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『ギリシャと地方創生①』三橋貴明 AJER2015.6.16

https://youtu.be/kDM_C2YUqHU

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 明日は、文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。

http://www.joqr.co.jp/tera/


月刊WiLL (ウィル) 2015年 08月号 」に連載「反撃の経済学 デフレ脱却は果たせない」が掲載されました。


 ギリシャのIMFへの返済期限が迫り、アメリカのオバマ大統領がTPA(大統領貿易促進権限)に署名し、上海株が相変わらず乱高下を繰り返しつつ下落をしていっています。


上海総合指数、一時4000割れ 4月10日以来約2カ月半ぶり
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL29HKC_Z20C15A6000000/
 29日午後の上海株式市場で、上海総合指数が下げ幅を拡大している。一時は前週末比248.170ポイント(5.92%)安の3944.703を付け、取引時間中としては4月10日以来約2カ月半ぶりに心理的な節目の4000を下回った。上海総合指数は前週までの2週間に2割近くも下落しており、相場の先行きを警戒する売りが続いている。(後略)』


 下落ぶりも激しいのですが、それ以上に凄いのがボラタリティ(変動率)で、最近の上海はドーンッと下げ、グワッと上げ、プラスを回復したと思ったら下げて終わるというのを繰り返しています。2007年10月に瞬間風速で6000ポイントに到達した後、一年後に2000ポイントを割り込んだ上海株の暴落時も、ボラタリティがド派手でございました。
 
 さて、ギリシャのチプラス首相は、昨日、地元テレビに出演し、IMFに対する15億ユーロの債務について、
銀行が窒息状態にあるのにどうやって支払えと言うのか
 と、述べました。事実上の、債務不履行宣言でございますね。


 現在、ギリシャの銀行はECBからのELA(緊急流動性支援)が止まったため、現金が枯渇しつつあります。すでに、ギリシャ国民のユーロ(現金)確保の動きは始まっており、チプラス政権は6月29日から7月6日までの銀行休業を発表しました。

 ちなみに、IMFのラガルド専務理事は、すでに本日中に返済がなかった場合、ギリシャに追加支援しないことを表明しています。すなわち、借り換えもなしという話です。


 さらに、ギリシャは7月20日にECBが保有する国債35億ユーロ分の償還(返済)も控えており、無論、現時点では返済の見込みはありません。

 すでに、焦点は7月5日の国民投票に移っています。欧州委員会のユンケル委員長は、国民投票で改革案(EU提案の緊縮財政)を否決しないよう、ギリシャ国民に訴えています。


『「ギリシャ国民投票でイエスを」、欧州委員長が改革案支持訴え
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P91DN20150629
 欧州委員会のユンケル委員長は29日、7月5日に予定されているギリシャの国民投票で改革案が否決されれば、欧州連合(EU)に背を向けることになるとして、ギリシャ国民に改革案を支持するよう訴えた。
委員長は異例の緊急会見で「ギリシャが国民投票で問われている改革案に『ノー』を突きつければ、ユーロ圏や欧州から距離を置きたいのだと世界全体が考える」と指摘。「心から愛するギリシャ国民に伝えたい。死を恐れているという理由から自殺すべきではない。国民投票では『イエス』を投じるべきだ」と述べた。(中略)

 ギリシャ政府よりも社会的に公正な提案を欧州委は行ったとし、ユーロ圏18カ国を相手にして、民主主義をふりかざしてプレーオフをするようなやり方は、ギリシャがとるべき態度ではない、と批判した。
債権団の提案は富裕層の腐敗や既得権益を打破し、社会の公正を後押しするもので「同緊縮策は愚かな内容ではない」と強調。痛みを伴う債務削減計画を受け入れたアイルランド、ポルトガル、スペインを例に挙げ、ギリシャ政府も「自らの責任を担う」時が来ていると呼びかけた。』
 
 え・・・?
 ギリシャの消費税増税(付加価値税の軽減税率撤廃)や年金削減が、なぜ「富裕層の腐敗や既得権益を打破し、社会の公正を後押しする」のでしょうか。そもそも、「債権団」の方こそが富裕層でしょうし、デフレで失業率が26%、名目GDPがすでにピークの75%に縮小しているギリシャに対し、増税や支出削減というデフレ化政策を押し付けるのは、これは明らかに格差拡大政策です。


 デフレーションが格差拡大の方向に働くのは、日本国民ならば理解できるはずです。さらに、逆累進性の強い付加価値税を増税し、年金受給者の可処分所得を減らす

 これで、なぜ「富裕層の腐敗や既得権益を打破し、社会の公正を後押しする」になるのでしょうか。というか、「富裕層の腐敗」やら「既得権益」とは、具体的に何を指しているのでしょうか。

 要するに、とりあえず、
「富裕層打破! 既得権益打破!」
 というスローガンが、いずこの国でも大衆に響き、特に所得減少でルサンチマンが貯まっている国民の心を掴んでしまうという話なのでしょう。あるいは、欧州のエスタブリッシュメントたちは、「富裕層打破! 既得権益打破!」と叫べば、国民の賛同を得ると考えている(真実は知りませんが)という話なのだと思います。


 言うまでもありませんが、ユンケル委員長をはじめとする欧州エスタブリッシュメントたちにしても、何らかの既得権を保有する富裕層でございます。(というか、既得権を保有しない人間は存在しないのです)


 また、ユンケル委員長は、EUが提示した緊縮財政案について、
年金のカットはない。財政黒字の目標も低く、愚かな緊縮策ではない。フェアな案だ
 と、またまた「え・・・?」となってしまう発言をしているのです。


 EUからギリシャへの最終提案は、

(1) 年金支出額を対GDP比で1%減らす
(2) 歳出削減のために公務員給与を減額する
(3) 電気料金などの付加価値税を増税する


 という、年金カットを含む完璧な緊縮財政でした。

 明らかに、ユンケル議長は「ウソ」をついているわけですが、ギリシャのユーロ離脱、ユーロ・グローバリズム崩壊の可能性に怯え、一種の錯乱状態になってしまったんではないかと、本気で心配してしまいます。


 それにしても、「国民投票」に際し、
平気でウソをつく
既得権益打破! などと、スローガンで煽る
 となると、最近、どこかで見たような光景に思えてしまうわけですが、現在の日本の問題が、グローバリズムという「考え方」をベースにした世界的問題であることが分かります。


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