緊縮のクーデター

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『ギリシャと地方創生①』三橋貴明 AJER2015.6.16

https://youtu.be/kDM_C2YUqHU

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 さて、なぜわたくしがしつこく、しつこくギリシャ問題を取り上げるかと言えば、もちろん我が国にしてもギリシャ以上に長期間、「緊縮財政至上主義」という病から回復できていないためです。いや、ギリシャ人は国民投票で「緊縮にNO」との判断を下したわけですが、日本の方はといえば、未だに「政府は無駄を削れ!」「増税やむなし」と、自らの首を懸命に絞め続ける愚かな人々で満ち溢れているわけで、こちらの方がより重症と言えます。


 とはいえ、さすがに今回のギリシャへの緊縮財政強要は、世界中から批判が殺到し、「#ThisIsACoup」(これはクーデターだ)というTwitterのハッシュタグが流行しています。国民「主権」に基づき、緊縮を否定したギリシャに緊縮を強要するわけで、確かにクーデターなのかも知れません。


ギリシャ救済案は「クーデター」、ツイッターで非難続出
http://www.afpbb.com/articles/-/3054397
 ユーロ圏諸国が提示したギリシャの金融救済案について、マイクロブログのツイッター(Twitter)上では、その厳しい条件がギリシャ政府から財政上の主権を奪うものだとして、「#ThisIsACoup(これはクーデターだ)」のハッシュタグを付けて批判する投稿が相次いでいる。
 このハッシュタグは、ギリシャ、フランス、ドイツ、英国のツイッター上で、最も話題となっているワードの一つになった。
 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に寄稿するノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン(Paul Krugman)氏など、著名なコメンテーターたちもこのワードのトレンド化に一役買っている。
 「これはクーデターだ」との主張の要旨は、ユーロ圏の諸国(とりわけ緊縮財政を強硬に主張するドイツやフィンランドが主導するグループ)がギリシャに対して行った提案が、同国の経済を自分たちの管理下に事実上置かせる政策を実施するよう求める、交渉の余地のない内容になっている、とのもの。
 報道陣に配布された草案によれば、今回の提案はギリシャに対して、税制と年金の制度改革を15日までに議会で法制化し、500億ユーロ(約6兆8000億円)の国有資産を欧州連合(EU)の監視下にある信託資産に移管し、大規模な労働市場改革の徹底と民営化の実現を約束するよう求めている。
 もし拒否すれば、ギリシャはユーロ圏から強制的に離脱させられることになり、すでに崩壊寸前のギリシャ経済に壊滅的な影響を与えるとみられる。
 クルーグマン氏はニューヨーク・タイムズに、「今話題となっているハッシュ
タグ『#ThisIsACoup』は全くもって正しい。この要求は、厳しいという範囲を越えて純粋な報復の域に達しており、国家主権の完全な破壊であるとともに、救いへの希望もない」と述べている。』


 クルーグマン教授のいう、
「国家主権の完全な破壊であるとともに、救いへの希望もない」
 は、まさにその通りでございます。今回のギリシャ「救済」は、国家主権の完全な破壊になります。元々、EUに加盟していることから移民制限や国境管理(対シュンゲン協定国)の主権がなく、関税自主権もなく、資本規制もできず、さらにユーロに加盟して金融主権をECBに移譲し、そして最後の「財政主権」を今回の「救済案」で喪失するギリシャは、少なくとも「国民主権国家」ではなくなります


 無論、本日のギリシャ議会の採決次第ではありますが、冗談でも何でもなく、わたくし達の目の前で起きているのは、ギリシャという曲がりなりにもOECDに加盟していた国の主権喪失なのです。


 そして、極めて悲劇的なのは、今回のギリシャの「救済案」が、全く救済にはならないという点です。何しろ、ギリシャの問題は「公務員が多すぎる~」「働かない~」などなど、マスコミで「頭の悪い連中」がまき散らしているデマゴギーとは、全く別のところに存在するためです。


【2012年 主要国の年間平均労働時間(時間/年)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#OECD


 上図の通り、ギリシャの労働時間は主要国の中では突出して「長い」です。ギリシャ人は働かない、というのは労働時間で見る限り明確な嘘なのですが、問題は、
「なぜ、労働時間が長いにも関わらず、ギリシャは貿易赤字が拡大し、(ユーロ加盟前は)高インフレが継続していたのか?」
 になります。


 答えは簡単で、生産性が低いのです。すなわち、投資(設備投資、人材投資、技術開発投資、公共投資)が不足し、生産者一人当たりの付加価値の生産(GDP)が少ないというのが、ギリシャ問題の源なのでございます。


 ところが、ギリシャは生産性が低い状況で、EUとユーロに加盟してしまいました。結果的に、
関税と為替レートで自国企業を外国企業から保護し、投資を拡大することで生産性を高める」
 という、唯一無比な経済政策を採れなくなってしまいました。何しろ、ユーロ加盟国は関税自主権がなく、金融主権もありません。しかも、ギリシャは国債発行に際してドイツやフランスと「同一通貨」で競争をせざるを得なくなり、金利は高止まりしていました。


 結局、ユーロ加盟後のギリシャでは不動産投資(バブル化していました)は拡大したのですが、肝心の生産性向上のための投資は拡大せず、例えば自動車市場ではドイツ車の圧倒的な攻勢を受けてしまい、貿易赤字と経常収支赤字が拡大。財政破綻に追い込まれました。


 というわけで、ユーロとEUから離脱し、関税自主権と通貨主権を取り戻さない限り、ギリシャ問題は解決できません。


 しかも、酷い話ですが、ギリシャに「自由貿易」を突きつけるドイツにしても、1800年代に対イギリスで保護貿易(高関税政策)を採り、自国市場をイギリス企業から守り、生産性を高めたのです。そのイギリスにしても、インド製品(キャラコ)の輸入を禁止し、自国市場を保護した上で、生産性を高めたわけでございます。


 史実を見る限り、「自由貿易で生産性向上」などというミラクルは確認できません。英独も、日米も、保護貿易で生産性を高め、先進国になりました。

 

 というわけで、ギリシャはユーロ・グローバリズムのくびきに囚われている限り、未来永劫、低生産性国から脱却できません。挙句の果てに、財政主権まで取り上げられた日には、ギリシャは永久に負け組のまま据え置かれます。


 デフレ期の緊縮財政が間違っているという、「当たり前の常識」を取り戻し、ユーロから離脱する決断をしない限り、ギリシャ国民の貧困化は続き、近い将来、発展途上国と化すでしょう。本日のギリシャ議会の判断は、いかなるものになるでしょうか。


「デフレ期の緊縮財政は間違いである」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!
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