株式会社経世論研究所  講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッター  はこちら

人気ブログランキング に参加しています。

新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ドイツ第四帝国①』三橋貴明 AJER2015.7.21

https://youtu.be/mR1pvzlOzbU

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

※三橋も決起人を務めさせて頂いております「全国ふるさと甲子園(8月7日)」のご案内です。三橋も参りますので、皆様、是非、お越しくださいませ。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

   


 これまでにも何度か触れてきましたが、アメリカ政府は自国産農産物(特に穀物)のグローバル市場における競争力(=価格競争力)を高めるため、輸出補助金を出しています

 アメリカの輸出補助金の仕組みは、以下になります。


A:アメリカの農家が継続的に農業を可能とするための目標価格
B:グローバル市場で価格競争力を持つための市場価格


 当たり前ですが、人件費が高いアメリカでは、常に「A>B」となります。価格Aのまま、グローバル市場に出荷しようとしても、高すぎて売れません。


 というわけで、アメリカの農産業はAよりも安いBの価格でグローバル市場に輸出します。差額の「=A-B」を、アメリカ政府が全額所得補てんしているわけでございます。


 もう一度、例の図を再掲します。


【農業に対する政府支出の国際比較 】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#Nogyo


 今日、見て頂きたいのは、右側の「農業産出額に対する農業予算の割合」です。日本がわずか27%であるのに対し、アメリカは65%と、あのスイス(62%)すらをも上回っています。理由の一つが、この輸出補助金なのです。 


 例えば、日本がTPP交渉において「真の意味で自由貿易を目的とした交渉」をやるならば、
こちらは関税を引き下げるので、アメリカ側は輸出補助金を廃止せよ
 と、やるべきなのでございます。一応、日本政府は要求だけはしたようですが、成果は出ていません。


 そりゃ、そうでしょう。アメリカの農政の根幹なのです。アメリカの農業ロビーが認めるはずがありません。


 それどころか、現実は・・・。
 
小麦の関税、事実上削減へ=日本、米豪などと調整―大筋合意目標を共有・TPP交渉
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150730-00000010-jij-pol  
 環太平洋連携協定(TPP)交渉の米国やオーストラリアなどとの協議で、日本が輸入小麦について事実上の関税削減に踏み切る方針であることが分かった。
 複数の交渉筋によると、政府が製粉会社などに小麦を売り渡す際に輸入価格に上乗せする輸入差益を圧縮する方向で調整に入った。(後略)』


 こちらは、関税を削減。アメリカ側は、輸出補助金を温存


 日本農家は「輸出補助金」という武器を振りかざし、低価格攻勢で攻めてくるアメリカ小麦産業を相手に、関税という盾なしで「市場競争」を繰り広げなければいけないのです。


 しかも、そもそも日本は、アメリカ、EU、オーストラリアと比較し、国土面積が狭い上に、農地が国土に占める割合も小さいのです。農業の平均経営面積は、アメリカが日本の75倍、EUが6倍、そしてオーストラリアが1309倍(!)というのが現実なのでございます。


 これだけ農地規模に開きがあっては、生産性に差が出て当たり前です。米豪の穀物産業と日本農業の生産性の違いは、「国土条件」の問題であり、
「日本の農家は努力が足りない!」
 といった話では全くありません。余程の技術的ブレイクスルーがない限り、日本と米豪の農業の生産性の開きは埋められません。


 例えば、製造業であれば、
「日本の人件費が高いので、東南アジアに工場を移す」
 といった対応策が可能です。すなわち、資本移動です。資本移動をすれば、日本国民の雇用や所得の問題は置いておいたとして、少なくとも企業単体では価格競争力を引き上げることができます。


 それに対し、「土地」は持っていけないのです。


 こういうことを主張すると、
「日本の穀物産業の競争力(価格競争力)がないなら、農業は付加価値の高い商品政策持つに特化すればいい」
 と、物凄~く頭が悪い発言をする政治家がいますが、あのですね、国民の生命を守る「穀物」を保護せず、「サトウキビ」「ゴム」などの商品作物に特化「させられた」結果、国民がたびたび飢饉に見舞われることになったかつての東南アジア諸国が、何と呼ばれていたのか知らないのでしょうか。もちろん「植民地」であり、商品作物の農場は「プランテーション」と呼ばれていました。


 日本は自ら「国民国家」から、プランテーションを営む植民地へと落ちぶれようとしているわけでございます。


 別に、農家が付加価値が高い農産物に特化するのは、それぞれの農家の勝手です。とはいえ、「政策」としてそんなことをやってしまうと、米豪などで天候不順が続き、対日輸出が停まると(普通に停めます)、日本国民が飢え死にすることになります


 さて、三日間に渡り「日本の農業の真実」を書いてきましたが、ここまで書いたにも関わらず、TPPが「日本の食料安全保障を弱体化させる」という現実を理解できない人に、語るべき言葉はありません


 現状のままTPPが妥結され、国会で批准されると、日本の農家は「ひのきの棒で完全武装の重騎兵と戦う」ことになり、普通に廃業していきます。そして、残された農地を「農協改革」により株式会社が取得し、当初は農業を営み、儲からない(儲からないでしょう)ことが分かると、農地を他の用途に転用して儲けるという「不動産ビジネス」が活性化し、我が国の食料自給力はどん底まで落ち、「亡国」へと至るでしょう。


 亡国を防ぐには、まずは「事実」を知ってください。そして、知らない国民に教えてあげてください。結局のところ、問題は「言論」ですので、言論で戦うしかないのです。


今後も三橋貴明の言論活動をご支援下さる方は、

↓このリンクをクリックを!
新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ
◆本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。

新世紀のビッグブラザーへ blog
◆関連ブログ

三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

◆三橋貴明関連情報

Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」 連載中

新世紀のビッグブラザーへ ホームページ はこちらです。