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『混迷の日本①』三橋貴明 AJER2015.1.20(7)
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田母神俊雄氏の件は、本日の記者会見を受けてから、取り上げたいと思います。
『ISILの標的はサウジ? 全長1000km、ハイテク「万里の長城」で徹底防御
http://blogos.com/article/105274/
過激派組織「イスラム国」(以下、ISIL)は、サウジアラビア支配を狙っていると、中東専門家クロード・サルハニ氏はみている(英BBC)。なぜか。まず、ISILの指導者アル・バグダディは、カリフ(イスラーム共同体の最高権威者の称号)を自称しており、聖地メッカとメディアに到達することが必然的な使命だ、と考えている。次に、さらなる石油の確保を目論んでいる、というのだ。(後略)』
さて、シリア・イラクのテロリストISIL関連の論評で、
「日本がどうするべきなのか」
について、個人的に最も説得力があると言いますか「実践主義的」だと思った方は、実は中野剛志氏です。
中野氏には、先日の「三橋経済塾第四期 第二回講義 」でご講演頂き、その際に本件について語ってもらいました。
http://www.mitsuhashi-keizaijuku.jp/【写真 三橋経済塾における中野剛志氏の講義光景(撮影:さかき漣)】
(インターネット受講の皆様へのお知らせ。中野氏のご講話を含む第二回のコンテンツは、間もなくアップされます。もうしばらくお待ちくださいませ)
中野氏は、直近の「ちょく論」でも本件について書いていらっしゃいます。
【ISILによる日本人人質殺害事件の本質】
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar728626
(前略)その中東に、日本は石油・天然ガスなどのエネルギーを大きく依存しています。しかも、原子力発電を稼働させていない現在は、なおいっそう、依存度が高い。もし、ISILの脅威によって中東全土の秩序が崩壊したら、エネルギー供給が危険にさらされ、日本国民の生活は危機的な状況に追い込まれます。
ISILの脅威は、日本の安全保障に直結する問題なのです。
ISILの脅威を少しでも食い止めるために周辺国に支援を行うのは、抽象的な人道主義、国際主義、平和主義のためなどではなく、自国の安全保障を守るため、「自衛」のために必要なのです。
理想主義ではなく、現実主義の観点から、必要だということです。(後略)』
中野氏が書かれている通り、現在の日本は、原子力発電所を停止しており、中東依存度は以前よりも高まっている有様です。我が国は、中東からの原油やLNGの輸入が途絶えると、途端に経済や社会生活が麻痺する状況に追い込まれています。(ある意味で、大東亜戦争前期、日米開戦前の日本に似ています)
当然ながら、我が国は「中東諸国の安定化」にコミットしなければならない立場であり、ISILの脅威が高まり、サウジやクウェートまでもが危機に瀕することになると、我が国のエネルギー安全保障が大きく揺らぐ状況になってしまうわけです。ISILの問題は、「国際問題」でも何でもないのです。我が国の「安全保障」と直接的に関係する問題である。と、中野氏は書いていらっしゃいます。
中野氏の主張を読むと、
「日本は中東に関与すべきなのか、否か?」
といった論調が、いかにナイーブか、現実を直視していないかが分かります。関与すべきも何も、中東の安定は「日本の安全保障」に直結する問題なのです。
さて、中野氏が新著「資本主義の預言者たちニュー・ノーマルの時代へ (角川新書)
」を出版されました。
本書は、リーマン・ショックにより世界金融危機が発生し、結果的に金融のみでは成長を引き起こせなくなり、それでも各国政府が財政出動の拡大に乗り出さず、
「低い経済成長率と高い失業率」
が続く停滞状況「ニュー・ノーマル(新常態)」(PIMCOのCEOモハメド・エラリアンが命名)の時代に、「資本主義」がどうするべきなのかについて、スティグリッツやガルプレイスの論などを引用しつつ、著者独自の視点で議論を展開する大著になっています(新書なのに300ページを超えています)。
不思議な一致ですが(偶然ではないのかも知れませんが)、「ニュー・ノーマル」の時代は、アメリカ主導のグローバリゼーションの限界と共に始まりました。我が国にとって、リーマン・ショック前のような「金融主導」の経済成長が実現できないのは、すでに明らかです。同時に、ISILに象徴されるように、「自国で「自衛」のグローバル化(中野氏の言葉)を実施しなければ、安全保障を確立することは不可能」な状況に追い込まれつつあります。
先日の三橋経済塾の講演では、
「こと中東に関して言えば、アメリカよりもむしろ日本の方が強くコミットする必要がある(中東依存度が高いため)」
という言葉が印象的でした。
現実の日本はと言えば、相も変わらず財政出動の拡大に背を向け、さらに、
「(中東からのシーレーン確保を含む)安全保障は、アメリカが何とかしてくれるよ」
と、主権国家とは思えないことを「常識」と信じている国民が、残念ながら多数派なのだと思います。
もっとも、幸いなことに我が国はデフレでございますので、
「政府の財政出動で防衛・防災等の安全保障を強化し、中東依存度の引き下げを含むエネルギー安全保障も確立する」
といった「ニュー・ノーマルな時代」であっても、繁栄の中で生き延びる道は残されているわけです。
そのためには、国民が「世界の中の日本」を正しく認識し、政治を動かさなければなりません。というわけで、中野氏の「資本主義の預言者たちニュー・ノーマルの時代へ (角川新書)
」が、最近の三橋がお勧めしたい二冊(二冊目は明日)のうちの一冊になります。
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