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『実質賃金を引き上げる方法①』三橋貴明 AJER2015.3.17

https://youtu.be/54A1iQdY8Zs

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一般参加可能な講演会

5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』

パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志

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 本日は23時から、FMフジ「なんでもカウンセリング~You&Me~」に出演します。
http://fmftp.lekumo.biz/nandemo/


 今日と明日は、かなり「頭の体操」です。頭を柔らかくしてから、読んで下さいね。


 ギリシャが予想通りのタイミングで、資金枯渇状態に陥っています。ここで言う「資金枯渇」とは、政府に「充分なユーロというおカネがない」という話です。


 これが独自通貨国であれば、「政府の子会社である中央銀行が国債を買い取り、通貨を発行する」で話が終わってしまうのですが、ユーロ加盟国のギリシャはそうはいきません。


ギリシャが「9日に資金枯渇」と通告、債権団はつなぎ融資拒否
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MT1L920150402
 ギリシャが債権団に対し、来週9日に資金が枯渇すると伝え、改革案をめぐる合意前の融資実施を要請したものの、拒否されていたことが明らかになった。ユーロ圏の当局者が明らかにした。
ギリシャが要請したのは、1日にユーロ圏の財務次官らが開いた電話会議の場。ギリシャ財務省は、9日に資金が枯渇すると通告したとの報道を否定。
財務省声明は「4月1日のユーロ圏作業部会での協議内容を伝えるロイター報道を否定する」とした。
一方、ギリシャのブーチス内相は1日、9日に国際通貨基金(IMF)への4億5000万ユーロ分の融資返済を実行するか、あるいは給与・年金支払いを行うかの選択を迫られると発言。同相は後者を選択するとの見解を示した。(後略)』


 さて、ギリシャ問題や日本経済の問題を考える際に、おカネ(今回のエントリーでは通貨、貨幣等を「おカネ」と総称します)の話は避けて通れません。といいますか、日本の政治家は「国民経済」基本が需要と供給能力であるという基本を忘れ(あるいは、初めから知らない)、やたら「おカネ」の問題ばかりを取り上げ、虎の子の供給能力(潜在GDP)を喪失するデフレ路線を突き進んでいることはご存知の通りです。



 そもそも、おカネとは何なのでしょうか。実は、取引における「債務」「債権」の記録です。しかも、自分の債権を、他者への債務の弁済に利用可能となっています。おカネは「譲渡性」がある債権なのです。(というわけで、「手形」や「預金」もおカネの一種です)


 と、書いても、何が何だか分からないでしょうが、例えば皆さんがスーパーマーケットで1000円の買い物をしたとします。おカネを払う前の時点では、皆さんは、
スーパーマーケットに1000円の債務を負っている(=スーパーマーケットが1000円の債権を保有している)」
 という話になるわけです。


 というわけで、皆さんが財布の中から1000円札を取りだし、スーパーマーケットに支払ったとします。そのとき、皆さんは、
日銀に保有する債権(現金)で、スーパーマーケットへの債務1000円を弁済した
 という経済活動を実施したことになるのでございます。ご存知の通り、1000円札は日銀の「負債」であり、所有者の「資産」です。


 意識している人は一人もいないでしょうが、皆さんが買い物をしたとき、「ツケ払い」でない限り、必ず「誰かに対する債権で、誰かに対する債務を弁済」しているのでございます。


 ところで、基本的に「おカネ」とは、誰かの「負債(債務)」にならない限り、生み出されません。現金紙幣は日銀の負債ですし、銀行預金は銀行の負債です。


 ところが、この世には一つだけ、「誰の負債にもならない」おカネがあるのです。すなわち、政府が発行するおカネです。日本政府は「硬貨」という政府通貨を発行していますが、これは「政府の負債」にはなっていません。硬貨保有者と対になる貸方(バランスシートの右側)は、純資産なのです。


 というわけで、政府だけがおカネを発行し、そのまま「利益(=純資産)」を得ることが可能なのです。この利益のことを「シニョリッジ(通貨発行益)」と呼びます。


 シニョリッジは、中世欧州で猛威を振るい、たびたび経済を混乱に陥れてきました。要は、封建領主が通貨を発行しすぎ、インフレ率が健全な範囲を超えて上昇してしまうという話です。(そもそも、シニョリッジとはフランスの領主「シニョール」に由来します)。


 経済学は、「政府の力」を基本的に考慮に入れていません。理由の一つとして、「政府のシニョリッジ」を考慮すると、「市場」が歪められ、経済学の各モデルが成り立たなくなってしまうことがあるのではないかと睨んでいます。


 経済学は「政府」を軽視すると同時に、「国境」をも軽んじます。基本的に、経済学は国境や政府の規制がない「市場」をベースに、学問として発展したわけです。


 無論、現実の世界には国境もあれば、政府もあります。というわけで、国境の高さを引き下げると同時に、政府がシニョリッジを得ることを防止し、「統一通貨、統一市場」として構想されたのが「共通通貨ユーロ」なのでございます。


 というわけで、ギリシャは、
「外国の銀行(主に)に対する債務を、シニョリッジで弁済する」
 ことができない状況になっています。そもそも、ユーロとはそういう仕組みなのです。


 そうなると、ギリシャ政府は、
国民が誰かに対し保有している債権を、徴税として自分の債権とし、外国への債務を弁済する
 か、もしくは、
「外国からの債務を増やし、別の債務を弁済する(要するに、借り換え)」
 以外の方法で、債務を弁済する(厳密には「しのぐ」)方法がないという話になってしまいます。(現在のギリシャ政府は、国債発行も制限を受けています)


 とはいえ、率直に言って、上記二つともすでに行き詰っており、「別の手法」が模索されていたりします。「おカネ」の概念について、根本の根本まで、つまりは「債権で債務を弁済する」「政府にはシニョリッジがある」の二つを理解して初めて、ギリシャの「模索」が理解できるのです。


 というわけで、明日に続きます。


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