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『ギリシャと地方創生①』三橋貴明 AJER2015.6.16

https://youtu.be/kDM_C2YUqHU

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 徳間書店「超・技術革命で世界最強となる日本 」が増刷になりました。これで三刷でございます。ありがとうございます。


 「超・技術革命」といえば、明日、チャンネル桜のお仕事で例の「粒子加速器」「国際リニアコライダー」の取材に行って参ります。放映は少し先になると思いますが、ご期待下さいませ。


 さて、現在のEU・ユーロ圏ではギリシャ問題解決のための詰めの協議が行われていますが、ギリシャのデフォルトやユーロ離脱など「些細なこと」と断言できるほど、とんでもない事態が裏で進行しています。いや、「裏」というのは日本から見ているとという話で、現地は大変な問題になっているようですが。


 すなわち、地中海難民問題です。現在、地中海南岸の北アフリカ地域(主にリビア)から、シリア難民やアフリカ難民がボートに詰め込まれ、続々とイタリアやギリシャへと渡ってきているのです。


 信じがたいかもしれませんが、2014年という一年間にイタリアにたどり着いた難民の数は、実に17万人に達します。イタリアの人口は日本の半分未満なので、我が国で言えば一年間に35万人の「言葉が通じない、文化も宗教も風習も違う異邦人」が海を越えて雪崩れ込んできたことになるわけです。


 15年に入っても地中海難民の数に衰えは見られず、6月9日時点で10万人を突破したとのことです。


地中海渡る欧州への難民、今年既に10万人以上 国連

http://www.afpbb.com/articles/-/3051255
 欧州を目指して主にアフリカから地中海を渡る難民や移民の数が今年に入って10万人を超えたと9日、国連が発表した。難民の数が急増していることに欧州は懸念を募らせているという。
 人身売買対策に取り組んでいる欧州連合(EU)諸国にとって、移民急増の問題は緊急課題で、欧州にやってくる難民の受け入れを割り当てることなどが議論されている。
 国連難民高等弁務官事務所は、今年1月以降、危険を冒して粗末な船やゴムボートなどで欧州に渡る難民と移民の数は10万3000人に達したことを明らかにした。
 今年に入ってイタリアには5万4000人の難民が到着した。国際移住機関によれば、ギリシャには今年に入って4万8000人の難民や移民が到着。さらにUNHCRによればスペインに920人、マルタに91人が到着した。』


 しかも、北アフリカの「アラブの春」以降、政府の統制が効かなくなり、各地で密航船ビジネスの「新規参入」が相次ぎ、料金の「ダンピング」も横行しています。ダンピングした業者は、元を取るために、「50人乗りの船に、500人乗せる」といった無茶苦茶をやっているのです。結果的に、地中海で沈没する船が相次いでおり、すでに今年だけで2000人が命を落としたとのことです。


 今年4月18日から翌日にかけ、リビア沖の地中海で密航船が転覆し、実に800人超の死者が出てしまったのはご記憶かと存じます。


 その後も密航船の危機は相次ぎ、最近、日本で報道された分だけでも、


5月2日・3日 イタリア沿岸警備隊が難民5800人を救助
5月28日 リビアから船で欧州に向かおうとしていた難民741人をイタリア沿岸警備隊が救助
6月6日 リビア沖で多数のボートが立ち往生し、ドイツ、イタリア、イギリス、アイルランドの艦船が難民3500人を救助
6月7日 同海域で2400人を救助


 と、想像を絶する数の人々が粗末なボートに詰め込まれ、命懸けで地中海を北へと向かい、イタリアの沿岸警備隊などに救助されているわけです。


 現在のEUのルールでは、難民は「最初に受け入れた国」が管理することになっています。すなわち、昨年のイタリアは17万人の「難民」(無論、政治的難民のみならず、経済的移民も多数いるわけです)について調査し、当座の生活の世話や社会保障の提供をしなければならないのです。難民申請の処理一つ想像するだけで、どれだけの困難に直面しているかが分かります。


 イタリアやギリシャが悲鳴を上げた結果、欧州委員会は各加盟国が不法移民や難民について「GDPに応じて一定数を引き受ける」ことが検討されています。


 上記提案に賛成しているのが、もちろんイタリアとギリシャ、さらにドイツとスウェーデン(おいっ!と思いました)。反対派がフランス、スペイン、イギリス、ポーランドなどになります。


 さらに、最近、セルビア国境にフェンスを築くことを発表するなど、反移民の色を強めているハンガリーは、難民を基本的に受け入れなければならないEU規則の停止を発表しました。


急増する難民受け入れ制限=EU規則停止-ハンガリー
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2015062400074
 ハンガリー政府は23日、押し寄せる難民に対処し切れないとして、難民の申請処理を定めた欧州連合(EU)の規則の適用を停止し、難民受け入れを制限すると発表した。

 政府は声明で「ハンガリーの難民(対応の)制度は過重な負担を受けている。既に能力を超えた」と訴えた。停止したのは、難民が最初に入った国に保護申請処理を義務付けたEU規則。ハンガリー政府は同国に到着した後、周辺国へ渡った難民をハンガリーに送還しないよう、各国に求めた。』


 改めて考えると、皮肉な話です。アラブの春で北アフリカの独裁政権が倒れたとき、西側諸国は「民主主義の勝利」と祝杯を上げたわけでございます。


 結果的に、各国が事実上の無政府状態に陥り、難民や経済的移民が続々と「ヨーロッパ」を目指し始めたのです。事態を冷徹に見つめたとき、北アフリカ諸国の政権が独裁的だったからこそ、ヨーロッパが地中海難民から「守られていた」という現実が理解できるはずです。


 念のため、独裁政権の善悪を論じているのではありません。現実的に「そうだった」と書いているだけです。


 イタリアやギリシャは、EU加盟国が早期に「不法移民の各国受け入れ」で合意しない限り「ギブアップ」するでしょう。すなわち、難民・移民を管理せずに、「他の国」に押し付けようとするでしょう。


 残りのEU諸国は「それだけは、勘弁して欲しい」でしょうが、一部の諸国を除き、「巻き込まれるのも嫌」というのが正直なところでしょう。


 さて、例えば中国なり北朝鮮なりが政治的混乱に陥り、数千、数万、数十万の難民(もしくは経済的移民)が我が国にボートで押し寄せたとき、一体我々はどうしたらいいのでしょうか。難民受け入れ以前に、安倍政権は「人手不足」を理由に外国移民を増やそうとしています。


 移民問題や難民問題で先行する欧州の失敗から何も学ばなかった場合、将来の日本国民は我々を「愚者」として認定すること確実だと思うのです。


「移民問題や難民問題で先行する欧州の失敗に学ぼう」に、ご賛同頂ける方は、

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