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『自然失業率①』三橋貴明 AJER2014.12.16(3)

http://youtu.be/AjgzRylJOYk

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 三橋経済塾第四期「経済時事」、開講しました。



 銀行が開くのが1月5日(月)ですので、IDとパスワードの送付は同日から開始になります。すでに、事前講習用コンテンツは掲載してありますので、四期から入塾される方は、本講義開始前に視聴されることをお勧めします。


 ところで、わたくしは三橋経済塾や月刊三橋はもちろん、著作やブログでも「言葉の問題」を極めて重要視しています。というわけで、本日と明日は「言葉の問題」。


 2015年が始まりました。


 最近、年が明けると「人口減少」に関する記事が一斉に出て、国民を暗鬱とさせる状況が続いています。


『読売新聞:人口減最大26万8千人…出生数百万千人で最少
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141231-OYT1T50132.html


『日本経済新聞:人口自然減最大の26万人、出生数4年連続最少 14年
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO81505410R31C14A2CR8000/


『朝日新聞:人口減少、8年連続 自然減、過去最多の26.8万人
http://www.asahi.com/articles/ASGDT5WBZGDTUTFL00J.html


 「人口問題の語られ方」が本当に問題だと思うのは、何度も書いていますが「総人口」と「生産年齢人口」が区別されないことです。日本で起きているのは「総人口の減少」というよりは(減少していますが)、生産年齢人口対総人口比率の低下なのです。


 すなわち、今はともかく、近い将来、我が国の産業全般がインフレギャップ状態になるのは確実なのです。ならば、インフレギャップを以下に乗り切るべきなのか、を考えればいいのです。というわけで、過去の事例を探ってみましょう。


 我が国の場合、GDPデフレータベースのインフレ率が5%前後で推移した、超人手不足時代完全失業率が何と1%前後で推移した「高度成長期」を参考に、今後のインフレギャップ時代への対応を考えればいいだけです。


 高度成長期は「外国移民」ではなく、働く日本国民の「生産性向上」によりインフレギャップを埋めました。というよりも、外国移民ではなく日本国民の生産性向上によりインフレギャップを埋めたからこそ、高度成長は達成されたのです。GDP成長に際しては、人口の成長や輸出の増加よりも、「生産性の向上」こそが圧倒的な影響力をふるうのです。


 そう考えたとき、今後の日本に間違いなく訪れる「インフレギャップ時代」を、いかに乗り切るべきかが分かるはずです。


 かように、「言葉」の問題は重要です。上記でいえば、
「総人口の低下と、生産年齢人口比率の低下をごちゃごちゃにして考えるのは、止めましょう」
 という話です。言葉を正しく定義し、正しく使わない限り、正しい解決策は生み出せず、伝えることができません


 例えば、少子高齢化を受け、財務省は以下のレトリックで国民を煽っています。


2025年、高齢者1人を現役何人で支える?
http://www.mof.go.jp/gallery/201401.htm
2013年において、日本の総人口は1億2725万人。そのうち、65歳以上の方は3197万人。65歳以上の方一人を、20歳から64歳の方2.3人が支えていることになります。2012年以降、団塊の世代が65歳となり、基礎年金の受給が始まることなどから、社会保障給付は増大することが見込まれています。さらに、2025年には65歳以上の方の人口は3657万人に。65歳以上の方一人を、20歳から64歳までの方1.8人が支えることになると推計されます」


 いわゆる、
「現役世代が多数の高齢者を支える」
 で国民を煽り、消費増税を受け入れさせるキャンペーンの一つですが、上記で注目して欲しいポイントは「支える」の部分です。「支える」という言葉を、実に曖昧に使っています。「支える」とは、どういう意味なのでしょうか。

 財務省的には、
「増え続ける高齢者の社会保障給付の原資を、減り続ける現役世代が稼がなければならない」
 と言いたいのでしょうし、多くの国民もそう思っているでしょう。とはいえ、上記は明確に間違いです。そもそも、高齢化問題は「お金の問題」ではないのです。


 一般の家計や企業であれば、「稼がなければ使えない」「借りたお金は返さなければならない」というわけで、上記の財務省レトリックが非常にしっくりと来てしまいます。とはいえ、政府には何しろ通貨発行権があります。政府はインフレ率と金利を調整しつつ、「稼いだわけではないお金を使う」ことができる存在なのです。と言いますか、現在もバリバリと政府の子会社(日銀)が国債を買い取り、「借りたお金を返さない」ことを続けています。

 問題はお金ではなく、「供給能力」です。


 実際には、65歳以上の方も「供給能力」足りえますが、とりあえず話を簡単にするために、「20歳から64歳の人しか働かない」と定義します。すると、上記の財務省プロパガンダは、
「2013年は高齢者1人当たりの需要を、現役世代2.3人の供給能力で埋める必要があった
「2025年には、高齢者1人当たりの需要を、現役世代1.8人の供給能力で埋める必要がある
 と、言い換えることができるわけです。


 お分かりでしょうが、問題はお金ではなく、「需要と供給能力のバランス」なのです。無論、現役世代や若年層(0歳-20歳)も消費や投資をするため、2025年において、
高齢者+現役世代+若年層の需要を、現役世代の供給能力で埋めることができる
 ならば、別に騒ぎ立てるような問題ではないという結論になります。


 これまでは、2.3人で高齢者の需要を満たしていた。2025年には1.8人で満たさなければならない。というわけで、現役世代一人当たりの生産(モノ、サービスの供給)を高める、具体的には生産性を1.5倍に高めるだけで、十分にお釣りが来ます


 今年は2015年です。十年後、2025年までに生産性を1.5倍にすることができないなど、真面目に「投資」をしている限り、考えられません。一年間ではなく、十年で1.5倍にするので構わないのです。


 無論、今後の日本国民が「将来のための投資」をさぼり、インフラ整備等への投資を疎かにし続ける場合、生産性は高まるどころか、逆に低下するでしょう。


 というわけで、昨日と同じ結論、
「不要な労働規制の緩和は実施せず、将来の生産性向上のために民間や政府が投資を拡大し、現在のデフレギャップを埋める」
 が、財務省の「現役世代が~」プロパガンダからも導き出せるわけでございます。


 明日は、「同一労働同一賃金」「直間比率の是正」という二つの「言葉」について考えてみましょう。


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