無力化される中央銀行

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『投資の重要性①』三橋貴明 AJER2015.11.17(5)

https://youtu.be/PLPnW3LWuPQ

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 小学館から「中国崩壊後の世界 」が刊行となりました。



 欧州中央銀行が12月3日の理事会で金融政策について追加緩和策を打ち出しました

 量的緩和の期間を延長し、ECB当座預金の金利をマイナス0.2%からマイナス0.3%に引き下げるというものでしたが、市場では「失望」されたようです。まあ、市場を「満足」させる内容であったとしても、財政拡大を伴わない金融政策のみでは、物価を引き上げる効果は不十分にならざるを得ないでしょうが。


『アングル:ECBの物価押し上げ能力に不安を抱き始めた金融市場
http://jp.reuters.com/article/europe-markets-ecb-idJPKBN0TN00F20151204?sp=true
 欧州中央銀行(ECB)が3日の理事会で打ち出した追加緩和策について、市場は積極性に欠けた内容と受け止めた。
 このため「スーパーマリオ」の異名を取るドラギ総裁ですら、ユーロ圏の物価を目標まで高めることはできないのではないかとの不安がくすぶり始めている。
 ECBの緩和策は中銀預金金利の0.1%ポイント引き下げと債券買い入れプログラムの6カ月間延長などにとどまり、欧州株は3カ月ぶりの大幅安に見舞われた。ユーロは3月以来の急伸となった。
 しかし最も分かりやすい反応を示したのは国債市場だ。ドイツをはじめとするユーロ圏の国債は軒並み利回りが高騰し、ドイツ2年国債利回りは2011年3月以降で最大の上昇を記録した。
 さらにECBがしばしば期待インフレ率として引き合いに出す5年後からの5年間の予想物価上昇率は、理事会前の1.81%程度から1.75%に切り下がった。
 これは事実上、予見し得る将来において、ユーロ圏の物価上昇率はECBが掲げる2%弱に達することは引き続きないだろうと投資家が判断したことを表している。

 資産運用会社カルミニャックのマネジングディレクター、ディディエ・サンジョルジュ氏は「経済と中央銀行の政策運営能力がともに期待外れだとすれば、市場が備えをしていないような事態になる」と語り、デフレの現実化を示唆した。
 ユーロが対ドルで1.09ドルを上回ったほか、ポンドや北欧通貨に対しても大きく値上がりしたことで、デフレ懸念は増幅された。
 今週発表された11月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年比上昇率がわずか0.1%。しかもECBが3日に示した最新の物価上昇率見通しは2016年が1%、17年が1.6%で、投資家の戸惑いは増すばかりだ。(後略)』


 そもそも論からすると、中央銀行に「物価」について過度な責任を押し付けるのは、妙な話です。中央銀行がモノやサービスを購入できるならばともかく、現実には債券(ときに株式)を買い取るに過ぎません


 物価とは、モノやサービスの価格です。中央銀行がどれだけ莫大な債券を買い取っても、その時点では物価はピクリともしません。すなわち、インフレ率が上がるわけではありません。


 中央銀行の量的緩和により、銀行が「おカネを貸し出しやすい環境」が生まれ、実際に企業や家計におカネが貸し出され、モノやサービスが購入されてはじめて、物価は上昇に向かいます。現在の欧州は、日本同様に民間の企業や家計が「おカネを借りる気がない」状況になっており、ECBが量的緩和に加えて、マイナス金利政策まで取っているにも関わらず、貸し出しやモノ・サービスの購入が十分に増えず、インフレ率はほぼゼロで推移しています。

 無論、民間の資金需要が十分にあれば、量的緩和やマイナス金利政策は効果を上げるでしょう。


「ECB当座預金残高が不十分」
 であるため、準備預金制度に基づき、銀行がおカネを民間に貸し出せない。という環境下であれば、ECBの金融政策のみで銀行から民間企業、家計への貸し出しが増え、モノやサービスが購入され、物価は上昇に転じます。


 とはいえ、現在のユーロ圏は、そもそも民間企業や家計が貸し出しを増やす気がなく、さらにモノやサービスの購入も「減らそうとしている」わけです。この状況で、銀行の「貸し出しの容易さ」を引き上げたところで、モノやサービスの購入が増えるわけではなく、インフレ率も上昇には転じません。


 というわけで、中央銀行の金融政策と、「物価上昇(=モノやサービスの購入の増大)」を結びつける考え方こそが、「期待」というものだったわけです。期待インフレ率(記事の言う「予想物価上昇率」)を高めると、企業が設備投資を増やし、家計が消費を増やすため、モノやサービスが買われ、インフレ率は上昇する「はず」という発想ですが、現在の日本や欧州の状況を見ている限り、学者が机上で考えた空論に終わりそうです。(実際に、学者が机上で考えたわけですが)

 要するに、結論は、
デフレから脱却したいならば、政府がモノやサービスの購入を増やせ
 という話になるのですが、日本同様にユーロ圏(というかドイツ)もまた財政均衡主義という呪いに取りつかれており、このままではユーロ各国は普通にデフレ化でしょう。(ギリシャとスペインは、すでにデフレに陥っています)


 とにもかくにも、財政出動は嫌だ。


 という、経済学の根っこに染みついた奇妙な「考え方」に基づき、日本や欧州では「デフレ対策は金融政策で」という社会実験が実施され、失敗に終わろうとしています。国民や企業が支出や借り入れの拡大を「増やさない」時期(=デフレ期)というものは存在します。すなわち、セイの法則が成り立たない時期もあるという、至極、当然の話を理解しない限り、日本と欧州は共に「失われた○十年」の道を歩んでいかざるを得ません。


 セイの法則が成立しないデフレ期には、中央銀行が無力化されるのです。

 各国の政府は、いい加減に現実を認め、「デフレ脱却のためには、財政出動の拡大が必要」という考え方に立ち返る必要があります。


「デフレ脱却のためには、財政出動の拡大が必要だ」に、ご賛同頂ける方は

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