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『投資の重要性①』三橋貴明 AJER2015.11.17(5)
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小学館から「中国崩壊後の世界 」が刊行となりました。
今年6月に経済財政運営の指針(いわゆる「骨太の方針」)が閣議決定されましたが、その際に「目標」として、
「2020年度(平成32年度)の財政健全化目標を堅持する。具体的には、2020年度PB黒字化を実現することとし、そのため、PB赤字の対GDP比を縮小していく。」
と、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の目標が入ってしまいました。
短期的にPBを改善しようとすると(しないのですが)、政府は「支出削減」を具体化しようとします。結果、緊縮財政が推進され、デフレが悪化。名目GDPと税収が減ることにより、PB赤字は逆に拡大することになります。
そもそも、「財政健全化」の定義は財政黒字でもなければ、PB黒字でもありません。政府の負債対GDP比率を引き下げることです。すなわち、「=政府の負債÷名目GDP」の割合を下げていくことこそが、財政健全化なのです。
政府の負債対GDP比率は、三つの要因の動きで決まります。すなわち、名目GDP成長率、国債金利、そしてプライマリーバランスです。国債金利が低い(超低いです)状況で、名目GDPの成長率を引き上げれば、PBが赤字だろうとも財政健全化は達成されます。
そして、名目GDP成長率を引き上げるためには、短期的なPBの赤字に目をつぶり、デフレ脱却を果たす必要があります。
ところが、現在の日本は財政運営の目標に「PBの黒字化」を入れてしまっているため、デフレ脱却のために必要な財政出動ができません。それどころか、国民の安全保障に関わる公的サービスの分野についてまで、支出削減が進められていっています。
『診療報酬をマイナス改定へ 薬価1%超引き下げ
http://www.asahi.com/articles/ASHD44JHBHD4UTFL006.html
来年度の診療報酬見直しで、政府は全体の増減割合である改定率を引き下げる方針を固めた。マイナス改定は2008年度以来8年ぶり。診療報酬のうち、薬代の「薬価」はマイナス1%超とする。一方、診察料などの診療報酬本体は、小幅のプラスを軸に検討。厚生労働省と財務省が調整を進めている。
前回の14年度改定では全体でプラス0・1%だったが、消費増税対応分として1・36%分を上乗せしていたため実質的に2回連続の引き下げとなる。ただ、08年度からプラスが続く本体部分は今回も切り込まない。
政府は6月に決めた経済財政運営の指針(骨太の方針)で、高齢化に伴う社会保障費の国費分の自然増を今後3年間で1兆5千億円とする目安を設けた。財務省はこれを受け、厚労省が来年度予算で概算要求した増加幅の6700億円のうち1700億円ほどを削る方針。来年度は年金や介護で大きな見直しがなく、主に診療報酬の削減でまかなう考えだ。(後略)』
診療報酬が、やはり引き下げになりそうです。
診療報酬は小泉政権時の2006年度にマイナス3・16%と大幅に削減され、「医療崩壊」という悪夢をを招きました。
そもそも、考え方としておかしいのは、財務省が医療費の「削減」ありきで動いているという現実です。今後三年間の社会保障費の国費分の自然増を「1兆5円億円」とする目安があり、それに基づき財務省は厚労省の要求額6700億円の内、1700億円を削減するのです。
16年度は年金や介護費について大きな見直し(というか、削減)がないため、主に診療報酬の削減で1700億円を「調達」しようとしているわけです。
というわけで、診療報酬の薬価分を1500億円削り、さらに中小企業の会社員らが入る公的医療保険「協会けんぽ」への補助金を減額し、1700億円を「達成」しようとしているわけでございます。
それでは、なぜそもそも社会保障費の国費分自然増を「1兆5千億円」にしなければならないのでしょうが。まさに、冒頭の骨太の方針でPB黒字化目標が設定されてしまったためなのです。
大本の目標が間違っている以上、その後の方策が「全て」間違ってしまう。PB目標という「根本から間違えた目標設定」を破棄しない限り、我が国のデフレは続き、医療サービスは疲弊し、将来的な日本は、
「国民誰もが高品質かつ安価な医療サービスをアクセシビリティ良く(=支障なく、という意味)享受できる国」
ではなくなっていくでしょう。
この種の悪夢を回避するためにも、PB目標は破棄するべきなのです。
「政府はデフレを深刻化させるPB目標を破棄せよ!」に、ご賛同頂ける方は、
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