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『ドイツ第四帝国①』三橋貴明 AJER2015.7.21

https://youtu.be/mR1pvzlOzbU

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 いやあ、驚きました。まさかこのタイミングで、中国が人民元を切り下げてくるとは・・・


人民元切り下げ 「国際化」の看板はどこに
http://www.sankei.com/world/news/150813/wor1508130008-n1.html
 経済悪化に対する習近平政権の危機感の表れなのだろう。中国人民銀行が2日連続で人民元の大幅切り下げに踏み切った。通貨安を追い風とする輸出拡大で、景気を支えるためだという。
 ここまで露骨な為替誘導は異例なだけでなく、各国の通貨安競争を誘発しかねない。経済大国として問題の大きい措置だ。
 何よりも恣意(しい)性の高い通貨管理は、中国が目指す人民元の国際化にも逆行する。これで国際通貨にふさわしいといえるのか。国際社会は冷静な見極めが必要だ。
 中国は、人民元の対ドル相場に基準値を設け、相場の変動幅を一定範囲に抑える「管理変動相場制」を採用している。その基準値を切り下げた。
 これを受けて日米の株価やアジア通貨が下落するなど、世界の金融市場に動揺が広がっている。(後略)』


 今週月曜、SAPIOのインタビューを受け、
「人民元を切り下げたところで、世界的に需要が冷え込んでいる現状では効果が知れているし、人民元国際化という国家目標が潰えるので、中国共産党はやらないと思いますよ
 と、語った翌日、共産党が人民元を切り下げました


 しかも、11日、12日と二日連続で、計3.5%の切りさげです。完全な「為替操作」であり、人民元の「国際化」という目標は、とりあえずは大きく後退となりました。(別に、諦めたわけではないのでしょうが)


 共産党の「政治判断」で勝手に為替レートが設定されるような通貨が、国際通貨になるなどあり得ません。


 タイミング的には、7月の中国の輸出が対前年比8.3%減(6月は2.8%減)と、大きく下がったことを「受けて」という話なのだと思いますが、中国経済の実体は、日本から見る以上に悪いのだと思います。まさか、看板政策の人民元の国際化よりも、輸出拡大を優先するとは。


 ちなみに、中国の輸出先の減少を見ると、対欧州が12.3%減、対日本が13%減、対アメリカが1.3%減でした。特に、アメリカ向け輸出が(今年3月以降初めて)減少したのが、中国共産党にとってはショックだったと思います。


 ところで、わたくしが「共産党は人民元を切り下げない」と予想した理由はもう一つありまして、何しろ中国共産党は現在、必死になって株価を支えようとしているわけです。共産党が人民元を切りさげた場合、市場は、
そ、そんなに中国経済の実体は悪いのか!?
 と判断し、株価に悪影響を及ぼします。実際、誰もが「そ、そんなに中国経済の実体は悪いのか!?」と思ったでしょうし、上海総合株価指数も(昨日は)下げました。


 現在の中国は、自動車や鉄鋼、建設サービスなどで過剰な供給能力を抱えてしまっており7月の生産者物価指数(PPI)は、対前年同期比で5.4%の下落でした。中国のPPIが一年前を下回るのは、これで41か月連続です。


 日本の7月の国内企業物価指数の速報値も、消費税増税分を除くと対前年比2.9%の減少で、中国経済の減速を受けた原油、非鉄金属などの商品相場の下落が響いているようです。さらに、コマツやファナックなどの建機・工作機械メーカは、中国の売上が大きく落ち込んでいることを公表しています。


 今回の中国共産党のやり方で気になるのは、まずは「株価対策」や「人民元国際化」と整合性が取れないという点に加え、中国人民銀行が人民元切り下げの理由の一つとして、11日に、
貿易黒字を確保し続けるため
 と、説明している点です。


 え・・・? と、目を疑ってしまいました。中国が貿易黒字を増やすということは、反対側で貿易赤字が増える国が必ず出ます。中国の貿易黒字が増えると、中国のGDP(=需要=雇用=所得)が増えるという話で、反対側の赤字国にとってはGDP(=需要=雇用=所得)が減るという話になります。


 すなわち、中国は、
外国の需要を奪い取るために、人民元の為替レートを切りさげた
 と、宣言してしまったのです。


 李克強は今年の4月、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに応じ、
「輸出刺激のために通貨安にすることはできない」 
 と、至極真っ当なことを述べていたのですが、方針転換せざるを得ないほどに、中国経済が悪化しており、かつ中国が「外国からどう思われようと、構わない」という姿勢に転じたことになります。


 中国が為替レートを引き下げたことを受け、競合である東南アジア諸国も追随する可能性があります。アジア通貨安戦争が勃発しかねないわけでございますね。


 いずれにせよ、中国を含む世界経済は、これまでとは異なるフェーズに入ったようです。とりあえず、日本は外需の争奪戦から距離を置き、内需主導型成長路線に転じるべきです。


 来週、4-6月期のGDPが発表されます。恐らく「マイナス成長」で、しかも新たな手を打たないと7-9月期までマイナスになりかねない指標が出てきています。(7月の消費者態度指数が大幅に悪化)


 4-6月期のGDPが発表され、補正予算等の正しい政策を打てるのか。打てない場合、7-9月期のマイナス成長、すなわち「リセッション(二期連続で実質GDP成長率が対前期比でマイナス)」突入というわけで、安倍政権はよくてレームダックという状況に陥ると思います。


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