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『混迷の日本①』三橋貴明 AJER2015.1.20(7)

http://youtu.be/MzVOqXpdh0g

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一般参加可能な講演会のお知らせ。

2月21日(土)TKPガーデンシティ仙台「2015年の日本の国民経済と企業の成長戦略」 お申し込みはこちら から。

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 飛鳥新社から「黄金の拘束衣を着た首相―なぜ安倍政権は緊縮財政・構造改革を推進するのか 」が刊行になりました!



 明日は文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。

http://www.joqr.co.jp/tera/


 「21世紀の資本」のトマ・ピケティが来日し、あちこちでシンポジウム等に出演しているようです。あるパネルディスカッションでは、西村康稔内閣府副大臣が、アベノミクスが「トリクルダウンの試み」であると説明し(おいおい・・・。認めちゃった)、
「アベノミクスが格差を拡大しているというのは誤解である」
 と力説したのに対し、ピケティは、
「確かに日本の格差は米国ほどではない。しかし、上位10%の富裕層の所得は、国民所得全体の30~40%まで広がっています。日本がゼロに近い低成長なのに、上位の所得が増えているということは、裏を返せば、実質的に購買力を減らしている人がいるということです日本の最高所得税率は1960~70年代より下がっています。上位10%の所得が増えているのに、税率が低い状態では格差が広がるばかり。所得税の累進性を高めるべきです」
 と切り替えされたとのことです。


 何というか、(考えが)薄すぎで、無関係なわたくしまで恥ずかしくなりますよ、西村副大臣・・・。

 ところで、ピケティは日本の消費税にもダメ出ししていますが、それはまあ、逆累進課税ですから当然ですね。ピケティの主張の肝は、
g(経済成長率)を、r(資本利益率)が上回ると、持続不可能な格差を生み出す
 というもので、ごくごく当たり前の主張です。経済成長率とは、GDP(生産=支出=所得)の拡大ペースです。我々、生産者が働いて稼ぐ所得が増えるペースより、資本による果実の増え方の方が早ければ、それは間違いなく格差が拡大していきます。


 というわけで、日本の「r>g」について確認してみようと思ったのですが、田村先生に先を越されました。


「21世紀の資本」と日本 「格差」拡大しても成長困難 編集委員・田村秀男
http://www.sankei.com/column/news/150125/clm1501250008-n1.html
 世の中で起きる数え切れない経済事象を一つのアングルで鋭く切る。「21世紀の資本」の著者、仏経済学者のトマ・ピケティ氏は「資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意(しい)的で持続不可能な格差を生み出す」と断じている。古代から現代、さらに21世紀全般にわたって、気の遠くなるようなデータをかき集め、かつ推計してみせた。
 じゃあ、今の日本はどうなのか、ピケティさんに任せっきりにせず、自分の手でデータを調べてみた。法人企業統計(財務省)をもとに総資本利益率を税引き前および税引き後の純利益にわけて「資本収益率」を算出。国内総生産(GDP)の実質成長率を「産出と所得の成長率」に置き直し、さらに実質賃金の伸び率を加えたのが、本グラフである。これらのデータは5年間の移動平均値にならしている。一時的なブレに幻惑されないためである。


 資本収益率が実質成長率を上回るようになったのは税引き前で1990年代前半、税引き後は90年代後半だ。それまでは成長率のほうが収益率をほぼ一貫して上回ってきた。日本経済は遅く見ても90年代後半以降、「格差」の時代に突入したことになる。
 90年代前半にはバブル崩壊、さらに97年度には橋本龍太郎政権が消費税増税など緊縮財政路線に踏み切り、日本経済は一挙に慢性デフレ局面にはまりこみ、なお抜け出られないでいる。
 デフレは格差拡大の元凶である。「デフレは企業者の生産制限を導き、労働と企業にとって貧困化を意味する。したがって、雇用にとっては災厄になる」と、かのケインズは喝破した。
 デフレ下では現役世代の賃金水準が下がるのに比べ、金融資産を持っている層はカネの価値が上がるのでますます豊かになる。デフレで売上額が下がる中小企業の従業員は賃下げの憂き目にあいやすい。デフレは円高を呼び込むので、生産の空洞化が進み、地方経済は疲弊する。若者の雇用の機会は失われる。
 慢性デフレの局面でとられたのが「構造改革」路線である。モデルは米英型「新自由主義」だ。97年の金融自由化「ビッグバン」で持ち株会社を解禁した。2001年に発足した小泉純一郎政権は、「郵政民営化」で獲得した政治的な求心力をテコに米国からの各種改革要求に応じた。製造業の派遣労働解禁(04年)など非正規雇用の拡大、会社法(06年)制定など株主中心主義への転換などが代表例だ。法人税制は98年度以降、02年度までに段階的に改正され、持ち株会社やグローバル企業を優遇している。(後略)』


 デフレ化では、「r>g」どころか、gが伸びなくなります。しかも、物価の下落率以上のペースで給与所得が下がり、実質賃金が継続的に下落していくため、国民はどんどん貧困化していきます


 国民が貧困化する反対側で、我が国では橋本政権、小泉政権により「グローバル化への対応」としての構造改革が実施されました。田村先生もお書きになられている通り、「金融ビッグバン」「持ち株会社解禁」「派遣労働解禁」「会社法制定」などなど、「株主中心主義」への転換が行われたのです。


 05年頃を思い出してみてください。当時は、やたらと「時価総額経営」という意味不明なコンセプトが尊ばれていました。
 別に、株価が高かろうが低かろうが、本業とは関係がないはずなのですが、
「株価が高いことが、いいことだ」
 という考え方が社会に広まり、経営者は「株価を引き上げるための経営」を迫られます。すなわち、短期的な利益を追求し、正規社員を非正規に切り替え、田村先生が後略部で書いているように、


『全企業が従業員給与100に対してどれだけ配当に回しているかを年度ごとにみると、70年代後半から90年代末までは3前後(資本金10億円以上の大企業は7台)だった。この比率は、02年度からは徐々に上昇し、13年度は11・5(同32)と飛躍的に高まった。』


 のです。


 すなわち、日本はデフレーションで「g」が低迷する中、構造改革により「r」が引き上げられていったわけでございます。「r>g」が成立し、国内の所得格差が「持続不可能」な形で開いていったわけです。もちろん、日本の所得格差は諸外国と比べれば「マシ」かも知れませんが、現在の安倍政権が「黄金の拘束衣」をガッチリと着こんでいる以上、少なくとも「方向的」には好ましくない方向に向かっています。


 黄金の拘束衣とは、詳しくは「黄金の拘束衣を着た首相―なぜ安倍政権は緊縮財政・構造改革を推進するのか 」を読んで欲しいのですが、
「国民の所得(実質賃金)のためではなく、グローバル資本のための政策を実施させるために、各国の政策担当者に着せられた呪い
 とだけ理解して下さい。


 いずれにせよ、トマ・ピケティの「21世紀の資本」がベストセラーになることからも分かる通り、世界では「黄金の拘束衣を脱ぎ捨てる」動きが始まっています。日本も早急に「黄金の拘束衣」を脱ぎ捨てなければなりません。


 そのためには、まずは国民が「黄金の拘束衣とは何なのか?」を知る必要があるわけです。というわけで、「黄金の拘束衣を着た首相―なぜ安倍政権は緊縮財政・構造改革を推進するのか 」(飛鳥新社)を刊行いたしました。


「黄金の拘束衣を脱ぎ捨て、グローバル資本ではなく国民のための政治を!」に、ご賛同下さる方は、

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