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『国力とは何か(前編)①』三橋貴明 AJER2014.11.11
『国力とは何か(後編)①』三橋貴明 AJER2014.11.18
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土曜日はテレビ愛知「激論コロシアム」に出演し、【原発ありvs原発なし “ニッポン救うエネルギー”は何だ!?】という、いかにも紛糾しそうなタイトルの討論に参加したわけですが、やはり紛糾しました。
現実問題として、我が国の電力供給に占める火力発電の割合が88%(!)に達し、しかも火力発電の20%が稼働後40年を超えた老朽化火力という事態は、普通に「非常事態」です。稼働後40年とは、人間に喩えると、80歳、90歳のおじいちゃん、おばあちゃんです。本来は引退するべき高齢化した火力発電所が、まさに電力マンたちの根性と奮闘で、何とか稼働を続け、日本国民の電力サービスを担っているというのが現実なのです。
一応、今のところ我が国ではブラックアウト(大停電)は発生していませんが、電力サービスの維持が継続できたとしても、話はそこで終わりません。何しろ、老朽化火力は原油をドカ食いします。さらに、LNG火力もフル稼働していますので、エネルギー資源の輸入が膨れ上がり、我が国の貿易赤字を拡大しています。
激論コロシアムでも解説しましたが、13年の日本の貿易赤字18.1兆円の内、実に10兆円が鉱物性燃料の輸入により引き起こされています。内、3.6兆円が原発を停止したことによる「追加的なコスト」です。
3.6兆円のうち、為替安の影響は0.5兆円分に過ぎません。また、資源単価の上昇の影響分は、0.7兆円です。
すなわち、3.6兆円コスト増、貿易赤字拡大の内、七割超の2.6兆円は「数量の増加」が原因なのです。
貿易赤字の拡大は、純輸出の減少(純輸入の増加)です。すなわち、日本の名目GDPを削り取ります。エネルギー輸入コストの増大は、間違いなく我が国のデフレギャップを拡大します。
さらに、エネルギーコスト上昇の負担は、電力会社のみならず、一般の日本国民も担うことになります。電気代とは「節約」はできますが、結局はゼロにすることができない、税金的な家計のコストになります。
『関西電力が再値上げへ…10%超、来春にも
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141207-OYT1T50043.html
関西電力が、東日本大震災以降2度目の家庭向け電気料金の値上げを、遅くても年明けに政府に申請する方向で最終調整に入った。
月内にも正式に表明する。国の審査を経て、来年4月の実施を目指す。値上げ幅は10%を超える見通しだ。
震災後に家庭向け電気料金を再値上げするのは、北海道電力に続き2社目になる。
政府の認可が不要な企業など大口向けの料金についても、値上げを検討する。
原子力発電所の運転停止により不足する電力を補うために、火力発電向けの燃料費がかさんでおり、昨年5月、33年ぶりの抜本改定で家庭用料金を平均9・75%値上げした。その後も高浜原子力発電所3、4号機(福井県)などの再稼働が想定通りに進んでおらず、2015年3月期決算で4期連続の赤字が避けられない見通しとなっている。』
関西電力は、現在、三期連続の赤字となり、繰延税金資産の取り崩しをする必要があります。実際に繰延税金資産を取り崩すと、自己資本が約3000億円に減少してしまいます。
その状況で、今年度決算が昨年と同規模(2700億円)の赤字になると(なるでしょう)、自己資本が枯渇することになります。大規模な増資をしない限り、2016年3月度決算で、関電は債務超過に陥ることになります。
再稼働を申請している大飯原発3号基、4号基を動かすことができれば、以前にご紹介した通り、原子力発電所一基で900億円の収支改善効果があります。赤字幅は大きく圧縮され、債務超過になる時期を先延ばしすることができるでしょう。
とはいえ、現実には再稼働の時期は確定しておらず、結局、関電は再値上げに踏み切らざるを得なくなってしまったのです。
現在の電力サービスは、典型的なインフレギャップの状況にあります。しかも、わざわざ自ら供給能力を抑制し、ギャップを創り出しているわけです。
【インフレギャップとデフレギャップ】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_46.html#Gap
インフレギャップが拡大していくと、サービス料金は値上げの方向に向かわざるを得ません。通常の財やサービスであれば、値段が上がれば参入が増え、インフレ率は抑制されるのですが、電力サービスの場合は単純に原発を再稼働すればギャップは埋まります。そもそも、公的インフラの色が濃い電力サービスについて、「市場原理」に全てを委ねるわけにはいきません。
電気料金の上昇は、家計も大変ですが、それ以上に企業の利益を減らし、国内の雇用や投資に悪影響を与えています。無論、可処分所得や利益(利益も所得ですが)の減少は、消費増税同様にデフレ脱却の足を引っ張ることになります。
電力サービスのインフレギャップは、日本の国民経済にいい影響を一つも与えません。何しろ、インフレギャップ拡大により「利」を得ているのは、原油やLNGを輸出しているカタールの王様(等)であり、日本国民でも電力会社でもないのです。
将来的に脱原発を目指すのは構いませんが、そのためには電力会社に余力を持たせ、自然エネルギーや蓄電技術などに大々的に「投資」をしてもらわなければなりません。正直、脱原発を志向する人こそ、現時点での原発再稼働を主張するべきだと思うのです。(しつこいですが、わたくしは別に日本が脱原発するべきとは思っていません。)
日本が脱原発を果たすためには、使用済み核燃料の処理、地層処分、蓄電技術、自然エネルギーなどの分野で、大々的な技術ブレイクスルーを実現する必要があります。日本の国民経済をデフレから脱却させるためにも、脱原発のために必要な技術投資を行うためにも、日本は原発を再稼働することで、電力サービスのインフレギャップを早急に埋める必要があるのです。
「日本の電力サービスのインフレギャップを早急に埋める」に、ご賛同下さる方は、
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