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『実質賃金を引き上げる方法①』三橋貴明 AJER2015.3.17
https://youtu.be/54A1iQdY8Zs
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一般参加可能な講演会
5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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  さて、まずは二つの事実を明確にしておきたいと思います。


 中央銀行は「おカネの行き先」を管理できません。量的緩和で金利を引き下げ、流動性が上がったとして、そのおカネが「どこに貸し付けられるのか」、あるいは「そもそも貸し出しに回るのか」は管理不可能なのです。


 無論、日銀当座預金にマイナス金利をかければ、「そもそも貸し出しに回るのか」は解決します。とはいえ、やはり「どこに貸し付けられるのか」は分かりません。

 二つ目は、デフレとはマクロ的には総需要の不足。つまりは、名目GDP(支出面)の不足という経済現象であるということです。名目GDPは、「民間最終消費支出」「政府最終消費支出」「民間住宅」「民間企業設備」「公的固定資本形成」「在庫変動」そして「純輸出」の合計です。

 日本銀行が直接的に上記の「需要」を増やすことはできません。日銀の金融政策から需要創出への「ルート」は、主に二つ予想できます。


一.金融政策で株価が上昇することにより、消費が拡大する「かも知れない」という、いわゆる資産効果


二.金融政策で日本円の為替レートが下がることによる、輸出、特に実質輸出の拡大


 一については、何しろ「消費税増税」という、消費需要を叩き潰す政策を実施してしまったため、現時点では確認されていません(消費はむしろ減っています)。日経平均は終値で2万円を超えてくるでしょうが、政府自ら「消費抑制策」を実施している以上、日本の総需要不足を補うほど消費需要が増えるとは到底、思えません。


 というわけで、政府は(明言は決してしないでしょうが)「二」の実質輸出の拡大に期待していたのでしょう

 ところが、現実には実質輸出は期待されたほど増えていません


【日本の実質輸出と対ドル為替レートの推移】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#JYJPY


 図の通り、民主党政権末期に比べると大幅な円安になったにも関わらず、実質輸出は思ったほど増えていません。

 2015年1月「のみ」、なぜかリーマンショック前の水準に回復したのですが、その後は大きく下落。直近では、リーマンショック前はもちろん、東日本大震災前の水準をすら下回ってしまっています

 なぜなのでしょうか。


焦点:設備投資に慎重な日本の製造業、アベノミクス期待に応えず
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MZ0O620150408/?sp=true
(前略)<不透明な事業環境、大胆になれず>
 ダイキン滋賀製作所が推進する「大型投資なき生産増強」。それが今、日本企業の中で大きな流れになりつつある。設備投資の拡大は安倍政権が押し進めるアベノミクス成長戦略の目標の一つ。しかし、政権側の期待とは裏腹に、企業側は不透明な事業環境を理由に工場への新規投資には慎重だ。
 財務省の法人企業統計によると、日本企業の経常利益はリーマンショック前の07年度から直近の13年度にかけて11.1%増え、過去最大の59.6兆円に達した。アベノミクスによる円安や景気拡大の恩恵を受け、株価も反発し、日本の企業(3月期決算の上場企業)の手元資金は87兆円と豊富な投資余力が蓄えられている。
 しかし、企業の資金力増大が日本国内での生産拡大などの積極的な設備投資につながる気配は見えていない。とりわけ、中小企業は消極姿勢だ。
 日銀が1日発表した3月短観(企業短期経済観測調査)によると、中小製造業による設備投資は、14年度の前年度比6.2%増から一転、15年度は14.3%減になる見通し。ダイキンのような大企業製造業は5.0%増を計画しているものの、日本企業全体での設備投資はリーマンショック前の07年の水準を10%下回っている。(中略)

<政権の要請に事実上の拒否>
 安倍晋三首相が推し進める日本再生策が機能するためには、国内経済が停滞とデフレの数十年から抜け出し、企業が進んで新規投資を続ける必要がある。しかし、多くのエコノミストは、安倍首相の就任から2年以上が経った今も、企業側は政権の要請を拒否し続けていると指摘する。
「政府や日銀は金融緩和をすれば設備投資はかなり押し上げられるという見込みを持っていたのだろうが、(その読みは)狂ったと思う」とニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は話す。金利に加え、設備投資を決めるもう一つの要素である期待成長率が抑制の要因として強く効いているからだ
「実質金利自体は金融緩和で下げられたが、それによる押し上げ効果は当初考えられたほどでなく、期待成長率が上がっていないということの方が大きい」と斎藤氏はみる。
 日本製造業の生産戦略に大きな影響を与えるトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)。ダイキンにも生産指導を行っている同社は今年3月下旬、5年をかけて自動車の生産工程を抜本的に見直し、その成果や新しい生産技術を報道陣に披露した。(中略)
 日本企業が設備投資の拡大に慎重な姿勢を取り続ける中で、安倍政権がその流れを崩すことはかなり難しい、と伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は話す。安倍政権では規制緩和や産業振興策を進めているが、そのペースは遅い。ほとんどの日本企業は国外に成長を見い出しており、基本的に需要地に近いところでの現地生産を進めている。

 企業がいったん行った投資を回収するまでには5年、10年が必要だ。武田氏は「今後5年、10年先でも円高には戻らないという確信が持てないと、なかなか(設備投資は)やりづらい」と指摘する。「日本企業はリーマンショック後の円高で相当にダメージを受けてきた。それを考えると、思い切った投資に踏み切るのは簡単ではないだろう」。』


 これだけ大幅な円安になったにも関わらず、企業、特に中小企業は設備投資を増やしていません。大企業にしても、今後、リーマンショック期のような円高や世界的な需要縮小がないと「誰も保証できない」不安定な環境下では、国内に大々的な設備を打つ気にはなれないででしょう。


 しかも、大企業が対外直接投資を増やしているのは、別に「為替対策」には限りません。市場(需要)に近い場所で生産するというコンセプトに基づき、対外直接投資を実施しているのです。
 さらに、小泉政権期とは異なり、アメリカの不動産バブルという「最後の買い手」がいるわけではないのです。ユーロ圏は確実にデフレ化しており、新興経済諸国の需要も停滞気味です。


 需要が拡大していない以上、為替レートと無関係に日本の実質輸出は増えません。


 というわけで、単純に「円安になれば、日本の実質輸出が増える」という構図は成り立たなくなってきているのです。実質輸出が増えないとは、国内の実質の「生産」、つまりはGDPが増えないという話になるため、デフレ脱却の「蓋」になります。


 もちろん、企業の設備投資も需要の一部です。


 当たり前ですが、円安が続いても「企業が全く戻ってこない」などと、極論を言う気はありません(頭が悪い人はすぐに極論を言うので、面倒臭いです)。それは、生産拠点を戻す企業もあるでしょう。


 問題は、「日本の需要不足を埋めるに十分か、不十分か」という話であり、不十分であるというのが現状なのです。

 結局、デフレ期(特にグローバリゼーションが進んだデフレ期)には、「政府」が本気で需要創出しなき限り、永遠にデフレと停滞の輪から抜けられないのだと思います。


本日の結論に、納得して下さった方は、

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