シェンゲン協定とユーロ

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『投資の重要性①』三橋貴明 AJER2015.11.17(5)

https://youtu.be/PLPnW3LWuPQ

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 徳間書店「2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本 」が発売になりました。



 イエロージャーナルに「経済評論家・三橋貴明氏も呆れる「自民党有志」が「大企業の内部留保」に対して課税案」が掲載されました。
http://www.yellow-journal.jp/politics/yj-00000022/
 
 さて、EU・ユーロという「ドイツ第四帝国」が大きく揺らいでいます。


 理由は、ドイツ第四帝国の基盤たる思想である「グローバリズム」の内、特に「ヒトの国境を越えた移動の自由」が難民問題やISIL問題で維持不可能になりつつあるためです。


シェンゲン協定崩壊にEUが警鐘、「ユーロは意味を失う」
http://jp.reuters.com/article/2015/11/26/juncker-euro-at-risk-idJPKBN0TE27C20151126
 欧州委員会のユンケル委員長は25日、欧州26カ国が締結する国境検査なしで自由に往来できる「シェンゲン協定」について、一部締結国が押し寄せる難民対策の一環として国境審査を再導入すれば、単一通貨ユーロを含む欧州連合(EU)の構造に政治的な影響が及ぶとの認識を示した。
 同委員長は欧州議会で「シェンゲン協定は欧州の構造の土台の1つである」とし、「同協定が崩壊すれば単一通貨ユーロは意味を持たなくなる」と警告。
 そのうえで「シェンゲン協定は『こん睡状態』にある」とし、「欧州の価値、原則、自由を信頼するなら、同協定の精神の蘇生に向け努力しなければならない」と述べた。
 シェンゲン協定はEU加盟国のうち22カ国が締結。残りの4カ国はEU非加盟国となっており、19カ国で形成されるユーロ圏とは法的枠組みが異なる。(後略)』


 ユンケル委員長が、ヒトの移動の自由を意味するシェンゲン協定を破棄し、各国が国境審査を再導入すると、ユーロに政治的な影響が及ぶとの認識を示しました。今一つ、意味が分かりません。


 何しろ、アイルランドはユーロ加盟国でありながら、シェンゲン協定は批准していないのです。シェンゲン協定は、ユーロ加盟の必要条件にはなっていません。


 ドイツのメルケル首相は、自らの、
政治難民受け入れの上限はない!
 という大見えが、現在の問題の主因の一つになっており、今年だけでドイツに150万人もの移民・難民の流入が予想されているにも関わらず(いや、だからこそ)、ドイツの難民受入数の制限を求める保守勢力からの高まる圧力を一蹴。EU諸国が国境を制御できない以上、、難民流入を抑制しようとするドイツの試みは無意味だと主張しました。


 いや、そもそもドイツが「無制限」に難民を受け入れる印象を(メルケル発言含め)世界に与えてしまったからこそ、EU諸国の国境が大混乱に陥っているわけでございます。もっとも、ドイルが難民受入の制限を始めると、東欧諸国が続々と国境閉鎖の措置を採っていくことになり、シェンゲン協定は終わります。


 とはいえ、だからといって「ユーロ」が意味を失うとは思えません。(もちろん、わたくしはユーロに「経世済民」としての意味があるなどとは微塵も思っていませんが)


 シェンゲン協定が終焉を迎え、ユーロが存続するヨーロッパは、どのような状況になるのでしょうか。


 大恐慌期、アメリカの作家ジョン・スタインベックは困窮するアメリカ農民を描いた「怒りの葡萄」を書きました。スタインベックの小説をもとに、1940年に映画「怒りの葡萄」が制作されます。


 映画「怒りの葡萄」において、オクラホマを終われ、流民と化した主人公一家は、トラックに家財道具を乗せ、カルフォルニアを目指します。恐慌下で騒然としていた当時のアメリカでは、州境を超える際に厳格な「州境検査」が行われていました

 同じアメリカ国民であっても、「胡乱な輩」を自州に入れることを、各州民が拒んでいた時代だったのです。


 とはいえ、州境検査が厳しかったとはいえ、当たり前ですが当時のアメリカの通貨は「ドル」でした。すなわち、各州は「共通通貨ドル」を普通に使い続けていたわけです。


 そう考えたとき、シェンゲン協定とユーロを結びつけるユンケル委員長は、奇妙に見えます。国境管理と共通通貨は、共存が可能なはずなのです。


 結局のところ、ユンケル委員長の、
「シェンゲン協定は欧州の構造の土台の1つである」
 の言葉通り、モノ、ヒト、カネという経営の三要素の国境を越えた移動を自由化する「グローバリズム」というEU・ユーロの教義が、現実には維持不可能であるという現実を認めたくないだけのような気がいたします。シェンゲン協定が破棄され、ヒトの移動の自由の制限が開催されると、「グローバリズムとして美しくない」という話なのだと思うのです。


 もっとも、ハンガリーなどからしてみれば、
美しいグローバリズムが、国民の安全や豊かさを守ってくれるのか?」 
 という話になるわけです。


 いずれにせよ、特定の「教義」「思想」「考え方」に固執した社会実験が、いかに国民を不幸にするか。あるいは、継続のために多大なコストを必要とする現実を、現在の欧州は我々に見せつけてくれているわけです。


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