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『日本の亡国を防ぐために①』三橋貴明 AJER2015.9.15(5)
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飛鳥新社「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな
」、早速、大増刷になりました! ありがとうございます。
現在、Amazon在庫切れの状況ですが、そろそろ在庫有りに戻ると思います。
中野剛志氏の寄稿が文藝春秋に掲載されましたので、ご紹介。
『統制経済 岸信介の選択 「満州は私の作品」と語った革新官僚の目指したものとは
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/1395
岸信介研究の第一人者である原彬久(よしひさ)・東京国際大学教授は、安倍晋三首相について「安倍氏の発言や著書を読むと、やはり安倍氏の中に岸信介はいるな、と思う」(朝日新聞デジタル二〇一五年五月二十日)と述べている。確かに、安倍首相本人も祖父の岸を強く意識している。改憲を目指すなどの共通点もある。だが、経済方面に目を向けると、二人は著しい対照をなしている。
安倍首相の成長戦略は、規制緩和や自由化など、典型的な経済自由主義によって貫かれている。これに対して、岸信介は戦前・戦中は商工省官僚あるいは商工大臣として統制経済の遂行に力を注いだ中心人物であり、戦後も経済自由主義には懐疑的であった。
では、経済自由主義に背を向けた岸信介の経済思想とは、どのようなものであったのか。(後略)』
本寄稿において、中野氏は、
「ティピカルな資本主義、自由主義で、すべてのものは、自由競争に任すのだということは日本の現状からいうと許されない。(中略)あくまで各人の持っている能力をできるだけフルに発揮せしめると同時に全体として一つの計画性をもたねばならぬという考え方をしなければならない」
と、岸伸介の言葉を引用し、日本がドイツに倣い「協調的経営者資本主義」の路線を採用し、成功するまでの流れを解説しています。
1920年代以降のドイツでは、
「(引用)ドイツは第一次世界大戦後の困窮の中で、米英仏に対抗すべく、国民が一致団結した。国家間は「競争」したが、国民同士は「協調」を優先した。言い換えれば、ナショナリズムが協調をもたらし、産業合理化へと駆り立て、協調的経営者資本主義を実現した」
わけでございます。
大東亜戦争敗北後の我が国の高度経済成長は、まさに上記の「協調的経営者資本主義」により、実現したといっても過言ではないと思います。 そもそも、国家間はともかく、「国民同士」で競争を煽り立て、勝者と敗者に区分していくという発想が、わたくしには理解できません。しかも、この世界屈指の自然災害大国において。
が、現実には安倍政権が構造改革路線を推進し、国民同士の協調を破壊していっています。
そして、協調的経営者資本主義の本家であるドイツの方も、日本以上のペースで国民同士の協調を破壊したのです。「移民国家」と化すことにより。
わたくしはシリア難民の受け入れについて「人道的」「人権的」な話をする気はありません。それは、単に個人の、あるいは国民の価値観の問題です。ドイツ国民が「人道的」に難民を80万人/年、受け入れることを是としたならば、受け入れればいいのです。
問題は、ドイツの産業界が、難民について「低賃金労働者」として認識している点です。低賃金の難民は、ドイツの実質賃金の引き下げをもたらします。それを産業界が「歓迎」しているわけですから、ナショナリズムに基づく協調的経営者資本主義も何もあったものではありません。
しかも、ドイツは「難民に寛容」という印象が広まった後に、あまりにも膨大な難民流入に恐れをなし、国境管理を復活させたため、混乱が東欧やバルカン諸国に広がりつつあります。
『欧州の難民 国境管理強化で行き場失うおそれ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150918/k10010239861000.html
ヨーロッパに流入している難民らの入国を認める方針を示したクロアチアは、1万人以上が押し寄せたため、一転して国境の管理を強化することを決めました。難民らが再び行き場を失うおそれもあり、人道面への影響が懸念されています。
ヨーロッパに流入する難民や移民の動きを抑えようと、ハンガリーが国境管理を強化したため、隣国のセルビア側では17日も大勢の難民や移民が足止めされています。
国境では、前日に難民らによって壊されたゲートの代わりに、新たに鉄条網が設置されました。
難民らはハンガリーに入れる見通しが立たないなか、入国を認める方針を示した隣国のクロアチアに向けて国境からバスなどで移動しています。国境で3日間過ごしたというシリアの男性は「もう後戻りはできない。クロアチアの国境が開いたということで希望が出てきた」と話していました。
国境で足止めされていた人に加え、新たにセルビアにやってきた難民や移民も相次いでハンガリーをう回してクロアチアを目指していて、クロアチア内務省は、これまでに1万1000人以上が入国し受け入れは限界であるとしています。
こうした難民らの一部が警察の制止を振り切って逃走するなど混乱が広がっていることから、クロアチアは17日、一転して国境管理を強化することを決めました。
このため難民らは再び行き場を失うおそれもあり、人道面への影響が懸念されています。 』
ハンガリーはついに、難民に対し実力行使に出ました。16日に南部国境で治安部隊と難民が衝突し、ハンガリー当局は治安部隊20人、難民らの子供2人が負傷し、29人を逮捕したと発表しました。
セルビアに「滞留」している難民が国境の門を開けて突破しようとしたところ、治安部隊が催涙ガスや放水銃で応戦。難民側も投石や放火で対抗。
ハンガリーは難民らの一部について「テロリスト」と呼んでいます。
ハンガリーが国境を閉鎖したため、難民たちはクロアチアに殺到し、またもや大混乱が発生しています。クロアチアは難民を運ぶためのバスを用意したのですが、全く足りず、一部の難民がバスのガラスを割るなど破壊行為に及び、機動隊が出動。
欧州連合は、難民問題の対策を協議するためのEU特別首脳会議を開催し、難民受け入れの分担などについて協議することになりました。が、ハンガリーをはじめとする東欧諸国は絶対に受け入れないでしょう。
EU・ユーロという「ドイツ第四帝国」は、グローバリズム、あるいは新古典派経済学的な「協議」を帝国のテーゼとしてきました。すなわち、「国境を越えたヒトの移動の自由」は帝国が成立する大前提なのです。
とはいえ、すでにドイツにしても国境管理を復活させ、シェンゲン協定は瓦解しつつあります。何しろ、国連難民高等弁務官事務所によると、シリア内戦による難民は登録されているだけでも400万人(!)いるのです。
その多くはトルコやレバノンの難民キャンプで暮らし、何とか「欧州」に行こうと命がけの逃避行が続いているわけです。この状況に、「市場原理主義」やら「自由競争」とやらで対応できるのでしょうか。「国家」の管理が必要なのではないですか?
ベルリンの壁が崩壊した以降、ドイツで「協調的経営者資本主義」を破壊したグローバリズムが、今、「難民の奔流」により、音を立てて崩れ落ちようとしています。
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