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『国力とは何か(前編)①』三橋貴明 AJER2014.11.11

http://youtu.be/mNtsBQBNQKY

『国力とは何か(後編)①』三橋貴明 AJER2014.11.18

http://youtu.be/doksCuVaceM

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 文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演し、眠い眠い水曜日です。

 中野剛志氏の「ちょく論」第二弾「アベノミクス論争を通じて、経済を学ぼう ――リフレ派vsケインズ派
http://chokumaga.com/magazine/free/152/12/
 ものすごく、面白いです。是非、ご一読を。


 選挙戦も終盤に入っておりますが、今日はこの話。


フィッチ、日本の発行体デフォルト格付けをウォッチネガティブに
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0JN1TS20141209
 フィッチ・レーティングスは、日本の発行体デフォルト格付け(IDR)「Aプラス」をウォッチネガティブに指定した。カントリー・シーリングは「AAプラス」を確認した。
政府が消費税率10%への再引き上げを当初の2015年10月から2017年4月に延期したことや、グロスで見た一般政府の政府債務残高の対国内総生産(GDP)比が2008年末時点の184%から2014年末には241%に達する見込みであることなどが理由とした。
フィッチは、政府の新たな財政計画などを踏まえた上で、2015年前半に今回の措置に関する見直しを行うとした。』


 ムーディーズの日本国債格下げに続き、フィッチが格付けを「ウォッチネガティブ」としました。
 少し古い本なのですが、トマス・フリードマン(ミルトン・フリードマンではありません)の「レクサスとオリーブの木 グローバリゼーションの正体」において、フリードマンは格付け会社(フリードマンは「信用格付け機関」と呼んでいますが)について、
電脳投資家集団のブラッドハウンド、つまり警察犬
 と呼んでいます。 


 電脳投資家集団とは、今風に書くとグローバル投資家という意味です。


 フリードマンは同著において、格付け会社とカナダ政府に関する興味深いエピソードを書いています。


 1995年、カナダ国会が国家予算を審議していました。そこに、ムーディーズの一団がやってきて、カナダの大蔵省と立法者たちを「叱りつけた」とのことです(そう書いてあるのです)。カナダが財政赤字対GDP比率を国際基準(?)に合わせるか、もしくは国際基準からみて「まずまずの数値」に近づけないならば、ムーディーズ社はカナダ信用格付けをトリプルAから下げざるを得ない。そうなると、カナダの国も企業もすべて、海外から資金を借りる際、今より高い利子を払わなければならなくなる、と警告したそうです。


 カナダの大蔵大臣は、ムーディーズの警告を受け、
「経済規模に比べて、対外債務の額が非常に大きいことだけを取ってみても、わが国は、世界金融市場の気分ひとつで、とほうもなく大きな痛手を被る恐れがある。われわれは経済的主権の喪失を身にしみて実感している」
 と、声明を発表しました。


 当時のカナダは(今は分かりませんが)、格付け会社(機関ではありません)の「ご意向」により、自国の国家予算を「調整」しなければならなかったわけです。まさに、経済的主権の喪失でございます。


 この話のポイントは、格下げをされた場合に、
海外から資金を借りる際、今より高い利子を払わなければならなくなる」
 という部分です。


 日本は、世界最大の対外純資産国です。しかも、国債が自国通貨建てであり、独自通貨国です。

 その上、デフレで、国債金利はスイスと並んで世界最低になっています。地球上で、最も安い資金コストでお金を借りれるのが、日本政府という話です。

 現在、国内の銀行の日銀当座預金の額も、企業の内部留保(現預金)の額も、史上最大です。外国に投資をするならばともかく、日本国内で誰かが投資をしようとしたとき、「海外からお金を借りる」必要など全くありません


 と言いますか、国内でお金が借りられず、カネ余り、投資不足が極端な水準に至っているからこそ、日本政府の国債金利は世界最低なのです。問題は、
投資が不足していること
 であり、
「資金が不足していること」
 ではないのです。


 ドイツ連銀のバイトマン総裁が典型ですが、現在の主要国の政策担当者は、
「政策金利を引き下げ、お金を市中に供給していけば、設備投資は増える」
 と、信じ込んでいる節があります。現実の日本やユーロでは、長期金利が1%を下回る状況に至っているにも関わらず、設備投資は活性化しません。理由は、仕事の総量、すなわち「需要」が不足しているためです


 ムーディーズやフィッチ、S&Pといった格付け会社の問題は、日本国債の場合、
そもそも、独自通貨国、世界最低の金利、国債が100%自国通貨建ての国がデフォルトするなど、あり得ない(格付けとは「デフォルトの確率」を記号で表現したものです)」 
 に加え、
「国民経済が貯蓄不足で、投資のために外国からお金を借りる必要がある」
 ことを前提としている
ことです。すなわち、「需要」が十分に存在し、企業が投資を拡大しようとしている「インフレ経済」の世界に、彼らは未だに生きているのです。


 要するに、「セイの法則」が成立している世界ですが、現実の日欧はバブル崩壊と政府の緊縮財政で経済がデフレ化し、問題は「資金不足」ではなく「投資不足」に移っています。それにも関わらず、未だに「資金不足」の経済を前提に、格上げだ、格下げだとやっているのが、現実の格付け会社というわけでございます。


 それにも関わらず、「違う世界で生きている格付け会社」の動きに、わざわざ政治家が反応し、結果的に経済的主権を毀損している国が少なくないわけですから、バカバカしいにもほどがあります。日本でも、
「増税を延期すると、格付けを引き下げられ、国債金利が急騰して破綻する」
 と、もっともらしいレトリックをまき散らしていた政治家、エコノミストたちがいましたが、彼らもまた「違う世界で生きている」という話になります。


 というわけで、現実の世界で生きている我々は、今、格付け会社や民間調査会社(昨日のエントリー参照)、さらには「エコノミスト」「経済学者」らがどれほど愚かであるかを理解し、政治に反映させる必要があると思うのです。総選挙の論戦を見ていると、道は遠いように思えますが、アメリカや欧州でも同じ動きが出てきています。道程が近かろうが、遠かろうが、やるしかありません。


 グローバル投資家(電脳投資家集団)ではなく、「国民が豊かになる経済」を取り戻すために。

 格付け会社は、少なくとも日本にとっては、グローバリズムの警察犬などではありません。彼らは違う世界で生きる、現実離れした周回遅れランナーたちなのです。


「国民が豊かになる経済を取り戻そう!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!

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