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『視聴者からの質問に答えて(プライマリーバランスについて)①』三橋貴明 AJER2015.6.9(11)

https://youtu.be/JRE39dg0-eA

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 本日はチャンネル桜「報道ワイド日本ウィークエンド」に出演します。

http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1521

 予想通りとはいえ、4月の実質賃金が下方修正されました。確報値ではパート労働者の数字が入ってくるため、下方修正は予想していましたが、+0.1%から-0.1%にまで落ち込むとは思っていませんでした(0%だと予想していました)。


4月の実質賃金、確報は0.1%減 速報から下方修正
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS18H0E_Y5A610C1EAF000/
 厚生労働省が18日発表した4月の毎月勤労統計調査(確報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月に比べ0.1%減った。速報値では2年ぶりのプラスだったが、確報値では正社員に比べ収入の少ないパート労働者の比率が高まる。賃金の伸びが低くなり、24カ月連続のマイナスになった。
 調査は5人以上の事業所が対象。実質賃金は名目の賃金指数を消費者物価指数(CPI)で割って算出する。前年同月を上回っていれば、物価上昇を超えるペースで収入が増えていることを示す。2日に発表した速報値は0.1%のプラスだった。
 下方修正は賃金の伸びが鈍化したためだ。確報値では従業員1人当たりの現金給与総額が平均27万3873円で0.7%増だった。速報値に比べ0.2ポイント下がった。』


 もっとも、実質賃金がプラスになるにせよ、マイナスになるにせよ、肝心の物価上昇率が低迷してきている(4月はゼロ)のでは意味がありません。デフレ脱却のゴールは、あくまで、
物価が継続的に上昇しているが、それ以上に名目賃金が上がり、実質賃金がプラス化する=国民が豊かになる
 でございます。


 安倍政権は14年度以降に緊縮財政を実施することで、二年間かけて、
「物価上昇分、実質賃金が下がり、その後は物価上昇率の低下分、実質賃金のマイナスが縮小する」
 という、行って帰ってをやったことになります。二年間かけて、野田政権期の「物価も実質賃金も低迷」状態に逆戻りです。


 結局、「デフレは貨幣現象」という間違った認識が、二年間の「行って帰る」をもたらしたことになります。デフレが「総需要の不足」であると理解しさえいれば、14年度以降の緊縮財政はなかった「かも」知れません。


 あるいは、緊縮財政で需要を抑制しても、金融緩和による円安で実質の輸出が増え、名目賃金の伸びが加速し、実質賃金がプラス化する「かも」と思っていたのかも知れません。とはいえ、現実には日本の実質輸出は伸びていません


5月の実質輸出は前月比-5.0%、実質輸入は-3.4%=日銀
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0OX0G620150617
 日銀は17日、財務省が公表した2015年5月の貿易統計を受け、実質輸出入速報値(季節調整済み)を発表した。
実質輸出は前月比5.0%低下、3カ月ぶりの低下。
実質輸入は前月比3.4%の低下。2カ月ぶりの低下。(後略)』


 というわけで、例により実質輸出と対ドルの為替レートをグラフ化してみましょう。


【日本の実質輸出と対ドル為替レートの推移】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#Exporate


 相変わらず、日本の実質輸出はリーマンショック前の水準を取り戻すどころか、東日本大震災前を下回っています。為替レートは2007年頃の水準に戻ったにも関わらず、実質輸出は86%程度でしかないのです。


 すなわち、在の世界は「需要が不足」しているのでございます。そもそも需要が拡大していない「グローバル市場」という環境下において、為替レートを引き下げたところで、実質の輸出は「実質賃金を引き上げるほど」には伸びないのです。

 逆に、リーマンショック前までの実質輸出の伸びは、こちらは驚異的です。アメリカの不動産バブルという「需要」が存在し、為替レートも円安基調だった結果、実質輸出は02年4月から08年1月まで、何と1.7倍になったのです。


 これほど巨大な需要拡大があれば、日本の名目GDPと税収が増え、昨日のグラフの通りプライマリーバランスが改善して当然でございます。


 残念ながら、08年までの世界的な需要拡大期は、暫くは訪れそうにありません。むしろ、○○危機が欧州や支那大陸で勃発しそうな状況になっています。


 そうである以上、政府が自ら「内需」を拡大することでデフレ脱却や実質賃金の引き上げを目指さなければ、我が国の国民の貧困化は終わりません。「良くて」野田政権期のように、物価と実質賃金がゼロ近辺で推移し続ける「低迷」か、最悪、物価が下落基調に戻り、それ以上のペースで名目賃金が下がることで実質賃金が低迷する状況に舞い戻ってしまいます。


 国民の「貧困化」を問題視するならば、政府は「需要創出」という正しい経済政策に舵を切り直すしかないのです。

 

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