事実上)というわけです。
さて、どうなるでしょうか。
日本銀行が量的緩和政策を継続すると同時に、日銀当座預金の一部に▲0.1%を適用するとなると、普通に考えて「国債が金融市場から尽き始める」ことが予想されます。つまり、国債金利が下がるのです。
実際、昨日の長期金利は、一時的に0.09%に低下し、史上最低を更新しました。
銀行側は国債を日銀に吸収され、日銀当座預金の一部にマイナス金利が課せられるわけで、これまで以上に「民間への貸し出し」を増やそうとはするでしょう。とはいえ、未だに日本には資金需要が十分にありません。
と言いますか、デフレが継続し、実体経済が(冒頭の数値の通り)悪化している国では、経営者は金利がどうであろうとも設備投資を増やしたりしません。理由は、儲からないためです。
となると、銀行は不動産関連への融資を増やしていかざるを得ないように思えます。東京や大阪など、大都市の中心部では、不動産価格は上昇するでしょうが、相変わらず実体経済への波及は限定的で、インフレ率は低迷を続けることになるでしょう。
ところで、ECBはマイナス金利を2014年6月に採用したのですが、相変わらずインフレ率は+0.1%と、0%近辺に張り付いています。資金需要が乏しいデフレ環境下では、マイナス金利であっても実体経済を拡大させる効果が薄いことは、すでにユーロ圏が証明してくれているのです。
まあ、今回の日銀の決定は市場にそれなりのインパクトを与えたようで、円安や株高が「短期間」進むかも知れません。とはいえ、実体経済へのおカネの投入、すなわち消費や投資を増やす形の政府の財政出動が不十分である以上、長期金利がひたすら低下していくという結果を招くと思います。
現在、長期金利は0.1%(!)でございますが、半年以内にマイナスに突入したとしても、不思議でも何でもありません。ちなみに、五年物国債はすでに手数料を含むとマイナス金利に突入しており、財務省は1月21日に五年債の個人向け窓口販売の募集を中止すると発表しました。
歪んでいます。
結局、問題はデフレによる「資金需要不足」(資金不足ではありません)であることを政府が認識し、民間の資金需要を促す「実体経済の需要創出=財政出動」に乗り出さない限り、この歪んだ状況に終止符が打たれる日は来ないでしょう。
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