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『実質賃金を引き上げる方法①』三橋貴明 AJER2015.3.17

https://youtu.be/54A1iQdY8Zs

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一般参加可能な講演会

3月28日(土) 12時より『シンポジウム「台湾映画『KANO』にみる、忘れられた台湾史と今の日本人に求められるもの」』 文京区シビックセンターにて。

5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』

パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志

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マンスリーWILL(ウィル) 2015年 05 月号 [雑誌] 」に連載「反撃の経済学 公共投資のストック効果」が掲載されました。


 昨日のタイトルは「鰐の口が閉じていく」ですが、これは第二次安倍政権発足後、
「消費者物価が上がった分、実質賃金が下がり、14年6月以降は消費者物価上昇率が縮小をはじめ、その分、実質賃金の下落ペースも落ちていっている
 現象を表現したものです。このままの政策で進むと、恐らく4月にコアコアCPI(もしかしたらコアCPIも)がマイナスに落ち込み、
「いったい、安倍政権のデフレ対策は何だったんだ・・・」
 という話になるでしょう。


 その後、正しい政策を打たない場合、インフレ率がマイナスに低迷するものの、それ以上に賃金が下がり、実質賃金も下落するというデフレ型実質賃金下落に舞い戻ることになります。消費税増税、政府支出削減により、日本をデフレ化させる。まさに、橋本内閣の再来です。


 とはいえ、安倍内閣は橋本内閣とは異なる政策も打っています。第二次安倍政権が始まって以降、何と5%超も実質賃金指数が下落し、国民が貧困化する反対側で、一つだけ、安倍内閣は素晴らしい経済実績を上げているのです(皮肉ではないですよ)。素晴らしい実績とは、株価上昇ではなく、日本銀行の国債買入で、
実質的に国の借金を減らした
 ことでございます。


 この事実がきちんと「正しく」知れ渡れば、「クニノシャッキンガー」症候群の患者が減ると思うわけでございます。


 すでに、2012年9月と比較すると、政府の実質的な借金は50兆円以上も減りました。もちろん、政府が借金を返済したわけではなく、子会社の日本銀行に国債を買い取らせて、借金を事実上「チャラ」にしていっているわけです。(ところが、なぜか誰もこの事実を報じない。不思議な国でございますよ、本当に)

 2014年末(速報値)の資金循環統計が発表されたので、例のグラフを作ってみました。


【2014年末時点(速報値)日本国債所有者別内訳(総額は885兆円)】


http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_49.html#15matsu


 ちなみに、一四半期前のグラフはこちら。


【2014年9月末時点(速報値) 日本国債所有者別内訳(総額は860.6兆円)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_49.html#Kokusai


 順調に「パックマンの口」が開いていっているのが分かるでしょう。

 上記は「国債・財融債」のグラフですが、ここに国庫短期証券を加えると、中央政府の債務のちょうど25%を日本銀行が保有していることになります。いわゆる「国の借金」の四分の一が、政府の子会社である日本銀行の保有になってしまっているのです。


 もちろん、日本政府は別に借金を棒引きにするために国債を日銀に買わせているわけではありません。金利を引き下げ、消費や投資という「所得になる支出」を拡大するために、日本銀行に金融緩和政策を採らせているわけです。


 とはいえ、現時点で国債金利は十年物で0.32%。これ以上、下がる余地はほとんどありません。

 と言いますか、デフレで仕事(需要)が乏しいからこそ、企業は投資をしないわけです。長期金利が0.3%だろうが0.1%だろうが、目の前の需要拡大がない限り、民間企業は投資を増やしません。


 というわけで、おカネの流動性が上がる(要は銀行におカネがじゃぶじゃぶ)中、設備投資や住宅投資需要が不足し、おカネは金融市場に流れていっています。為替が買われ、株が買われ、日経平均が上昇したわけです。


 さらに、最近は年金、共済、郵貯、簡保、そして日本銀行の資金が株式市場に投入されているわけです。


日銀、株高の立役者に
http://jp.wsj.com/articles/SB10030317691824024149004580511651086175856
 日本銀行による積極的な上場投資信託(ETF)の買い入れが日本株の上昇を支え、株価はここ数カ月で数年ぶりの高値水準に達している。だが日銀内部では、急速な株高やそれを促した日銀の役割をめぐり、一部で違和感が募っている。
 黒田東彦総裁が2013年3月に就任し「異次元」金融緩和を打ち出して以来、日銀はETFの買い入れを大幅に拡大している。
 日銀の記録によると、ここ2年間は株式市場へおよそ2日おきに参入し、指数連動型ETFを総額2兆8000億円相当買い入れている。この買い入れは、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)との違いを際立たせている。FRBとECBは、いずれも景気下支えのために債券買い入れは実施しても、株式の直接購入は見送ってきた。
 アナリストらは、ここ数カ月の日本株上昇を促した要因として、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による大量の買いに加え、日銀のETF買い入れが大きかったと指摘している。こうした買いは個人投資家の売りを圧倒し、海外投資家の需要冷え込みに勝ることが多かった。(後略)』


 今のところ、日本銀行のETFの保有は4兆円強程度ですが、今後は拡大していかざるを得ないと考えています。理由は、すでに国債の20%強を日本銀行が買い入れたにも関わらず、物価はむしろ下落傾向(政府が需要を絞っているので、当たり前ですが)であり、これ以上の国債買入は、銀行の経営を悪化させる(すでにしているそうですが)ためです。

 過去に誰もやったことがないので、数字でピシリッという事は出来ないのですが、上図で日本銀行の国債保有が「国内銀行」を上回った時点で、「先」が見えてくるような気がします。すなわち、国債買入が限界に達するわけです。


 とはいえ、日銀の量的緩和は「コミットメント」なので、続けざるを得ません。というわけで、ETF買い入れは増えるでしょう。また、同時に日本政府が「プライマリーバランス黒字化」(しかも短期で)を目指すため、物価は上昇しない可能性があります。

 というわけで、今後の日本は、
物価が下落し、それ以上に名目賃金が下がり、実質賃金が落ち込み、国民が貧困化する
 と、
日本銀行のマネタリーベースがひたすら拡大し、資産価格を押し上げる
 という、かつて我が国が経験したことがない状況に突入する可能性があるわけです。


 まさに、トマ・ピケティの「r>g」を地で行くような話でございます。政府が「財政出動による需要創出」という正しい政策に舵を切り直さない限り、我が国では所得(実質賃金、GDPなど)と資産(株価など)の乖離がひたすら拡大していくことになるでしょう。


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