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『単位労働コストと生産性①』三橋貴明 AJER2015.12.8
https://youtu.be/U41_slLjfW4
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12月20日 第二回チャンネルAJER講演会「2015年を総括する~徹底検証この一年~」に出演します。
https://www.facebook.com/events/1519342045059642/
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 東京新聞がTPPの米議会承認が「遅れそうである」という記事を出しています。


 アメリカの上院共和党のリーダーのマコネル院内総務は、12月11日にTPP批准に向けた審議は2016年11月の大統領選挙「以降になる」と発言したのです。


米議会承認「大統領選後」発言 TPP発効に暗雲
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201512/CK2015121302000117.html
 米上院共和党リーダーのマコネル院内総務が十一日、環太平洋連携協定(TPP)の批准に向けた米議会の承認の審議を二〇一六年十一月の大統領選挙前に開始しない方針を明らかにしたことで、TPP発効の先行きが急速に見通せなくなってきた。
 当初TPPは来年二月以降に審議が始まる可能性も指摘されていた。しかし、マコネル氏は米紙ワシントン・ポストのインタビューで「(二〇一六年十一月の)大統領選の前に行うべきではない。選挙の前に審議すれば大きな間違いとなる」と述べ、TPPは次期政権での審議が妥当との判断を示した。
 大統領選では、上院の三分の一の議席と下院のすべての議席の改選も同時に行われる。議員にとっては支持者離れを招きかねないTPPのような利害が対立する法案で、賛否を表明したくないとの機運が高まっている。
 大統領選に向けた候補者選びも熱を帯びている。だが、民主党で支持率トップの最有力候補ヒラリー・クリントン前国務長官(68)はTPPに対して「中間層の給料を上げる協定ではない」と反対を表明。共和党支持率トップの不動産王ドナルド・トランプ氏(69)も「現政権の無能さは理解不能。TPPはひどい内容」と酷評するなど、次期政権まで先送りしたとしてもTPPの批准が順調に進むとはいえないのが現状だ。
 TPPは議会承認した国の国内総生産(GDP)の合計が参加国全体の85%以上にならないと、発効できないため、経済規模の大きい米国の国内承認は不可欠だ。日本政府はTPP対策を盛り込んだ予算案の編成を急いでいるが、見切り発車となる恐れも出てきた。』


 TPPは、交渉参加国の内、「GDPの合計が85%以上を占める6カ国以上」が合意すれば発効になります。逆に言えば、アメリカまたは日本が批准しない場合、前記の条件を満たすことが不可能になり、TPPは失効します


 もっとも、日本におけるTPPは、アメリカからの構造改革要求の「ツール」に過ぎません。何を言いたいかといえば、日本はTPPが「大筋合意」の段階に過ぎないにも関わらず、いや「大筋合意」以前から、TPPを「見越した」法律改正を進めていっているという話です。

 アメリカにとって、日本が「アメリカを満足させる構造改革のための法律改正」を実施したならば、TPPそれ自体はどうでもいいわけです。


 例えば、公正取引委員会はTPPの大筋合意を受け、独占禁止法改正の検討に入ったことを認めています。あるいは、牛肉のアメリカからの輸入については、2013年の時点で厚労省が輸入月齢条件を30か月以下に緩和しました。


 さらに、「TPP交渉参加国との交換文書一覧 」で取り上げた、アメリカとの投資に関する交換文書、


「○投資
両国政府は、コーポレート・ガバナンスについて、社外取締役に関する日本の会社法改正等の内容を確認し、買収防衛策について日本政府が意見等を受け付けることとしたほか、規制改革について外国投資家等からの意見等を求め、これらを規制改革会議に付託することとした。」


 は、TPPが失効したとしても「有効」です

 アメリカ議会がTPPを批准しなかったとしても、日本側が独占禁止法を(グローバル企業に都合がいいように)改正し、規制改革会議が命令意見を聞くことを制度化できれば、アメリカ側としてはそれで「Good Job!」となるわけです。


 以前、中野剛志氏が「TPPは練習問題。本試験はアメリカからの構造改革要求」という主旨のことを語った記憶があるのですが、まさにその通りで、TPP反対派(わたくしもですが)が、
「TPPがアメリカ議会様のおかげで失効した! ばんざ~いっ!」
 などとやっていたら、裏側でアメリカの対日構造改革要求が全て通っていた、といった「オチ」は普通にあるわけです。何しろ、外務省は「TPPに参加しなくても、アメリカとの二か国間交渉における決定事項は有効」であることを認めています。


 ポイントは、日本がアメリカ(というか、グローバル資本)の望む「国の形」に構造が変えられてしまうのか、防ぐことができるのか、です。

 というわけで、「TPP発効に暗雲」という記事を読み、
「ああ、これで大丈夫だ! 助かった!」
 などと、ナイーブ(幼稚)な受け止め方をする国民が少しでも減るよう、本日は本記事を取り上げました。



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