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『混迷の日本①』三橋貴明 AJER2015.1.20(7)

http://youtu.be/MzVOqXpdh0g

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 昨日の午前と午後、東北地方の太平洋沖合を震源とする地震が二度、発生いたしました。午前中の地震では、岩手県沿岸に最大20センチの津波が押し寄せ、午後の地震は青森で震度5強の揺れを観測しました。


 気象庁の発表によると、いずれも2011年の東日本大震災の「余震」とのことでございます。


 我が国は地震、台風、水害、土砂災害、豪風、津波、高潮、火山噴火、豪と、自然災害が相次ぐ国です。三橋が懇意にして頂いている国土技術研究センター国土政策研究所の大石久和所長は、文藝春秋2014年季刊冬号(第30号)で、「天災大国 日本」の厳しい国土的な十条件について整理していました。


 その中に、「広大な豪雪地帯」というものがあります。


 日本の国土面積の60%が積雪寒冷地域であり、生活を麻痺させる豪雪の危険が常に存在するわけです。主要国の中で、年間の累積降雪量が4mを超えるところに、50万人もの都市が存在する例はありません。


 しかも、最近は「雪が積もらないはずの地域」で豪雪となり、ライフラインや流通が麻痺するという豪雪災害が頻発するようになっています。


 昨年の2月に日本各地で二度も発生した「豪雪」災害を思い出して下さいませ。東京都民の筆者は、豪雪発生時、東日本大震災以来はじめて、街中のコンビニから商品が消えるのを目にしました。


 別に、都民が食料等の買い貯めに走ったという話ではありません。あまりの積雪に、物流がほぼストップしてしまったのです。運送用の貨物トラックが道路を走れなくなってしまうと、我が国の物流ネットワークは途端に麻痺します。日本の物流という面の「安全保障」が、いかに脆弱であるか、まざまざと見せつけられた豪雪災害でした。


 東京などの関東地方では、本日未明からまたもや雪となり、積雪になる可能性があります。交通機関の乱れなどに、ご注意下さいませ。


 さて、豪雪という「自然災害」に対し、我々はどのように立ち向かえばいいでしょうか。誰でも分かります。必要なのは、
除雪車
除雪できる人材
予算
 の三つです。上記のうち、予算については地方自治体は「いざとなれば、何とかする」ことが可能です。中央政府から支援をすることもできるでしょう。


 とはいえ、「除雪車」「除雪できる人材」がいなかった場合、これはもう豪雪災害に対処のしようがなくなってしまいます。昨年の豪雪時、県全域が「真っ白」になった山梨県には、十分な除雪車がなく、人材もいませんでした。結果、新潟県から除雪車や人材が送られ、急場をしのぐことができました。


 あの時、山梨県周辺に「除雪車」や「除雪できる人材」が存在しなかった場合、どうなったでしょうか。陸の孤島に閉じ込められた県民は、財産どころか生命すら失う可能性があったわけです。


 もっとも、今の日本は「豪雪地帯であっても、十分な除雪車や除雪できる人材が存在しているとは限らない」国と化しつつあります。


豪雪地帯自治体:相次ぐ苦情 ドカ雪苦戦の理由 青森
http://mainichi.jp/select/news/20150217k0000e040125000c.html
 今冬の一気に降り積もる「ドカ雪」に、青森市の除排雪体制が苦戦気味だ。市民から市への苦情は1月末までに、前年度同期の約5倍の約1万件が寄せられ、うち半数が生活道路の除排雪に関するものだ。道端に寄せた雪を、雪捨て場や陸奥湾に運ぶためのダンプカーが足りないこ
とが要因の一つと見られる。市の排雪用ダンプの登録台数自体は1095台で昨冬より約30台増えたが、国や県が管理する幹線道路の除排雪が優先されているのが実情だ。(後略)』


 豪雪地帯の青森ですら、雪を運ぶダンプカー不足で除雪が進まないというのが現状なのです。すなわち、豪雪に対処する「供給能力」が不足しているわけです


 さらに怖いことに、先日、札幌に伺った際に、
「予算はあり、除雪車もあるけれども、除雪できる人材がいないため、除雪が進まない」
 という話を聞きました。予算があろうとも、機材があろうとも、「人材」がいなければ、自然災害に対処することはできないのです。


 さて、それでは「次の豪雪災害」に備え、青森県がダンプカーやドライバーを増員し、札幌で除雪人員のトレーニングが進んだとします。とはいえ、「次の豪雪災害」が発生するかどうかは、これは誰にも分からないのです。


 あらゆる「非常事態」に対する備えがそうなのですが、
非常事態に備えても、非常事態が起きないかも知れない
 というのが現実なのです。その場合、日本国民は、
「非常事態に備えたけれども、何事もなかった。ああ、良かった」
 と考えるでしょうか。


 上記のシチュエーションにおいて、
「非常事態に備えたけれども、何事もなかった。ムダな支出をしやがって!
 と、安全保障の確立について「ムダ」と一言で切り捨てる国民が増えていないか、それを危惧しているわけでございます。


 特に、デフレで国民の所得が増えない環境下において、安全保障関連の支出すら「ムダ」であると削減し、結果的に「非常事態に対処できない」自治体が増えてきていま


 我が国は、国土的条件から「非常事態への備え」を疎かにしてはならない国です。しかも、今はデフレ期でございますので、政府が「安全保障関連の支出」で需要を創出する絶好の機会です。


 それにも関わらず、国土強靭化は遅々として進みません。 防衛費以外の支出は絞り込まれ、さらに政権は「防災」「エネルギー」「食料」「医療」といった安全保障を弱体化させる政策を推進しているのが実情です。


 安全保障関連にお金を使うことすら「ムダ」と切り捨てるデフレ・レジュームから抜け出さない限り、我が国の将来はおぼつかなくなります。逆に、安全保障関連に充分な支出を実施し、毀損した供給能力の回復を図れば、我が国はデフレから脱却し、繁栄も実現できます。


 まさに、今の日本は分岐路に立っているのです。


「デフレ・レジュームから脱却しよう!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!

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