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『経済力の正体①』三橋貴明 AJER2015.4.21(7)

https://youtu.be/gWHDwLEE4fs
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一般参加可能な講演会

5月9日(土) 熊本市国際交流会館 18時00分より三橋貴明講演「日本と台湾の明るい未来を築くためには
5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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さて、三橋経済塾の塾生で青木泰樹先生の講義を聞かれた方はご理解されていると思いますが、「おカネの移動の自由」すなわり資本移動の自由というグローバリズムが実現した世界では、利益(所得)の移転が行われることになります


図 グローバリズムにおける所得の移転】


A:先進国の労働者の所得
B:後発国の労働者の所得


 図の通り、先進国Aから後発国Bに工場が移転されたとします。グローバルスタンダードの世界では、A国で生産しても、B国で生産しても、同じ品質の製品が生産されます。

 なぜ、企業が資本(工場)をA国からB国に移したかといえば、もちろん資本利益の最大化のためです。企業の経営者や投資家は、常に資本の最大化を求めており、これを否定することは困難です。


 問題は、資本利益最大化の「方法」になります。

 本来、資本利益を増やしたいのであれば、設備投資、人材投資、技術開発投資により生産性を向上させなければなりません。つまりは、工場は先進国Aに置いたまま、働く生産者の生産性を(質的な意味含め)高めることで粗利益を増やし(企業会計上、粗利益と付加価値はほぼ同じになります)、最終利益を高めることで資本利益を増大させるのです。


 特に、国境を越えた資本移動の自由が制限されている場合、資本利益を最大化する方法は、上記の三投資(あるいは政府の公共投資)による生産性向上以外に、ほとんど手段が存在しません。

 ところが、グローバリズムの下で資本移動の自由化が進むと、
「なぜ、わざわざリスクがある設備投資、人材投資、技術開発投資などしなければならないのだ。投資をしたところで、利益が増えるとは限ったものではない。国内で投資をするよりも、外国に生産拠点を移してしまえば、利益は増えるではないか」
 という話になってしまい、株主からの「利益最大化」圧力を受ける企業経営者は、外国へと工場を移転していきます。


 企業が先進国Aから後発国Bに工場を移すと、
先進国Aの労働者が所得を得られなくなり、損をする
後発国Bの労働者が所得を得られるようになり、得をする
 という現象が発生します。


 とはいえ、後発国Bの人件費は先進国Aよりも低いので、そこに「P」という「資本移転による利益」が発生することになるのです。

 ここが最重要ポイントですが、資本移転により発生した利益「P」は、図の通り、投資家、企業経営者、金融業者、そして「消費者」に分配されることになります。消費者への分配とは何を意味しているかといえば、もちろん、
「安く買える」
 という意味になります。


 グローバリズムに基づく資本移動の自由化は、企業経営者や投資家はもちろんのこと、消費者にも「表面的には」利益をもたらすのです。だからこそ、厄介なのです。

 ところで、国内に複数の企業が存在し、価格競争を繰り広げていたとします。ある企業が外国に工場を移し、消費者に「安く売る」形で利益を分配すると、競合相手も追随せざるを得ません。何しろ「グローバルスタンダード」の世界なので、自分だけが「国内の雇用を維持する」などとやっていると、競争に負けます。経営者は株主からは「利益を増やせ! 倒産したいのか!」という圧力を受けます。

 結果的に、特定分野の企業のほとんどが資本を外国に移転させてしまい、国内の消費者は「安く買える」という便益を受けることになるわけです。国内の雇用が喪失し、生産者が所得を稼ぐことが困難になるという代償と引き換えに。

 一昨日、昨日のエントリーでお分かり頂けたと思いますが、国内でやたら「消費者利益」を重視する人は、意識してか、しないでか、グローバリズムの促進をしていることになります。何しろ、資本移動というグローバリズムが進展すると、消費者利益は高まるのです。


 結局、極端に「消費者利益」を重要視する現代の日本の風潮も、グローバリズムの一環なのではないかと考えているわけでございます。


 もちろん、投資家や経営者が資本利益最大化を目指すことは、資本主義としては当然です。また、グローバリズムに基づく資本移動の自由を「全面禁止にするべき」と言いたいわけではありません。

 さらに言えば、
「生産者利益の方が、消費者利益よりも常に重要」
 などといいたいわけでもありません。物事は、全ては「バランス」という話です


 現在の日本は、デフレで需要が抑制されている以上、
消費者利益から、生産者利益の方に少しバランスを傾けるべき
国内の生産者の所得が抑制されないように、グローバリズムを制限するべき
 と主張しているわけでございますが、この手のことを書くと、即座に「鎖国しろと言うのか!」「消費者利益はどうでもいいというのか!」などと、極論ヒステリーで反論してくる「おバカさん」が日本には数多存在ます。

 落ち着きましょう。

 現在の日本における、「国内の」生産者利益が極端に抑圧され、消費者利益が賛美され、所得が外国の労働者、投資家などに移転されるグローバリズムが、本当に国民経済として正しいのでしょうか。そう思う人もいるでしょう。


 とはいえ、わたくしはそうは思いません。というわけで、日本がデフレである以上、反発覚悟で、
「消費者利益から、生産者利益の方に少しバランスを傾けるべき」
 と、主張していくつもりなのでございます。


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