狂った羅針盤の恐怖

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『経済力の正体①』三橋貴明 AJER2015.4.21(7)

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5月9日(土) 熊本市国際交流会館 18時00分より三橋貴明講演「日本と台湾の明るい未来を築くためには
5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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 さて、2013年3月に黒田日銀が発足し、
「2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に消費者物価(CPI)の上昇率2%を達成する」
 という、二年後2%のインフレ目標政策が始まり、実際に二年が経過しました。結果は、日銀のインフレ目標であるコアCPIが、対前年比0%。日銀のインフレ目標は、達成できませんでした。


 昨日、黒田日銀総裁が会見し、事実上、2年でのインフレ目標達成断念を表明しました。


日銀、2年での達成を事実上断念、追加見送りで後手に回る公算
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NNMB246JIJV101.html
 日本銀行の黒田東彦総裁はこれまでこだわってきた2年程度での物価目標の達成を事実上断念した。しかし、追加緩和は見送り、株式市場はこれを失望して大幅安になった。市場の期待に先手を打ってきた黒田日銀だが、後手に回るリスクも指摘されている。
 黒田総裁は30日の会見で、「確かに2015年度を中心とする期間から、16年度前半ごろと、若干2%程度に達する見込みが後ずれしているのは事実だが、物価の基調は着実に改善しているし、今後とも改善が続く見通しなので、今の段階で何か追加的な緩和は必要ない」と述べた。
 その前に公表された経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、15年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通し(政策委員の中央値)を従来の1%上昇から0.8%上昇に下方修正。2%程度に達するのは「16年度前半ごろ」として、従来の「15年度を中心とする期間」から後ずれさせた。
 黒田総裁はこれまで、コアCPI前年比は「15年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高い」と主張。13年4月に2%の物価目標を「2年程度」の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現すると宣言して以来、こうした見通しは変わっていないと言い続けてきたが、2年が過ぎたこの日、とうとう目標達成期限の先送りを余儀なくされた。(後略)』


「確かに2015年度を中心とする期間から、16年度前半ごろと、若干2%程度に達する見込みが後ずれしているのは事実だが、物価の基調は着実に改善しているし、今後とも改善が続く見通しなので、今の段階で何か追加的な緩和は必要ない」


 一般人にはわけが分からないでしょうが、「物価の基調」とは、要は「デフレギャップ(需給ギャップのマイナス)」が縮小してきているので、物価は上昇基調の「はず」という、日銀理論です。


 日本銀行は4月9日の金融経済月報で、14年10-12月期の需給ギャップについて「対GDP比マイナス0.1%」と発表。デフレギャップがほぼ解消したと「表明」しました。


 ちなみに、内閣府試算の需給ギャップは、14年10-12月期は対GDP比マイナス2.3%であり、金額にして約12兆円のデフレギャップ状態にあることになっています。日銀は、雇用情勢や設備の稼働状況など、改善が反映されやすい指標で需給ギャップを推計するため、インフレギャップの方向に傾きやすいのです。


 内閣府はGDPから需給ギャップを計算していますが、いずれにせよ、
最大概念の潜在GDPではなく、過去の長期トレンドに基づく平均概念の潜在GDP
 で、需給ギャップを計算しているため、小さ目な数値が出ていることに変わりはありません。

 しかも、日銀の言う「雇用情勢」も、過去の長期トレンドに基づいているため、98年のデフレ深刻化以降の失業率も「平均」計算時に参入してしまい、
潜在GDPの失業率(過去の長期トレンド)が、デフレ期には次第に上昇してくる
 という、致命的な欠陥を持っています。


【日本の完全失業率と過去三十年の平均失業率(単位:%) 】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_49.html#sizen


 それにも関わらず、日銀は過去の長期トレンドに基づき、現在は「完全雇用」状態であり、デフレギャップがほぼ解消したと判断しているのです。内閣府の方は、まだしもマシですが、いずれにせよ平均概念の潜在GDPで需給ギャップをはじき出していることに変わりはありません。


 以前から、わたくしや青木泰樹先生が、幾度となく「最大概念の潜在GDPと平均概念の潜在GDP」の問題を取り上げ、恐らく多くの読者の皆様は、
「何を細かいことを・・・・」
 と、思われたのではないかと思いますが、現実の日本経済に「二つの潜在GDPの問題」が大きくのしかかってきているわけです。

 日本銀行は「デフレギャップは解消した」と判断しているため(あるいは「判断したふりをしている」)、金融政策の更なる緩和には踏み込まないでしょう。何しろ、「物価は上昇基調」と、総裁自ら断言しているのです。

 結果、現実のコアCPIと、日本銀行の「強弁」の乖離が開いていき、しかも日本政府は日銀の「物価は上昇基調」に基づき、財政政策の拡大に乗り出さないでしょう。結局、2015年は日本が「再デフレ化した」年として記憶される可能性が高まっていると考えます。


 それにしても、「平均概念の潜在GDP」は、日銀方式にせよ、内閣府方式にせよ、日本政府に「本格的なデフレ対策を打たせない」狂った羅針盤として、見事に機能してしまっています。97年以降、特に平均概念の潜在GDPを採用した竹中平蔵氏が大臣に就任した頃から、我が国には様々な「デフレ長期化の仕掛け」が組み込まれてきたことが改めて理解でき、ゾッとするものを禁じ得ないのでございます。


 政府は早急に「狂った羅針盤」を破棄し、正しいデフレ対策を打たなければなりません。というわけで、ややこしい話ですが、三橋は政治家に「二つの潜在GDP」を始めとする狂った羅針盤の異常性を説明していっているわけでございます。


「日本政府は狂った羅針盤を破棄せよ!」にご賛同下さる方は、 このリンクをクリックを!
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