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『国の借金シンドロームの治療(前編)①』三橋貴明

http://youtu.be/zCaFyggFevg

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 現在、ウクライナでは停戦合意状況にあるにも関わらず、武力衝突が続き、どちらかといえば親ロシア派が優勢な状況になっています。ウクライナ軍の報道官は、2月20日に「ロシア兵」を乗せたバスや戦車、ミサイルが国境を越え、マリウポリ近郊に向かっていると語っています。


 昨日、ロシアのモスクワでは一年前の「ヤヌコビッチ大統領を追放したウクライナ・クーデター」を批判するデモが行われました(当局発表で3万人~4万人が参加したとのことです)。


 2月20日、ロシアのプーチン大統領は、軍関連の式典に出席し、
誰もロシアを軍事面で上回ることはできない。いかなる圧力に対しても答えを出す用意がある」
 と、演説。


 さらに、ロシア政府は先日、新ロシア派勢力が制圧したウクライナ東部のデバリツェボに食料品などの「人道支援物資」を送りました。無論、人道支援物資が本当に「人道支援」のための物資なのかどうかは、第三者は確認できません。


 と言いますか、難民支援ならともかく、戦闘状態にある地域に「人道支援物資」を送ったところで、実際には「戦闘支援物資」にならざるを得ません。ナイーブな日本人は「兵站」と聞けば、兵器などの運送ばかりが頭に浮かびますが、実際の戦場では食料や医薬品などの「非兵器」な物資であっても、軍隊の活動に貢献することになります。


 上記の日本人のナイーブさは、憲法で、
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
 と、定められているにも関わらず、国際貢献としての自衛隊の「後方支援」活動を可能にしています。本来であれば、兵站に代表される後方支援も、「武力の行使」の中に含まれます(軍事力の行使という意味において)。


 もちろん、「だから、自衛隊の国際貢献は問題」と言いたいわけではありません。いい加減、この手の「言葉」による欺瞞は止めるべきと主張しているわけでございます。


 話をロシアに戻しますが、ロシア側の強硬姿勢に対し、アメリカのバイデン副大統領はウクライナのポロシェンコ大統領やヤツェニク首相と電話で会談し、
親ロシア派への関与を否定するロシアは嘘の主張」をしている
 と、激しく非難しました。


 さらに、ウクライナ政府は21日、ロシア主要メディアの取材登録を取り消すことを決定。それに対し、ロシア側は、ペスコフ大統領報道官が、
「民主主義国家の原則にそぐわない」
 と、強く反発。


 現在のウクライナを舞台に、事実上の「米ロ冷戦」が再燃していることが、改めて確認できました。アメリカや現ウクライナ政府は、「ウクライナのNATO加盟」を最終目標にしています。


 それに対し、ロシア側は「ウクライナのNATO加盟だけは何としても阻止する」という目標になっており、ウクライナ東部で停戦が維持されないことは、むしろ望むところでしょう。米ロの安全保障上の目標が衝突している以上、ウクライナの混乱は終わることがありません。


 さて、1月26日のS&Pに引き続き、昨日、ムーディーズがロシアを投資不適格級に格下げしました。


ムーディーズ、ロシアを投資不適格級に格下げ
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LP00320150221
 格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは20日、ロシアのソブリン格付けを「Baa3」から、投資不適格級となる「Ba1」に引き下げた。
ムーディーズは格下げの理由として、ウクライナ危機、原油安、通貨ルーブル相場の下落を指摘。格付け見通しは「ネガティブ」を維持した。
声明で「ロシアは2015年は深刻なリセッション(景気後退)に陥り、景気後退は2016年に入っても続くと見られる」と指摘。「信頼感の低下で内需が抑制され、すでに慢性的に低迷している投資活動がさらに悪化する恐れがある」とした。』


 昨年秋時点で、ロシア国債の保有に対し「外国人投資家」が占めるシェアは約26%でした。デフォルトした98年と現在とでは、ロシアの状況は違います。


【ロシアの経常収支の推移(単位:十億ドル)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_49.html#Russia


 上記の通り、98年のデフォルト以降のロシアは原油価格上昇を活用し、経常収支黒字国に転換しているのです。経常収支黒字国は国内が貯蓄過剰になるため、国債の消化を外国に頼る必要はありません。


 現在の原油価格の下落はロシア経済にとってダメージですが、ルーブル安である程度緩和されることになります。さらに、外貨準備も4000億ドル弱、保有しています。


 何を言いたいかといえば、こと「経済」に限って言えば、S&Pやらムーディーズの格下げは、ロシアに大きな悪影響を及ぼすとは思えない、という話です。(輸入品の値段は上がるでしょうけれども)


 もっとも、何しろロシアは98年にデフォルトしています。ロシアの格下げを受け、
「またもやロシアがデフォルトするのでは・・・」
 という空気が広がると、プーチン政権にとってはダメージになります。プーチン大統領とはいえども、「黄金の拘束衣」から完全に自由なわけではないでしょう。とはいえ、現在のプーチン大統領は、確かに黄金の拘束衣を脱ぎ捨てようとしているように見えます。


(「黄金の拘束衣」について詳しく知りたい方は、「黄金の拘束衣を着た首相―なぜ安倍政権は緊縮財政・構造改革を推進するのか 」をお読みくださいませ)


 今回の「原油安」「ルーブル暴落」「格付け会社の格下げ」と、ウクライナ問題が「無関係」であると考えるのは、それこそあまりにも「ナイーブ」という話です。今後の日本の政治家には、世界の状況を鳥瞰的に見据えた上で、自国の国益を冷徹に考える実践的な態度が求められると、ウクライナとロシアの混乱を見ていると、つくづくと思った次第でございます。


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