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『ドイツ第四帝国①』三橋貴明 AJER2015.7.21
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経済(経営ではないです)の三要素がモノ、ヒト、技術であり、「カネ」ではないことを理解すると、色々なものが見えてきます。
例えば、社会保障に関連して、
「これまでは一人の高齢者を四人で支えていたのが、三人で一人を支えなければならなくなる」
といったレトリックで煽っている「頭の悪い人」がいます。恐らく、高齢者の「年金というおカネ」を賦課方式で現役世代が負担しなければならないので、大変だ~っ!と言いたいのでしょうが、残念ながら国家とはおカネを発行できる存在なのです。
上記は、むしろ、
「これまでは四人の供給能力で一人の高齢者の需要を満たしていたのが、三人で満たさなければならなくなる」
という、供給能力(分かりやすく書くと人手不足)の問題なのです。とはいえ、四人で一人の高齢者の需要を満たしていたのが、三人になるということは、「競合相手が減る」という話になります。
すなわち、生産性向上で需要を満たすことができれば、現役世代は自らが生産する付加価値(モノ・サービス)を「高く売り付ける」ことが可能になるという話なのです。何が問題なのでしょうか?
生産年齢人口対総人口比率が(しばらくの間)下がり続ける我が国では、若い世代の生産者が「貴重な存在」になっていかざるを得ません。これが、どれほど素晴らしいことか。あるいは、このタイミングで生産年齢人口対総人口比率が下がるとは、何と幸運なのでしょう、我が国は。
高度成長期からバブル崩壊まで、日本は「人が高い国」であると「批判」されていました。とはいえ、人の労働力が高く買われる国の、何がいけないのでしょう。
もちろん、グローバル市場で「安い賃金を武器に勝負する」というならば、人が高いことは問題です。とはいえ、我が国は輸出依存度が低く、国内需要中心で十分に継続的な成長が可能な国なのです。別に、輸出はどうでもいいと言いたいわけではありません。国民の実質賃金を切りさげてまで、グローバル市場を目指す必要はない国、という「事実」を述べているだけです。
ところで、すでに我が国は一部の産業で人手不足が始まっており、当然ながら「生産性向上」の動きも始まっています。
『インフラ点検にロボ活用、規制緩和で人手補う 政府、16年度にも
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF19H0J_Z10C15A7MM8000/
政府は橋やトンネルといった公共インフラの点検で、ロボットの活用を促すため規制の見直しを進める。技術の向上で、人が行う作業の補助や代替が可能になったためで、2016年度にもロボットを導入できるよう「目視」などを前提とする規制を緩める。老朽インフラの点検が増えるなか、技術者の不足に対応するとともに、点検の精度を上げてインフラの安全性も高める。技術開発を促しロボットを成長産業に育てる狙いもある。(後略)』
何度も書いていますが、政策それ単体に善や悪、あるいは古い新しいがあるわけではありません。
● 日本の安全保障を強化できる(あるいは、弱体化しない)
● 需要が供給能力を上回るインフレギャップ状況になっている
上記二つを満たすならば、別にわたくしと言えども規制緩和に反対しません。というか、推進します。
公共インフラの点検を「ロボット」でやる。あれですかね。サイコパスの「ダンゴムシ」みたいな感じになるのでしょうか。いずれにせよ、夢が広がります。
日経の記事によると、橋やトンネルの維持管理の際に、人間が目視などで調べているのを、カメラ搭載型のドローン(小型無人機)や集音器付きのロボットに切り替えることを可能とする規制緩和やルール作りとのことです。
特に、電波法を見直さなければ、ドローンや無人駆動ロボットの制御を無線ですることができません。
すでに、日立ハイテクノロジーズが、高圧送電線の検査を自動化するロボットを販売しようとしています。送電線にぶら下がりながら走り、表面の傷を調べるロボットとのことです。まさに「ダンゴムシ」。
パナソニックは、ダムの壁面を点検する水中ロボットを開発中。
NECや富士通も、トンネルや橋の点検に使うドローンを開発中。
当然ながら、日本のインフラ点検事業で培われたノウハウを組み込んだドローンや無人駆動ロボットが、将来的には「世界のインフラ点検事業」で売れていくことになるわけです。もちろん、高付加価値ゆえに「高く売れる」ことになります。
というわけで、生産年齢人口対総人口比率が低下していく国は、若者が「大事にされる」状況になっていくのに加え、人手不足を生産性向上で埋めれば経済成長し、加えて我が国には生産性向上のための技術開発投資を実施する企業が健在という話です。
外国人労働者を入れる等の「決定的な間違い」をおかさない限り、我が国の将来は明るいです。そして、「決定的な間違い」を推進しているからこそ、わたくしは安倍政権の経済政策を批判しているわけでございます。
ドイツ生まれで日本に暮らすエコノミスト、イェスパー・コール氏は、
「もし生まれ変われるのであれば、(日本の)23歳の若者に生まれ変わりたいものです。私はとても希少性の高い人材となるからです。そして、希少性が上がると価値も上昇します。 」
と、語っていますが、その通りだと思います。
きちんと「需要」と「供給能力」について理解すれば、現在の日本の若い世代がどれほど幸運であるかが分かるはずです。
この種の認識を国民が共有することで、我が国は生産性向上のための投資を拡大することが可能となり、高い経済成長率の時代を迎えることになります。逆に、「人口が減る、大変だ~っ!」「若い世代が減る、終わりだ~っ!」などと「頭の悪い」主張を国民が振り払えない場合、これまで通りの沈滞が続くことになるか、あるいは「日本国民の日本」ではない、別の国と化してしまうでしょう。
昨日も書きましたが、現在の日本は本当に正念場に立っています。
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