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『経済力の正体①』三橋貴明 AJER2015.4.21(7)

https://youtu.be/gWHDwLEE4fs
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一般参加可能な講演会

5月9日(土) 熊本市国際交流会館 18時00分より三橋貴明講演「日本と台湾の明るい未来を築くためには
5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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   ゴールデンウィーク明けから広島、熊本と出張の連続で、いきなりエンジン全開です。まあ、連休中も結局はテレビ収録などの仕事が入ってしまい、休んでいないのですが。


 イギリス総選挙は、本日(日本時間)午後3時から始まり、即日開票されることになります。

 さて、昨日も書きましたが、デモクラシーの語源はギリシャ語のデモクラティア、「デーモス(民衆)」による「クラティア(支配)」です。ポイントは「クラティア」という言葉で、元々は征服するという言葉「クラテイン」からきています。


 デモクラシーという言葉は、「人民の、人民による、人民のための政治」というよりは、
民衆が敵対する支配層を征服し、自らの支配を確立した
 という意味を持つのでございます。日本の十七条憲法とは異なり、欧州発の「民主主義」は攻撃的なのです。


 わたくしは民主主義(民主制)を支持する者ですが、別に「民主主義は常に善」などと思っているわけではありません。特に、09年の総選挙で民主党政権を誕生させてしまった日本国民は、「民主主義の怖さ」にかなりの割合で気が付いているのではないかと思いますし、気が付くべきです。


 まあ、他に巧い手もないわけで・・・・。という感じで、わたくしは民主主義を支持しているに過ぎず、現在の安倍政権による構造改革の手法、すなわち産業競争力会議や規制改革会議の「民間人(民間議員ではありません)」たちが、政治力をふるって「自分(あるいは自社)の利益になる制度」を構築しようとする手法は、典型的なレント・シーキングであり、民主主義のプロセスを無視している。と、猛烈に批判を展開し、「民主的」に選ばれた国会議員たちに刷り込みを繰り返しているため、さぞや恨まれていることでしょう。


 とはいえ、それでもわたくしは「民主主義は常に善」と思っているわけではないのでございます。


「大阪都」異なる目算 賛成派「効果2700億円」/反対派は「1億円」
http://www.asahi.com/articles/DA3S11740311.html
 大阪市をなくして五つの特別区を設けるいわゆる「大阪都構想」の財政効果は、どれくらいか――。賛成派は「2700億円」の財源が生まれるとアピールし、反対派は「1億円」にすぎないと反論。17日の住民投票に向け、まったく異なる数字が飛び交っている。(後略)』


 住民投票で政令指定都市である大阪市が解体されると、旧大阪市は特別区に分解され、さらに新庁舎建設やシステム改修のために、最低、600億円のコストがかかります。大阪市解体構想推進派は、コストを差し引いても17年から17年間で2762億円の額が積み上がると主張しています。


 一方で、大阪市解体に反対する自民党の大阪府連などは、効果はわずか1億円であると主張。根拠は、13年に大阪市都市整備局が法定協議会で示した資料が根拠になっています。推進派が主張する施設の統合や、事業の民営化は、
「別に、都構想がなくても実施できる」
 と、効果額から省き、事務所や業務を府と区が共有することによる予算削減に限定したものです。実際、施設統合などは府と市が連携することで、13年度中に実施済みとなっているようです。


 いずれにせよ、政令指定都市を解体するということは、住民の自治権を制限するということになります。藤井聡先生は、【『大阪都構想』の危険性に関する学者所見】
http://satoshi-fujii.com/scholarviews/
 に公開されています。すでに、100名以上の学者の皆様が、【懸念点】を専門的に表明、解説しています。

 専門家の先生方の所見は、わたくし共と基本的には同じです。特に、今回のエントリーと関係が深い、大阪経済大学の柏原誠准教授の【懸念点】をご紹介いたしましょう。


『柏原 誠 (大阪経済大学・准教授) 政治学・地方自治
 大阪市を廃止し5つの特別区に分割するということは,市民として存在をなくすことを自ら決定するわけだから,自治体・市民にとって文字通り究極かつ,結論によっては最終の決断になる。さらに,有権者は大規模で,拘束力があり,実質的に不可逆な決定は,未来世代も拘束し,特別区移行手続きでは隣接市の意思決定過程にも影響をするきわめて重大な決定が課せられている。一方,振り返ってみれば,これは,市議会での審議の末,一旦は議会が否決したものを,大阪市内外の政治の動きによって住民投票を実施することになったものであり,議会の役割を改めて問う必要が生じるとともに,市民にこの問題の分かりにくさを一層感じさせ,大きな負荷をかけることとなった。
 他方,市民の疑問を解消し,質の高い市民意思の表明のための条件となるべき住民説明会は,「催眠商法」と揶揄されるほど,賛成誘導に偏した,法の規定にある「わかりやすい説明」とはほど遠い内容のものとなっている。そもそも,特別区協定書に書かれた内容は,自治体の再編成と権限・財源・資産・負債の再配分であり,市民の関心である公共政策や市民生活への影響についての情報はほとんど含まれていない。
 これらの状況から5月17日の投票については,その賛否の結果のもつ効果は等しいものではなく,賛成の結論が出た場合にはるかに重大な効果を持ちうることに鑑みて,対案やその後の議論を考える時間を生み出し,より高い水準の市民的合意を得るためには、本投票で特別区設置が否決されることが合理的であると考えざるを得ない。』


 民主主義は、万能ではありません。安倍政権の構造改革派のように、民主的なプロセスを無視するのは問題です。とはいえ、全てを直接民主主義(住民投票など)に委ね、住民を煽り、賛成に誘導する催眠商法的なプロパガンダを展開し、反対派を黙らせるためにメディアに圧力をかけ、さらに反対派を誹謗中傷することで「黙らせる」ことは、全体主義そのものであり、より深刻な問題を秘めています


 現在の大阪都構想と称する大阪市解体構想の推進派の政治家たちのやり方は、まさに「全体主義」的であり、健全な民主主義でも何でもありません。


 十分な議論(「討論」ではありません)なしで、必要な情報を与えられることなく、住民投票で大阪市を解体してしまった大阪市民たちは、より過激に自分の判断を信奉し、反対派への攻撃を始めるでしょう。やがて、反対がウンザリして黙り込むと、世界屈指の大都市である大阪市は「民主主義」により没落を始めることになります。まさに、全体主義による破滅のプロセスそのままです。


 柏原准教授の仰る通り、大阪市解体構想の住民投票への「反対票」は、現状変更に対して意味を持ちませんが、「賛成票」はあまりにも巨大な影響を与えます。まさに「賛否の結果のもつ効果は等しくない」わけで、これほどまでに効果に開きがある政策を、住民投票一本で決めてしまうなど、乱暴を通り越し、むしろ非民主的ですらあります


 何度か書きましたが、わたくしは日本国民が構造改革なり、TPPなり、あるいは大阪市解体なりについて、「有権者として情報を正しく認識し、民主的なプロセスで決定した」のであれば、甘んじてそれに従う覚悟があります。とはいえ、有権者に十分な情報を与えず、
「はい、住民投票」
「はい、賛成多数」
 などとやるのは、民主主義でも何でもないという事実を知って欲しいのです。


 5月17日の大阪市解体の是非を問う住民投票において、投票に臨む大阪市民の皆様に、是非とも改めて「デモクラシー」について考えて頂きたく、本日のエントリーで取り上げました。


「全体主義的な大阪市解体構想に反対する」に、ご賛同下さる方は、このリンクをクリックを!
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