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『経済力の正体①』三橋貴明 AJER2015.4.21(7)

https://youtu.be/gWHDwLEE4fs
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一般参加可能な講演会

5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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 本日から夕刊フジで「断末魔の中韓経済」の連載が始まります。短期集中連載でございます。


4月マネタリーベース、300兆円の大台突破=日銀
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NS00T20150507
 日銀が7日発表した市中の現金と金融機関の手元資金を示す日銀当座預金残高の合計であるマネタリーベース(資金供給量)の4月末の残高は305兆8771億円となり、9カ月連続で過去最高を更新し、初めて300兆円の大台を突破した。
 日銀は昨年10月末の追加緩和で、マネタリーベースの年間増加額を60─70兆円から約80兆円に拡大しており、ほぼ目標に沿ったペースで増加している。
 4月中のマネタリーベースの平均残高は、前年比35.2%増の300兆3275億円と平残ベースでも過去最高を更新。マネタリーベースの構成要因ごとの月中平均残高は、金融機関の手元資金を示す当座預金が前年比56.8%増の206兆1602億円と過去最高。紙幣は同4.1%増の89兆5381億円、貨幣は同0.8%増の4兆6292億円だった。』


 現在、日本銀行がマネタリーベースの拡大を継続しているにも関わらず、マネーストックが十分に伸びず、貨幣乗数が異常な水準にまで低迷しています
 というわけで、改めて用語の復習です。


マネタリーベース:日本銀行券(現金紙幣)と貨幣(硬貨)の流通高及び日銀当座預金残高の合計値
マネーストック:金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」を示す統計で、具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(=金融機関・中央政府以外の経済主体)が保有する通貨量の残高。

 三橋は、マネーストックとして最も一般的なM2(現金通貨+国内銀行等に預けられた預金)を使用しています。銀行が民間企業や家計などに貸出しを行うと、マネーストックは増加し、世の中に出回っている通貨量が増えることになります。
貨幣乗数:マネーストックをマネタリーベースで割ったもの。


 日本銀行が主体的にコントロールすることが可能なのはマネタリーベースのみで、マネーストックは市場におけるおカネの貸し借りで決定されます。


【日本のマネタリーベース、マネーストック(左軸)と貨幣乗数(右軸) 】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#Kjosu


 マネタリーベースの中で最大の割合を占める日銀当座預金は、記事にもある通り206兆1602億円に達しています。そもそも、日銀当座預金とは、銀行が日銀に預けることを義務付けられている準備預金です。


 より分かりやすい書き方をすると、銀行は自らの預金の一定割合を、日銀に当座預金として預けることを義務付けられているのです。現在、預金準備率の中で最も%が高いのが、「その他預金 2兆5千億円超」の1.3%です。当座預金残高が200兆円超ということは、国内の金融機関は少なくとも1.5京円の預金を貸し借りして構わないということになります。奇想天外な金額でございますね。


 実際には、国内金融機関は図の通り900兆円程度しか預金を貸し借りしていませんので、貨幣乗数が「3」という(日本としては)前代未聞の低水準に落ち込んでしまっているわけです。

 現在の日本と、全く同じ状況に陥っていた国が、過去に一つだけあります


 「三橋貴明の「新」日本経済新聞」 の執筆者のお一人である島倉原氏が、先日、「積極財政宣言: なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか 」を新評論から刊行されました。


 本書は、「デフレーション」「大恐慌」「期待インフレ理論やマンデルフレミングモデルの過ち」「財政政策の有効性」などについて、網羅的に書かれた良書であり、是非、ご一読頂きたい一冊なのでございますが、本書において島倉氏が大恐慌期のアメリカの貨幣乗数について解説されています。


 アメリカの貨幣乗数は1929年(大恐慌勃発時)は7倍弱だったのが、1939年には3を切りました。同じ時期、マネタリーベースは何と七倍にも増えたのです。それにもかかわらず、マネーストックは3.5倍にも達しませんでした。結果、貨幣乗数が急落したのです。


 要するに、金融当局がおカネを発行する(マネタリーベースを拡大する)だけでは、デフレ期には銀行からの貸出は充分には増えないのです。何しろ、現在の日本の金融機関は1京円(!)を超すおカネを貸し借りすることが可能であるにも関わらず、現実には900兆円のM2でしかありません。


 なぜでしょうか。もちろん、デフレで国内の需要が伸びないため、民間が十分におカネを借りようとしないためです。


「銀行側が貸したい(=日銀当座預金が充分)」
「金利が超低迷している」

 状況であっても、国内の「仕事」「需要」「市場」が充分になければ、我々経営者はおカネを借りてまで投資しようとは思わないのです。なぜなら、儲からないためです


 経営者であれば、わたくしの言っていることを理解してくれると思うのですが、なぜか経済学者や官僚、政治家は理解しようとしません。結果、デフレ対策が日銀に丸投げされ、政府は新規発行国債の削減という愚かな道を進んでいます。


 政府がおカネを借りず、誰が借りるというのでしょうか。ちなみに、大恐慌期のアメリカにおける貨幣乗数の異常な低下を食い止めたのは、アメリカ政府の国債発行でした。政府が国債を発行し、ニューディール政策をはじめとする財政政策を実施し、ようやく民間企業もおカネを借りる気になったのです。


 貨幣乗数が3を切ろうとしている状況は、日本政府に「積極財政を実施せよ」と経済の神様が要求しているに等しいのですよ、安倍総理。


「過去の事例に倣い積極的な財政政策を!」に、ご賛同下さる方は、

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