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『実質賃金を引き上げる方法①』三橋貴明 AJER2015.3.17
https://youtu.be/54A1iQdY8Zs
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一般参加可能な講演会
5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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本日から金曜日までの〆切(単行本除く)。週刊アサヒ芸能、週刊実話、不動産経済研究所、月刊三橋、まぐまぐ、政経電論、言志、月刊エネルギーフォーラム、経済動向塾定期レポート。プラス、徳間書店の単行本の〆切。
うん。人間には無理ですな(遠い目)。
明日は文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/
さて、2011年2月にビジネス社から刊行した「デフレ時代の富国論
」の後半で、現内閣官房参与、京都大学大学院教授である藤井聡先生と対談しております。その少し前に、藤井先生と知り合ったのでございます(思えば遠くへ来たもんだ、って感じでございますね)。
対談において、藤井先生が
「おカネというのは、結局は支払手形ですから」
と、正鵠を射ることを仰り、わたくしは密かに、
「おお! おカネの正体を正しく理解している学者が、この日本に存在したんだ(失礼ながら)」
と、吃驚してしまったわけでございます。昨日、一昨日のエントリーで解説した通り、おカネとは「誰かの債務」であり「誰かの債権」です。つまりは、支払手形(債権者側からすれば受取手形)です。(どうでもいい話ですが、藤井先生とわたくしは一歳違いと知っていました?)
さて、おカネの意味を正しく理解している人の代表が藤井聡先生であるならば、「全く理解していない人」の代表が・・・・・・・・・・・・・。
まあ、物凄く沢山いるんですが、代表的な人物の一人が、吉川洋東大教授になります。
『財政再建、深まる対立 東大教授・吉川洋氏/京大教授・藤井聡氏
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO85253340T00C15A4TY6000/
政府は今年夏、2020年までの財政健全化計画をつくる。主要国でも突出した債務を抱える日本の財政をどう立て直すか。増税や歳出削減による財政再建を重視する吉川洋・東大教授と、経済成長と脱デフレに向けた財政出動を説く藤井聡・京大教授(内閣官房参与)が改革の進め方や健全化目標の在り方について議論を戦わせた。
借金膨張、デフレ病が原因 藤井氏
成長だけでは解決できず 吉川氏(後略) 』
後略部において、藤井先生は例により、
「経済規模(GDP)に対する政府債務の比率を見れば、経済規模の拡大や税収増による財政改善も反映できる。こちらが財政健全化の本筋で、基礎的収支の黒字化はもともと債務残高のGDP比を減らすための二次的な目標だった。」
と、正しい意味における財政健全化を唱え、
「これが解消できれば経済が活性化し税収も増え財政の不健全さも改善できる。税収との連動性が高い名目成長率を上げるのが重要だというのが私の結論だ。」
と、当たりまえ過ぎるほど当たり前の話をしています。
ちなみに、藤井先生が言う「税収との連動性が高い名目成長率」が本当かどうか、96年以降の名目GDPと租税収入の推移を見て確認してみましょう。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_50.html#gdptax
税収弾性値があるので、多少のばらつきはありますが、名目GDPと租税収入がほぼ同じ動きをしているのが分かるでしょう。
当たり前です。名目GDPは国民が稼ぐ所得の金額の合計であり、我々は所得から税金を払うのです。名目GDPと租税収入は、政府が大々的な減税政策を打たない限り、同じ動きをします。
現在の日本はデフレで名目GDPが拡大しにくい状況にあり、結果的に税収が減り、赤字国債(税収不足を補う国債)の発行が増えているのです。すなわち、問題は名目GDPを成長させないデフレなのです。
と、藤井先生は主張されているのですが、それに対し吉川教授は、
「財政赤字の原因がデフレだというのは間違いだ。社会保障歳出に歯止めがかからない構造的な問題こそが原因だ。成長が大切なことに異論はないが、成長すれば財政再建できるというのは間違いだ。」
と、面白いくらい支離滅裂な反論をしています。
社会保障歳出に歯止めがかからなかったとしても、名目GDPの成長が十分であれば、税収増で財政赤字(赤字国債発行)は減少するでしょうに。しかも、
「成長すれば財政再建できるというのは間違いだ。」
と、上記「名目GDPと租税収入」の相関という「事実」をガン無視していらっしゃいます。吉川教授は、「税収が増えても財政再建できない」と、物凄い主張をされているわけです。
要は、見たくないという話なのでしょうか。
しかも、吉川教授は、日銀の量的緩和(による金利低下)を受け、
「中長期的にみると成長率の方が金利よりも高いということはあり得ない。ここは譲れない。」
と、言い切ってしまいます。
「成長率」が何を意味しているのか不明ですが、名目GDPの成長率を意味しているのであれば、意味不明としか言いようがありません。統計ルール的に、「金利はインフレ率に連動する」「名目GDP成長率は実質の成長にインフレ率を加えた数値」であるため、中長期的にはむしろ「名目GDP成長率>金利」になるのが普通です。
要は、吉川教授は国債が自国通貨建てではなく、「国際金融市場」により金利が激しく変動するギリシャなどのケースを想定しているのでしょう。吉川教授は、日本国債が100%日本円建て「ではない」ファンタジック・ワールドにお住いのようです。
とはいえ、先日の河野太郎も同じですが、この手のファンタジック・ワールドに身を置きながら、現実世界で間違った主張をして問題解決を遅らせる政治家や官僚、学者が多数派を占めているのが、日本の現実なのです。
とりあえず、日本国民だけでもファンタジック・ワールドから脱出しましょう。さもなければ、財政問題が「正しい方向」に向かう日は永遠にやってきません。
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